石川由依:「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」に「全てぶつける」 感動を呼んだ演技の裏側

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の一場面(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
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「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の一場面(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

 京都アニメーションが手がけるアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が、日本テレビの映画枠「金曜ロードショー」で10月29日、11月5日に2週連続で放送される。深夜アニメとして他局で放送された作品で、金曜ロードショーで放送されるのは極めて異例ではあるが、大きな反響、感動を呼んだ名作ということもあり、放送されることになった。主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンを演じる石川由依さんの繊細な演技にも感動の声が上がっている。「全てをぶつける」という強い思いでヴァイオレットを演じたという石川さんに、同作への思いを聞いた。

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 ◇ヴァイオレットに一目ぼれ

 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、「第5回京都アニメーション大賞」の大賞を受賞した暁佳奈さん作、高瀬亜貴子さんイラストのライトノベルが原作。テレビアニメが2018年1~4月に放送され、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-」が2019年9月に公開。劇場版アニメ「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が2020年9月に公開され、興行収入が約21億3000万円を記録するなどヒットしたことも話題になった。金曜ロードショーでは、石立太一監督の監修でテレビシリーズを新たに再構成した「特別編集版」を10月29日午後9時に放送。「外伝」を本編ノーカットで11月5日午後9時に放送する。「特別編集版」としての放送はテレビ初で、「外伝」は地上波初放送となる。

 「劇場版」がヒットしたなど話題作ではあるが、金曜ロードショーで放送されるのは異例ということもあり、驚いた人も多いはず。石川さんも同じ気持ちだった。

 「外伝や劇場版はもしかしたらいつか……という思いはありましたが、2週連続で、しかも1週目はテレビシリーズの特別編集版ですし、そんなことって今までありました!?と驚きました。また、ヴァイオレットに会えるんだ!といううれしさもありました。この作品はヴァイオレットの成長を描いているので、テレビシリーズも見ていただきたいんです。外伝は一つの作品として完結しているので、それだけでも楽しめますが、テレビシリーズを見れば、より楽しめますしね。本当にうれしいです」

 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、かつて軍人として戦ったヴァイオレット・エヴァーガーデンが、依頼者の思いをくみ取って言葉にする自動手記人形となり、さまざまな依頼者のさまざまな感情に触れ、人の心を理解していく……というストーリー。幼少期から軍人として育てられ感情を持っていなかったヴァイオレットの心の成長を丁寧に描き、京都アニメーションによる美しい映像も話題になった。石川さんはオーディション前の段階からヴァイオレットに「一目ぼれ」していたという。

 「このキャラクターを絶対演じたい!という気持ちでした。オーディションの段階で、資料を見て、スタッフの皆さんのこの作品にかける思いを感じ、きっとすごい作品になる!とその時から感じていました。原作も読み、演じたい気持ちが強くなりすぎて、オーディションでは、すごく緊張していました。オーディションで同じ時間帯だった方が、すごい方々だったんです。これはダメでも仕方がないな……と思い、少し緊張がほどけ、落ち着いて挑めたところもありました。」

 石川さんの繊細な演技に心を打たれる。ヴァイオレットと向き合い、心の機微を丁寧に表現しようとした。

 「最初のアフレコで、監督から『ヴァイオレットは今の段階ではゼロ、赤ちゃんの状態から少しずつ成長していく』とお話があり、自分の感情をゼロにしようとしました。私自身は知ってしまっている感情を知らないように演じるとは?と考え、それが課題であり、難しいところでした。ヴァイオレットは、言葉を知っているけど、一つ一つの深い意味を知りません。言葉の意味を考えることもできないので、言葉がポロポロとでてきます。間を作ると、考えているように聞こえてしまうので、思ったことをストレートに伝えるようなお芝居を意識していました。京都アニメーションさんの映像が本当に素晴らしいんです。こんなに細かい表現を人が描いているの!?って。それに負けないお芝居をしようとしていました」

 感情がゼロだったヴァイオレットもさまざまな人と触れ合い、成長していく。

 「難しい部分でもありました。どこまで成長するかが分からないと、段階を踏めないので、先のシナリオを読ませていただきました。少しずつの変化なんですよね。合っているのかな?と不安でしたが。監督を信じ、演じていました」

 ◇大切なことを思い出させてくれる作品

 石川さんは「役者として培ってきたものを全てぶつけようと思いました」とも語る。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は大切な作品になった。

 「いろいろな思いを込めて演じさせていただきました。繊細なお芝居が求められ、それができているかは、放送を見るまでは分からないところもありましたが、悔いなくやりきることができました。自分だけの力ではなく、京都アニメーションさんの映像が、キャラクターが物語ってくれるところもありますし、監督、脚本の吉田玲子さんたちが作ったレールを真っすぐ進んでいくかのように演じていました」

 「劇場版」もヒットするなど「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は多くの人の心をつかんだ。石川さんは「感慨深いですね。たくさんの方にこの思いが届いたことがうれしいです」と喜ぶ。

 「監督もおっしゃっていますが、奇をてらっているわけではなく王道を真面目にやっている作品です。ヴァイオレットが無垢(むく)だからこそ、大人になって忘れてしまったことを思い出し、ハッとさせられます。ヴァイオレットには尊敬しかありません。最初の頃は危うい存在でしたが、さまざまな感情、悲しみ、苦しみを知り、みんなに支えられて乗り越えます。強い子になりましたよね。年齢、性別、国、文化に関係なくどんな方にも届き、大切なことを思い出させてくれる作品です。たくさんのスタッフさんが思い、願いを込めて、ヴァイオレットを大事に育てるように作ってきました。ぜひ、その思いを受け取っていただけるとうれしいです」

 まだ「ヴァイオレット・ガーデン」を見たことがない人も石川さんらキャスト、スタッフの熱い思いを受け取ってほしい。

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