ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
17歳の現役女子高生マンガ家・逆巻詩音(さかまき・しおん)さんの初となる連載「17歳、恋と呼ぶには不十分」が、5月1日発売の少女マンガ誌「プレミアCheese!(チーズ)」(小学館)6月号でスタートした。逆巻さんは、2017年9月に少女マンガ誌「Cheese!」(同)で同誌としては最年少となる13歳でマンガ家デビューし、話題となった。衝撃のデビューから約4年たち、新連載は17歳の女子高生とサラリーマンの恋がテーマで、主人公と同じ年齢の逆巻さんから見た大人がリアルな視点で描かれる。JKマンガ家の素顔に迫った。
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逆巻さんのデビュー作「甘く苦く満たして」は、小学生の時からマンガ家を志していた逆巻さんが中学1年生になり「初めて原稿用紙に描いて、初めて完成させたマンガ」だった。小学館の新人コミック大賞の少女・女性部門に選ばれ、当時は小学館の選考員の間でも「ほかの応募作と比べ、ネームが段違いにうまい」と絶賛された。初恋の相手への思いを断ち切るために体の関係を持ち、「私とセフレになって」と言い放つという踏み込んだ描写もあり、「13歳でこの作品を描いた」ことも選考員の間で話題になった。
同作を小学館の少女マンガ誌の中でも大人向けの作品が多い「Cheese!」に投稿したのも、逆巻さんの狙いだった。逆巻さんがデビューする前年の2016年には、当時中学3年生のときわ藍(らん)さんが、少女マンガ誌「ちゃお」(同)でマンガ家デビューしていた。世間でときわさんが話題になっているのを見た逆巻さんは「10代でマンガを描くなら、同じようにアイドル系とか可愛らしい話を描いても比べられると思ったんです。だから、比べる土俵が違うところにいかないとダメだと思いました」と挑戦した。
13歳で突然マンガ家デビューが決まり、「やりたかったことだから」とプロの道を選び、デビュー後は、女子高生と部活の顧問の恋を描いた「教えてよ、先生。」、マッチングアプリで出会った女子高生と23歳の商社マンとの恋を描いた「愛はまだ待って」など7本の読み切りを重ね、着実に実力を付けてきた。
「Cheese!」の編集担当の吉村瑠以さんは、逆巻さんの作品の魅力を「大人の作家よりもリアルな高校生が描ける」と話す。
「大人の作家の場合、マンガで高校生を描く時に幼くなってしまうことがある。自分が高校生の時は、そんなに子供じゃなかったはずなのに、高校生にしては子供っぽい感情の流れやリアクションになったり。逆巻さんの場合は、その点において等身大の高校生が描けている。現役高校生だから当たり前と思いがちだが、意外とそれが難しい。経験を描くだけでは後々行き詰まってしまうことがあると思う。でも、逆巻さんの場合は想像の部分も多くて、人から聞いた話を自分の中で消化して、マンガというエンタメにできている。引き出しが多いし、伸びしろも大きい」
逆巻さんの初連載「17歳、恋と呼ぶには不十分」は、17歳の女子高生とその隣に住むサラリーマンの恋の話だ。シングルマザーの家庭でさまざまな息苦しさを感じる主人公が、ある日、公園で泣いているサラリーマンと出会うところから物語は始まる。主人公がサラリーマンに対し、「大人って思ってるほど完璧じゃないし、弱い」と話すシーンも印象的で、“女子高生から見た大人”を描いたシーンが多く登場する。逆巻さんが友人から聞いた話、最近の自身の心境の変化が作品に反映されている。
「友達がシングルマザーの家庭でいろいろ苦労しているという話を聞き、その子が『助かったらいいな』と思って。『助けてくれるヒーローを登場させたらいいんだ』という発想からストーリーをつなげていきました。それに、経験をいっぱい積んでいる大人が言っていることは正しいと思っていたんですけど、それだけじゃないんだなって感じるようになったことも影響しています。あまりにも門限を守れなさすぎて、お母さんに一度、泣かれたことがあるんです。『あ、大人って泣くんだ』って思ったんです。普通に生きて、いろいろなことを感じて、泣いたり、笑ったりする人間なんだなと思って」
この逆巻さんの大人観には、はっとさせられる。大人になると忘れてしまう感覚を、逆巻さんは現役女子高生の視点でマンガに描き出している。「とにかく身近な人たち、身近にあるものしか描けない」という逆巻さんは、これまでも、友達から聞いた話や自身の経験を基に作品を描いてきた。
「普段学校で、こっちから聞かなくても友達が恋愛の話をしてくるんです。彼氏とこうだったとか、好きな人がどうとか。それを自分が描きたいものに置き換えた時に、『あの話が使えるな』『あの話を入れたら面白いな』と、いろいろな要素を入れ込んでストーリーを作っていきます」
周囲の友達も逆巻さんがマンガ家として活動していることは知っていて、「あのシーン、私の話だよね」と言われるようなことも多いという。キャラクターが“壁ドン”をするシーンを描く時は「学校で身長が高い男の子と低い男の子を連れてきて、壁ドンやってもらって写真を撮る。その写真を見て描くこともあります」と、現役女子高生ならではの強みは至るところにあるようだ。
逆巻さんは、今年4月で高校3年生になった。マンガ家と高校生活の両立は難しくはないのだろうか? 両立のために「タイマーで計って、時間を決めてやるようにしています。例えば、2時間原稿を描いて、10分休憩を挟むというのを繰り返して、学校の時間割のようにスケジュールを組むといいって最近気がつきました」と徹底したスケジュール管理を意識している。
「私は完全に文系なんですけど、好きなこと、自分ができることはすごく頑張るようにしています。数学とか理科とか苦手なことを、親や先生にとことんアピールして、でも国語と日本史は頑張る。両立できているかと言えばできていないんですけど、好きなこと、できることを一生懸命やってどうにか許してもらう(笑い)」
自身のマンガ家としての強みは「自分の魅力をどうやって相手に伝えるかを考えられること。どうやったら自分の目標を達成できるか、自分の魅力をどう伝えたらいいか」で、デビュー当時から“自分の魅力”を意識してきた。
13歳でデビューから約4年たち、「『なんとかなる』と思ってやっていたらなんとかなりました」と初連載に臨む逆巻さん。今後の目標は、実写化で「自分の頭の中で実写で物語が展開されているので、映像になっているのを見たい」と話す。逆巻さんからは、若さゆえのエネルギーはもちろん、自身、周囲を客観的に見ることができる冷静さも感じられる。リアルな視点で、どんな作品を生み出してくれるのか、注目したい。
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