女優の永野芽郁さん主演の映画「そして、バトンは渡された」(前田哲監督、10月29日公開)で、血のつながらない母と娘を演じた石原さとみさんと人気子役の稲垣来泉さん(10)。石原さんは今作で初のシングルマザー役を熱演している。二つの血のつながらない家族を描いた同作で、まるで友達同士のように仲の良い母娘を演じた石原さんと稲垣さんに、演じる上で大事にしていたことや、撮影を通して得たものなどについて聞いた。
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「そして、バトンは渡された」は、累計発行部数が100万部を突破した瀬尾まいこさんの小説が原作。4回名字が変わっても前向きに生きる優子(永野さん)と義理の父の森宮さん(田中圭さん)。そして、シングルマザーの梨花(石原さん)と義理の娘・みぃたん(稲垣さん)。ある日、優子の元に届いた母からの手紙をきっかけに、二つの家族の関係がひもとかれていく。優子は、家族がついた“命を懸けたうそ”を初めて知り、想像を超えた愛に気づく……というストーリー。
石原さん演じる自由奔放な母・梨花と、稲垣さんが演じる泣き虫な女の子、みぃたん。血のつながらない母娘だが、劇中では明るく、楽しそうにはしゃぐ仲のいい姿が印象的だ。石原さんに、稲垣さんの印象について聞くと「ずっと仲良しで、最初から変わっていないかもしれません」と話す。
「来泉ちゃんは“友達の子供”みたいな感覚(笑い)。ナチュラルで、親近感があって。仕事を忘れさせてくれる関係性をすぐに築かせてくれて、本当にありがたかったです。撮影に入るスイッチも一切なく、ずっとコミュニケーションを取っていて、そのまま『いつ撮ってもいいよ』という感じでした」と撮影について笑顔で振り返る石原さん。稲垣さんも、石原さんとの母娘役に「(みぃたん)そのものになっていたというか……作ろうとするんじゃなくて、そのままでした」と同意する。
母娘役だが、稲垣さんとは「友達感覚」だったと石原さんは語る。それゆえに「ずっとしゃべって、ずっと遊んで、ボケて、突っ込んで……ずっと楽しいなと思っていました」と目を細める。ただ、母娘役を演じる上で、一つ意識していたこともあった。「他人とは違う関係性にしたくて、そのために大事なことは触れ合う時間だと思っていたので、密着度はすごく意識していました。肌を触れ合って、体温を感じて……。『また体温を感じたい』という思いが枯渇すればするほど愛(いと)おしくなるので、そこは大切にしていましたね。“イチャイチャ度”を高めていました」と明かす。
キャリア初のシングルマザー役だったが、石原さんは「気負いも、プレッシャーもなかったです」という。「リアルに来泉ちゃんのこと、みぃたんのことを愛おしく感じられれば感じられるほど、それが生かされるだろうなという役だったので、みぃたんとの写真を待ち受けにしていました(笑い)。(稲垣さんと)離れている時間もあったけど、会えない時間は無駄にしていなかったと思います」という。
一方、稲垣さんは、みぃたん役について「いつもそうなんですけど、前日にせりふを覚えちゃって、あとは現場に行って、その場の空気感で演じています。今回もせりふを覚えて現場に行って、さとみちゃんや(大森)南朋さんたちに会って『おはようございまーす』って言って、現場に入った瞬間にみぃたんになっちゃいました」と楽しそうに語る。
劇中では、梨花の華やかなファッションも印象的だ。梨花は複数の男性と結婚するが、その相手に合わせた衣装を選んでいるといい、「複数の男性と結婚するので、それぞれのときの世界を、服でも作りたかった」と石原さん。「この人のときはタイトスカート、この人のときはこういうワンピ、この人のときは帽子をかぶる……といろいろ変えています。その人に喜ばれそうな服、ということを(スタイリストと)かなり話し合いました」と明かす。
石原さん演じる梨花は、「笑っていればラッキーが転がり込む」という信条を胸に、自由奔放にたくましく生きる女性。石原さんは稲垣さんが「まさしくそう」だといい、「ずっと笑っていますもん(笑い)」と隣に座る稲垣さんに笑顔を向け、稲垣さんも「楽しかったから。悲しいという感情はなかったです。ずっと楽しかった」と笑顔でうなずく。
石原さんは、“笑顔”について、コロナ禍の今、あえて意識していることがあるという。「マスク社会になって、本当に笑顔が伝わりにくくなっている。ちゃんと笑っているということを目だけ、声だけで伝えることは難しいんだな、と思いました。だから今まで以上に表情筋を使おう、という考えでいます。意識的に口角を上げようとしていますね。相手に伝わるようにするのがちょっとした礼儀になってきているな、と思います」といい、「いつかマスクがない社会になったとき、ちゃんと心から笑えているような女性になっていたらいいなと思っています」とほほ笑む。
今作への出演を経て、2人はどのようなものを得たのか。「いろんな感情を学びました」と稲垣さん。「ここまで『こういうときは、こういう感情』と教えてもらったのは、今回が初めてでした。撮影前に直接、監督が話してくれて、『こういう感情もあるんだ』と思って……。例えば、『楽しいけど、何かありそうだな』という感情とか。特に遊園地のシーンではいっぱい教えてくださいました」と明かす。
石原さんは、撮影を通して、稲垣さんに対してある感情が芽生えたという。「これだけ年の離れた来泉ちゃんに、『とてつもなく愛おしい、抱きしめたい、大事にしたい』という感情を抱きました。それは、母性という言葉で片付けるのがもったいないぐらい。撮影を通じて、役を通じて、来泉ちゃんとの出会いを通じて芽生えた感情で、今までになかったな、と思いました。来泉ちゃんだから、ということもあったと思います。友達感覚になれるぐらいの関係性を築けているということが今まではなかったので、すごく愛おしい。そうしみじみ感じました」と振り返る。
最後に、今後のビジョンについて聞いた。稲垣さんは、「明るい役をいっぱい演じているけど、悪い役をやったことがないんです。だから、いじめっこの役とかやってみたいです」と今後演じてみたい役について明かした。
現在34歳の石原さんに、“10年後”の未来像を尋ねると、「ここ数年で子供が生まれたら、10年後には(今の)来泉ちゃんの年齢になっているから、そう思うと感慨深いですね。だって、自分の子供が、もし10歳になって、例えば(現在24歳の)今田美桜さんが、そのお母さん役をやっている……と想像すると、感慨深いなと思います」と思いをはせ、また、「プライベートのさまざまな経験が生きるようなお仕事ができたら、すてきですね」と理想を語った。
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