広瀬すず:“言葉”で大事にしている思い 「思ったことを、うそなく言えたら」

「ドラマWスペシャル あんのリリック-桜木杏、俳句はじめてみました-」で主人公の桜木杏を演じる広瀬すずさん
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「ドラマWスペシャル あんのリリック-桜木杏、俳句はじめてみました-」で主人公の桜木杏を演じる広瀬すずさん

 WOWOWのドラマ「ドラマWスペシャル あんのリリック-桜木杏、俳句はじめてみました-」で主演を務める女優の広瀬すずさん。ドラマは俳句とラップという“言葉”を巡って魂がぶつかり合う姿を描いた青春グラフィティで、広瀬さんは不器用な性格だが言葉の力で自分の殻を突き破っていく芸大生リリックライターの桜木杏を演じる。「『きれいなことを言ってよく思われたい』という思いは、あまりない」と“言葉”について率直な思いを明かす広瀬さんに、普段意識していることや役への思い、今後の抱負などを聞いた。

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 ◇「愛くるしい」役への思い

 ドラマは、俳人の堀本裕樹さんの青春俳句小説「桜木杏、俳句はじめてみました」(幻冬舎文庫)が原作。杏(広瀬さん)はある日、何気なく口ずさんだリリックをきっかけに、大手広告代理店勤務のコピーライターの連城昴(宮沢氷魚さん)に声を掛けられる。俳人でもある昴は、上司から俳句とラップをテーマにしたプロジェクトチームに引き入れられ、頭を悩ませていた。昴に丸め込まれた杏は、プロジェクトの手伝いをすることとなるが……というストーリー。

 杏は不器用な性格で友達がおらず、日々の楽しみといえば、言葉を綴ることと近所の掲示板の言葉を見ること。ただ、スイッチが入ると一気にしゃべりだす……といういっぷう変わったキャラクターだ。広瀬さんは「ちょっと人見知りの人が必死でしゃべっている、というような、人と話すときに常に変な緊張感を持っているような感覚は、最後まで忘れずにいようと思っていました」と振り返る。

 そんな杏を「愛くるしい、人に愛されるキャラクター」と語る広瀬さん。“変わった子”として演じていたが、徐々に愛らしさを感じられるようになっていったという。「ちゃんと変わった子でいたいな、と思っていたんですけど、演じているうちに、根はすごくピュアで、やさしくて可愛らしい女の子だと思い始めて……。つながった映像を見て『普通になっちゃったな』とは思った」と苦笑しつつ、「ひとりでずっとニヤニヤしているような気持ち悪い要素も、周りから見ると愛らしく、味方になってあげたくなるように映ったらいいな、と思います」と語る。
 
 ドラマでは、杏が俳句やラップで思いを表現する姿も描かれる。ラップは、リズムをつかみやすいコツなどを教わってから「ひたすら練習」したという。作中では、新進気鋭の人気ラッパーとMCバトルを繰り広げるシーンも。ラッパー・ハゲボウズ役の板橋駿谷さんは、広瀬さんが主演を務めたNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「なつぞら」で“番長”こと門倉努役での共演経験があり、「仲がいい方だったので本当にやりやすくて、遠慮なくぶつけられた」と楽しそうに語る。俳句は“模擬句会”の場を設けてもらい、宮沢さんらと一緒に句会のシミュレーションを行ったという。

 ◇「よく思われたい」という思いはあまりない

 俳句とラップという“言葉”に重点を置いた今作で主演を務める広瀬さん。“言葉”について、普段はどのようなことを意識しているのだろうか。

 「『いいことをしゃべろう』とか『奇麗なことを言ってよく思われたい』という思いは、あまりなくて。思ったことを、自分の言葉で、うそなく言えたらいいかな、と思っています。それで勘違いされちゃっても、あとで修正できるから、修正でいいんじゃないかな、と思っている部分もあって……」と広瀬さん。ただ、「でも、しゃべることが多い職業なので、それじゃよくないな、ということも(改めて)思いました」と少し笑って、戒めも口にする。

 ラップといえば、しばしば怒りを表現するツールにもなるが、広瀬さんは「あまり日常で怒るということがないです」という。「すごく怒ったりすると、(自分の中で)ランキングが付けられるぐらい。『これ、過去2位だ』とか」と笑い、「きょうだいげんかとか、家族に対して『こうしてよ!』みたいなのはあるんですけど、長続きするイライラとかは一切ないです」と明かす。

 ◇今は“がっつり”作品に入れることが楽しみ

 近年は朝ドラの主人公という大役を果たし、映画「一度死んでみた」(浜崎慎治監督)でも主演するなど、映像作品で引く手あまたの活躍が続いている。「一昨年からずっと『映画をやりたい』と思っていたんです(笑い)。昨年は1本だけ、撮影に入れたんですけど、もっとがっつり映画の世界に浸りたいな、という気持ちがあって」と広瀬さん。ただ、心境の変化もあった。かつては「絶対、一生やらない」と決めていた「舞台」作品を見る機会が増え、一気に舞台が好きになったという。

 「映画もやりたいけど、舞台への興味も一気に出てきて……。見ると、すごくやりたくなるんですよね。それがすごく大きな変化でした。コロナ対策をしながら行われている舞台は結構見に行っていて、圧倒的に今までよりも見ている時間が多くなったので、どんどんやりたくなってきちゃって。『インプットすると、こんなにも変わるんだ』ということをすごく実感しました」と変化を口にする。

 今後も、テレビドラマに映画に舞台に……と、一層さまざまなジャンルの作品での活躍が期待される広瀬さん。コロナ禍で、昨年は「作品に入っても数日で撮影が終わっちゃうことが多かった」が、今作の撮影で、再びしっかりと作品に入れた手ごたえを感じた。「今年はまたがっつりと作品に入れるので、楽しみですね。『頑張ろう』とか『こういうふうになりたい』という思いより『楽しみ』が一番、勝っています。お芝居するのが楽しみですね」と声を弾ませて語っていた。

 「ドラマWスペシャル あんのリリック-桜木杏、俳句はじめてみました-」は前編が2月27日午後9時、後編は3月6日午後9時からWOWOWプライムで放送。

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