悪魔とラブソング:ドラマ版「不思議な安堵感とうれしさあった」 原作者・桃森ミヨシ語る魅力

ドラマ「悪魔とラブソング」のメインビジュアル(C)桃森ミヨシ/集英社・HJホールディングス
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ドラマ「悪魔とラブソング」のメインビジュアル(C)桃森ミヨシ/集英社・HJホールディングス

 女優の浅川梨奈さんと俳優の飯島寛騎さんがダブル主演を務める動画配信サービス「Hulu(フールー)」のオリジナルドラマ「悪魔とラブソング」全8話が、6月19日にHuluで一挙独占配信。原作マンガを手がけた桃森ミヨシさんのオフィシャルインタビューが公開され、桃森さんが原作を描いたときのエピソードやドラマ版の魅力を語っている。

 --「悪魔とラブソング」の物語を描こうと思った理由を教えてください

 この作品の前に「ハツカレ」という話を描いていましたが、それは関西の女子校で過ごしてきた経験や感じていたことを基にして作りました。どちらかというとキャラより設定、異性に慣れていない頃の感覚を描きたい気持ちが先にあったんです。

 それが終わって次の連載はキャラから作りたいと思いました。10年以上前の作品なんですけど、当時ちょうど「空気を読む」ということが正義のように言われまくっていた頃で、逆張りじゃないですけど不器用でそれができない人を描きたいと。なのでマリアありきの物語なんです。物語や設定よりも何よりも、まずできたのはマリアというキャラの性格です。

 --原作ではマリアの歌や目黒のピアノのシーンが印象的に描かれており、ドラマでも大きな見どころになっています。音楽を物語のキーにした理由はありますか。

 一時期は本気でピアノに取り組んだり、マンガ家になる前は音楽に携わる仕事をしていたのもあって、何かとマンガ作品に音楽を絡めることが多いです。音楽の道は開花しませんでしたが、マンガはなんとか描かせていただける場所がある。なのでこっちで音楽を絡めたいのかもしれません。

 自分の気持ちを言葉以外で表現するという描写が好きなんですね。音楽だけでなくダンスやものづくりでも何でもいいんです。どういうものを作るか、どういう音楽を奏でるかなどはそのキャラがどんな性格かっていうのがわかりやすいですし。なんなら言葉にする以上に信念みたいなものも見える気がして。

 --マリアというキャラクターがとても魅力的に描かれていますが、どのようなところにこだわってキャラクターを作り出しましたか。

 「正直」なだけにはしたくないと思って作ったように覚えてます。それよりもっと突っ込んだとこまで描けたらなと。マリアの言葉が時には相手の胸をえぐり、逆に意地悪しか言えない子や自暴自棄になっている子の奥に秘めた奇麗な部分を明るみにしたり。どっちにしても相手にとっては隠したいことなので、それを引っ張り出すことによって一時的には地獄になってしまうけど、時間がたった時にマリアの言葉が薬になるよう変化していく、って感じの流れにしたいなと思っていました……。でも実力不足で描ききれなかったところもたくさんあります。

 あとマリアの女子校(カトリア)がキリスト教系なのは、自分の高校がそうだったので描きやすいかなと思い設定しました。讃美歌は毎日歌っていましたし。でも自分は特に決まった宗教的な信仰がないのに、そういう学校にいることの疎外感も感じていて、その感覚がマリアにつながっている気もします。

 --メインキャラクター6人を生み出す際に、どのような部分にこだわりましたか

 同じ顔は誰もいないようにしました。顔つきは同じで髪形だけ違うのではなく、造形そのものから全員違うように気をつけました。丸坊主にしても顔で区別がつくような感じで。

 --原作についてのマル秘エピソードがあれば教えてください

 これはドラマに入っていない部分なのですが、申利あんなというマリアの女子校時代の親友との決別回はかなり苦労しました。というかあまりにも袋小路に入って、マリアとあんなにとってどういう解決策がいいのか、どう仲直りすればいいのか、あんなは何がしたいのか分からなくなってしまって……。迷いのある気持ちで何通りもネームを提出するんですけど、当時の担当さんは全くOKを出してくれない。「本当にこれでいいと思ってるんですか? いいならいいですよ、僕は納得してませんけど」って言われてしまうくらい、うまくいきませんでした。そのくせ「もうできないから今号は落としてくれ」と頼んでも許してもらえない。締め切りはできるだけ延ばすからネームを出してこいと言われ続けて。

 そこで助けてくれたのが鉄骨サロ(『菜の花の彼』で桃森さんとコンビを組み原作を担当)なんです。悪ラブをその時初めて通しで読んでもらって、「あんなはどうやってマリアと仲直りすればいいと思う?」って聞いたんです。そしたら「仲直りしたくないんじゃないか、今は」と言われて。

