解説:2024年のドラマ界、意外な人気作と新たな動き 視聴者人気と視聴率にギャップも

1 / 1

 さまざまなドラマが放送された2024年。「不適切にもほどがある!」(TBS)の略称“ふてほど”が、“倍返し”(半沢直樹)、“じぇじぇじぇ”(あまちゃん)以来、ドラマの関連ワードとしては11年ぶりに流行語年間大賞を受賞するなど、ドラマの存在感が例年以上に際立った年だったといえるだろう。2024年の民放連ドラをクール別に振り返ってみる。

あなたにオススメ

 2024年1月期は、前述の「不適切にもほどがある!」が大きな話題を集めた。阿部サダヲさん主演、宮藤官九郎さんの脚本で、昭和のスパルタ体育教師が、1986年から2024年へタイムスリップして、令和では“不適切”なコンプライアンス度外視の発言をさく裂し、法令順守に縛られた令和の人々に考えるきっかけを与えていく“意識低い系”ヒューマンコメディー。ドラマ界のさまざまな賞を受賞したほか、今年流行した言葉を決める「2024ユーキャン新語・流行語大賞」で、ドラマの略称「ふてほど」が年間大賞に選ばれるなど、今年の話題作の一つとなった。

 「離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―」(テレビ朝日)も話題を呼んだ2024年1月期の作品だった。大竹玲二さんの同名マンガ(講談社)が原作で、主人公の岡谷渉(伊藤淳史さん)が、妻・綾香(篠田麻里子さん)の不倫に気付かないふりをしながら証拠を集め、親権獲得に向け戦う姿を描いた。篠田さんと不倫相手役の小池徹平さんの濃厚なラブシーンや、隣人の美女役の藤原紀香さんの振り切った演技が話題となった。

 4月期は、突出した大ヒットはなかったものの、注目作のそろったシーズンとなった。長谷川博己さん演じる“アンチ”な弁護士が活躍する「アンチヒーロー」(TBS)、杉咲花さんが“記憶障害”を抱えた脳外科医を好演した「アンメット ある脳外科医の日記」(カンテレ)、「King & Prince」の永瀬廉さんの主演で、20歳以上の女性との“許されざる恋”を描いた「東京タワー」(テレビ朝日)、木村拓哉さんが陰謀に巻き込まれた脱獄囚を演じた「Believe-君にかける橋-」(テレビ朝日)、川口春奈さん、木南晴夏さん、畑芽育さんが三姉妹を演じた「9ボーダー」(TBS)など、多岐にわたった。

 7月期は、目黒蓮さん主演で、脚本の生方美久さんら「silent」チームが再集結した「海のはじまり」(フジテレビ)が大きな反響を集めた。特にTVerの番組再生数ランキングが顕著で、放送3カ月のシリーズ累計再生数で7148万再生を記録。これは、放送話数に違いはあるものの、それまでの年間最高だった「不適切にもほどがある!」(3342万)の倍以上、それまでの「VIVANT」(TBS)、「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ)の5481万を上回るという驚異的な数字で、連ドラ歴代首位となった。

 また、深夜帯で放送された松本まりかさん主演の「夫の家庭を壊すまで」(テレビ東京)のヒットも新しい動きとして注目された。赤石真菜さんの同名ウェブマンガが原作で、内緒でもう一つの家庭を持っていた夫に復讐するため、松本さん演じる“サレ妻”の主人公が、復讐を決意するが…というストーリーで、どんでん返しの重なる緊張感のある展開も相まって、テレビ東京の見逃し配信再生数の記録を次々と更新する快挙を記録。近年支持を集めていた“不倫”“復讐”の要素を持ち合わせたドラマの台頭を示す現象ともいえるだろう。

 10月期は視聴者の反響と視聴率にギャップが生じた作品が見られた。脚本・野木亜紀子さん、監督・塚原あゆ子さん、神木隆之介さんの一人二役で、石炭採掘で発展した長崎県・端島(軍艦島)と現代の東京を舞台にした70年の愛と友情、家族の物語を描いた巨編「海に眠るダイヤモンド」(TBS)は、裏番組にプロ野球の日本シリーズや、M-1グランプリがあったことも影響して世帯視聴率としては2桁を下回ったものの、あらすじの紹介記事や関連記事はいずれも好調だった。

 松本若菜さんが“托卵妻”を演じて話題を呼んだ「わたしの宝物」(フジテレビ)も視聴率と、視聴者の反応に乖離があった作品だった。夫以外の男との子供をこっそり育てようとする“托卵妻”という賛否の分かれるテーマだったが、松本さん演じる妻の悲哀と苦悩、モラハラ気質だったが子供が生まれて大きく変わる夫、自分との子供が生まれたことを知らなかった不倫相手、クセの強い周辺の人物たちというさまざまな要素が複雑に絡み合ったことで、SNSではさまざまな意見が飛び交ったものの、作品自体への評価は高かった。

 TVerなどでの見逃し配信や各種配信サービスの普及に伴い、ファンの付きやすいドラマは数年前に比べて作品数が劇的に増加している。そんな中、作中のせりふ「もうええでしょう」が流行語大賞のトップ10に入った「地面師たち」や、往年の女子プロレス界を映像化した「極悪女王」(ともにNetflix)が広く話題になるなど、配信ドラマの存在感が地上波ドラマをおびやかしつつあるほか、1本3分のショートドラマも話題になるなど、新たな動きも目立った2024年。地上波ドラマを取り巻く状況が変わる中、2025年はどんな年になるのか。ターニングポイントになるのは間違いなさそうだ。(MANTANテレビ班・T)

テレビ 最新記事