平穏世代の韋駄天達:ギリギリ攻める MAPPAじゃないと成立しない 話題のテレビアニメの制作の裏側

「平穏世代の韋駄天達」の一場面(C)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会
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「平穏世代の韋駄天達」の一場面(C)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会

 「ヤングアニマル」(白泉社)で連載中の天原さん原作、クール教信者さん作画のマンガが原作のテレビアニメ「平穏世代の韋駄天達」が、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で7月にスタートした。派手なアクション、独特の極彩色、エロ、グロ……と「平穏世代の韋駄天達」の映像は刺激的だ。アニメを手がけるフジテレビの松尾拓プロデューサーは「ギリギリを攻めた」と語る。ぶっ飛んでいて、見たことがない映像を目指したという同作の制作の裏側を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇天才、カオス、時代を先取り 原作の魅力

 「平穏世代の韋駄天達」は、韋駄天と魔族、人類の三つどもえのバトルロワイヤルを描く。戦いの神だが、戦いの経験のない“平穏世代の韋駄天”たちの前に、魔族が復活し、種の存続を懸けたバトルを繰り広げる。アニメは、「呪術廻戦」「ドロヘドロ」「どろろ」などのMAPPAが制作する。

 そもそも同作は、天原さんがウェブで公開していたマンガから生まれた。カルト的な人気はあったが、一般的な知名度が高かったわけではない。

 「5年くらい前に、ウェブで公開されている天原さんのマンガを読み、天才だ!とすぐに感じました。編集者の手が入っているわけではなく、その才能がむき出しのまま載っていました。ウェブマンガの世界では伝説的な作品でしたが、いわゆる“ど真ん中”なわけではありません。カルチャーは辺境から生まれるものとも考えています。とんでもない作品にスパイスを混ぜて、映像化したかった」

 どこに“天才”と感じたのだろうか?

 「キャラクター全員が生き生きと動いていて、みんな倫理観がないのが新鮮に見えました。『ザ・ボーイズ』『スーサイド・スクワッド』など悪人ばかりの作品が世界的に人気ですが、『平穏世代の韋駄天達』は時代を先取りしていた。正義と悪の二項対立ではなく、それぞれがやりたいことをやる。カオスなところが素晴らしい」

 「振り切った表現」も魅力だ。

 「振り切った表現は2種類あると思っています。一つは日常系のように、疲れた時に気持ちよくなれるようなある種の“あるある”を極めたもの。もう一つは、現実世界では触れられないものに全振りした作品です。正義があると分かりやすくなるけど、全員悪人だと何が起こるのか分からない。予定調和ではないところが今っぽいかもしれない」

 ◇ぶっ飛んだ世界観に映える極彩色 

 エロ、グロも作品の重要な要素だ。テレビアニメとして放送するのは難しいのでは?とも考えてしまうが、攻めまくった。

 「お行儀はよくないけど、面白い。あけすけで性的なギャグもあります。ただ、エロ、グロだから面白いというわけではありません。やりすぎじゃないか?とも言われるのですが、そこは損ないたくないし、その手触りを死守しないといけないと考えています。ギリギリを攻めています。こんなに攻めていいの?と不安になるかもしれませんが」

 アニメを手がけるMAPPAは、これまでも数々の作品で映像美が話題になってきた。「平穏世代の韋駄天達」は、前衛的ではあるが、ポップでもあり、“新しい映像”を見せてくれる。松尾プロデューサーは「平穏世代の韋駄天達」のアニメ化は「MAPPAじゃないと成立しないと思っていました」とも語る。

 「『平穏世代の韋駄天達』は、普通の映像では魅力を引き出せない。MAPPAは魔法をかけてくれるように、作品をジャンプアップしてくれます。ぶっ飛んだ極彩色は城所聖明監督のアイデアです。倫理観のないキャラクターばかりのぶっ飛んだ世界観に映えます。映像的に新しく、ポップにも見えます。見たことがない映像を見られるはずです」

 「平穏世代の韋駄天達」は、天才的な原作、MAPPAの映像表現、ギリギリを攻める決断……とさまざまな要素が化学反応を起こすことで“新しい映像”が生まれた。アニメはまだ始まったばかり。今後も刺激的で斬新な映像表現に期待したい。

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