富野由悠季監督:アニメを作ることを舐めてはいけない! 「G-レコ」で“知の愚明”にあらがう

「Gのレコンギスタ」を手がける富野由悠季総監督
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「Gのレコンギスタ」を手がける富野由悠季総監督

 テレビアニメ「ガンダム Gのレコンギスタ(G-レコ)」の劇場版「Gのレコンギスタ」の第3部「宇宙からの遺産」(富野由悠季総監督)が公開された。公開を前に富野監督の約10年ぶりとなる著書「アニメを作ることを舐(な)めてはいけない -『G-レコ』で考えた事-」(KADOKAWA)が発売されたことも話題になっている。富野監督はこれまで「G-レコ」について「子供に見てほしい」と発言してきた。同書を読むと、地球、人類の未来に対する危惧があったから、「G-レコ」を作ったことがよく分かる。「G-レコ」に込めた思いを話していただこうとインタビューしたところ、話題はインターネット、科学技術の進歩、宇宙開発、資本主義、ポピュリズムと多岐にわたり……。

 ◇現代の知は“愚明”に振り回されている

 「G-レコ」は、「機動戦士ガンダム」誕生35周年記念作品の一つとしてテレビアニメ版が2014年10月~15年3月に放送。劇場版はテレビアニメ全26話に新たなカットを追加し、全5部作として公開される。地球のエネルギー源を宇宙よりもたらすキャピタル・タワーを守るキャピタル・ガード候補生のベルリ・ゼナムの冒険を描く。
 
 富野監督はこの日、“知の愚明”という言葉を何度も口にしていた。「現代の知は“愚明”に振り回されている。愚かなのは明らか」と。多岐にわたった話題の発端となったのは「GAFA(米国のグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社)の問題がある」という話からだった。

 「ネットビジネスはこれまでのビジネスとは違う。今後、もつのかな?と考えている。『ガンダム』のような仕事で、エネルギー論、戦争論をやってきた。ネットビジネスは、全部が虚業なんじゃないか? あっという間に地球を食い尽くす。クリック数で勝負するという根本の構造は、実数と違って実体がない。この質の違いを我々が理解するには、時間がかかると思う。危機だと気がついた時には、みんなで窒息死する。ネット技術を開発し、なぜこのことに気がつかないのか? 資本主義が生まれて、たかが300年で、GAFAのようなものを生んだ。知識人はなぜ、拡大するだけの経済を止めようとしないのか? 地球が丸いことはみんな分かっている。資本主義が変な進化をしてしまい、人類が増え続け、みんなで食っていけるのか? 食っていけないよね。なぜかそれを理解しない。“知の愚明”、愚かなのは明らかなんです」

 富野監督は「不幸なことに、第一次世界大戦の頃から科学技術が突出し始めて、間違いが起こってきた」と続ける。

 「ロケットで宇宙に行って、宇宙に移民できるか? できないんです。地球の外に空気と水がないんだから。200年くらい前だったら、地球に未知の領域があり、探検するロマンがあった。そのロマンが地球になくなったから、宇宙にあるというロマンチシズムの発想からきている。そういうことじゃない!と今のインテリが理解していない。僕は、宇宙開発にあきれています。今でもロケットを飛ばしている連中は、50年後には、みんなで宇宙に行けると思っているんだから」

 ロマンがあったから、科学技術は進歩してきた。一方で、人類は科学技術の進歩についていっていない。

 「技術は直線的な進化しかない。戻ることができない。AIの歯止めが利かなくなった時、電源を切ればいいと言うけど、人類は電源を切れない。僕は阻止する方法が思いつかない。だから『G-レコ』を作ることになった。『G-レコ』は戦記物じゃない。戦記物でベトナム戦争までの人類史をなぞってきたけど、もうそんなことをやる暇はない。自分が気持ちよく死んでいくために、人類が絶滅する予測をしたくない。『G-レコ』では、人類が絶滅しそうになった後、文明を取り戻した世界を描いている。そこで、明るいお話を作ることができる。ただ、こういう話はしちゃいけないんです。こういう話をすると、アニメですよね?という話で止まるんですよ。解決策が見当たらない。こういう話は毒なんです」

 ◇人はニュータイプにはなれない

 「ポピュリズムの問題もある」とも語る。

 「かつての『ガンダム』を20年やってみて、現実として教えられたことがあります。『ガンダム』は、リアリズムと接点を持つために戦記物にした。戦争の原因と結果を考え、兵器と科学技術の関係性を描いたけど、いつまでもこれをやってられない。人はニュータイプにはなれない。大国の政治家を見れば分かることですが、人間には、さまざまな民族を統合するセンスがない。国家、地球ではなく、組織ばかりに目を向けている」

 富野監督が、ポピュリズムについて考える中で、導かれた答えはシンプルだった。

 「バレリーナの森下洋子さんが、座右の書として稲盛和夫さんの著書『生き方』を挙げていました。読みました。他人に利を与える、人に役に立つことをやっていくという話。ポピュリズムの根本はそこしかない。僕は小田原の出身です。同じ小田原出身に、二宮尊徳がいます。二宮尊徳が農業改革をしたその下流で育った人間なんです。あれをやればいいんです。今風に考える必要はないんです。みんなで死にたくないから、死なないようにする」

 「G-レコ」とは関係ない話のようだが、そんなことはない。「『G-レコ』は、こういうことを考えるというヒントを全部並べたつもりです。第3部でおおむね固まった。『G-レコ』に関してはうぬぼれています。これから30年は見てもらえる。『G-レコ』は何を言おうとしていたんだろう?と回顧してくれる世代が出てくる。彼らに期待しています」と思いを込めた。

 富野監督は「G-レコ」で“知の愚明”にあらがう。劇場版を見れば「アニメを作ることを舐めてはいけない」という言葉の重みを感じるはずだ。

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