テレビ試写室:「あのときキスしておけば」 松坂桃李が“最ポンコツキャラ”熱演 大石作品で最も壮大なテーマの恋愛ドラマ?

ドラマ「あのときキスしておけば」の第1話の一場面=テレビ朝日提供
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ドラマ「あのときキスしておけば」の第1話の一場面=テレビ朝日提供

 ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組を放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は、4月30日からテレビ朝日系で放送される、俳優の松坂桃李さん主演の連続ドラマ「あのときキスしておけば」(金曜午後11時15分)を紹介する。

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 「あのときキスしておけば」は、「First Love」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」など恋愛ドラマの名手として知られる大石静さんオリジナルの“入れ替わり”ラブコメディー。松坂さん演じる主人公・桃地のぞむと、ヒロインの魂が宿った“おじさん”との交流をコミカルに描く。

 本作の注目ポイントの一つは、松坂さん演じる主人公・桃地のぞむのポンコツぶりだ。ドラマの公式ホームページには「松坂桃李史上、最ポンコツキャラが誕生」という説明がなされているが、たしかに“最ポンコツ”といっても過言ではない。第1話ではさっそく、桃地が職場のスーパーマーケットでポンコツぶりを露呈し、周囲に煙たがられるシーンが登場。ワイルドなキャラクターがよく似合う松坂さんだが、ポンコツな姿もなんとも“魅力的”で、いつの間にか「頑張って!」と応援している自分がいるはずだ。

 それから、松坂さんの“乙女”っぷり全開の演技も見ものだ。桃地は、大好きだったマンガ家・唯月巴(麻生久美子さん)と運命的な出会いを果たすことで人生が一変。恋愛願望すらなかった桃地は、巴との出会いを通して生き生きとしていくのだが、これが実にほほ笑ましい。巴からメッセージが届いただけで大喜びしたりする姿などは、初めての恋に夢中になっているティーンのよう。巴に出会う前と後とでは、見違えるくらいに異なる桃地を演じている松坂さんにぜひ注目してほしい。

 とはいえ、「あのときキスしておけば」というタイトルから分かるように、桃地は大きな“後悔”をすることになる。視聴者は本作を通してラブコメディーならではのわくわくを楽しめる一方、ほろ苦い展開も味わうことになるだろう。第1話の中だけで、“幸せの絶頂”から“不幸のどん底”に転がり込んでいくシーンを目の当たりにすることになるので覚悟しておいてほしい。

 また本作においては、“入れ替わり”という重要な設定があることを忘れてはならない。劇中では、巴の魂が井浦新さん演じる清掃員のおじさん・田中マサオに宿ることになるのだが、第1話から女性がひょう依した井浦さんの演技を早速楽しむことができる。きっと多くの視聴者にとって、“未知の井浦新”を目撃することになるはずだ。仕草、しゃべり方、まなざしの向け方など、ありとあらゆる点で女性らしさが追求された井浦さんの演技は圧巻。桃地とマサオ(魂は巴)の胸キュン必至のやり取りも含めて“入れ替わりラブコメディー”をとことん楽しんでいただきたい。

 自分が好きだった人が、別の風貌の人間になってしまっても、変わらず愛し続けることができるのか? 本作を見れば誰もがこんな問いの答えを考えていることだろう。大石静さんといえば、これまでに数多くのラブストーリーを世に送り出してきたが、本作はある意味では、大石作品史上最も壮大なテーマを扱った恋愛ドラマかもしれない。誰かを愛するということは、結局どういうことなのか? 毎週金曜日の夜、胸キュンシーンも楽しみつつ、哲学的な省察にふけるのも悪くないだろう。

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