 「じゃああんなは何がしたいと思う?」と聞いたら「歌いたいんじゃない」と。その一言にあんなの全ての気持ちが詰まっている、まさに核心を突かれた感じでした。その後すぐに切ったネームを担当さんに提出したら「はい、OKです」と一言(笑い)。その回は25ページを下書きから完成まで2日半でやりました。寝なかったです。忘れられない回ですし、こだわってくれる担当さんと、打開策をくれた鉄骨がいなかったら悪ラブを続けられませんでした。

 --実写ドラマを見た感想を教えてください

 冒頭からまず「うわ!すごいリアルだ!」と思いました。と同時になんだかとても安心したんです。私は自分の過去作品を読み返すのがものすごく恥ずかしくて苦手なんです。自分の家の本棚にも常にその時連載中の本しか置いていませんでした。もちろんその時その時で精いっぱい作っていますが、時間がたつと自分の感覚や面白いと思うことが変化していたりすることもあって。

 ましてや悪ラブは10年以上前の作品で、読み返すのはおろかそれが実写化するなんて、なんだかもうすごく申し訳ないというか。実写化に際し続編を連載させていただくことになり、勇気を出して昔の悪ラブを読み返したんですけど、やっぱり恥ずかしくなってしまいました。「ああ、この流れは面白いな」「このセリフはいいな」とちょいちょい思いはするものの、拙い絵や未熟な構成、描ききれていない部分に目が行ってしまって。なので出来上がった映像を見るのもちょっと怖かったんです。

 けど1話を見終わった時、不思議な安堵(あんど)感とうれしさがあって。うまく言えないけど、ちゃんと悪ラブなのに、ドラマとして別の作品になっていて、そして素直に面白いなって思えたんです。これは今の時代に合わせて脚本を変えてくださったことや、役者さんの熱意ある演技、そして監督の力によるものだと思います。

 横尾監督の作品はいくつか拝見していますが、どれもリアル感を大事にされているように感じていました。BGMは少なめで、周囲にいる人たちのモブ的な会話も自然で、説明をしすぎず時には表情だけで表したりする。本当にそこにある日常を感じるような空気というか。それがこのドラマからも伝わってきました。悪ラブドラマという別のしっとりした作品を作ってくださったんだなあ、とうれしくなったんです。

 自分で言うのもなんですが、このマンガってすごくマンガっぽいですよね。マリアのしゃべり方もそうだし、設定や物語もそうだし。マンガという媒体で、人の気持ちを表現する時は誇張しますし、見せたいシーンは大げさにバーンと描いたりします。これをそのまま実写にするのはコメディーだったらいいんですけど、シリアスはおかしな空気にならないかって心配があって……。でも全然そんなことはなく、ちゃんと演出を変えてくださってた。マンガ家が要らぬ心配をしていただけでした(笑い)。

 役者さんもそれぞれみんながうまくて、群像劇として一人一人が輝いていました。浅川さんは役によって全然雰囲気が変わるタイプの女優さんだと思いますが、ドラマを見ていると、可愛マリアというキャラにしか見えなかったです。淡々としゃべる中に相手と分かり合いたい気持ちも含まれていて。実際にいたらかなり浮いてしまうマンガ的なキャラを、うまく実写に変換してくださったなあと感動しました。

 飯島さんは不器用ながらも放っておけない優しさがにじみ出てました! 2カ月でピアノを練習して弾けてしまうのもすごいですね。大曲を演奏する演技もうまいし……。奥野(壮)さんは表情の変化が絶妙だなと思いますが、特にマリアに振られるシーンの演技が切なくて最高なので、ここは必見です!

 吉田(志織)さん、山之内(すず)さん、小野(花梨)さんも、そのキャラにしか見えない。しかも魅力的。他の人もみんなうまくて。ここってアドリブだろうなっていう絡みも自然に見えました。役者さんをはじめ、監督、プロデューサー、脚本、音楽、スタッフの方全てに感謝しています。

 --原作&実写ドラマはどんな人に見てほしいですか

 まずは役者さんや監督さんのファンの方に見ていただきたいです。そして昔原作を読んでくださっていた読者の方、もちろん最近読んでくださった方も、ですね。

 それから、小学生、中学生、高校生の方。とはいえ学生の方から大人の方まで、どんな人にも見てほしいです。原作も知らないし興味もなかったけどサムネでなんか気になったから見てみよう、でもいいです。結局、老若男女問わずってことになりますね(笑い)。 ドラマからでも原作からでもどちらでもいいので、両方見て違いを楽しんでいただけるともっとうれしいです。

 さらに今回、少しだけ原作の番外編連載をしました。マリアたちのその後と、本編では描ききれなかったあんなとマリアの関係や優介の気持ちの補完ができたかなと思います。7月21日発売の「悪魔とラブソング 新装再編版」8巻(最終巻)に収録されますので、よかったらこちらもご覧いただけるととってもうれしいです。

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