人気特撮ドラマ「仮面ライダー」シリーズの50周年記念映画「仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ」(柴崎貴行監督)が12月17日に公開される。映画は、放送中の仮面ライダー生誕50周年記念作品「仮面ライダーリバイス」を中心に、「半世紀に及ぶ仮面ライダー史を揺るがす、今までのすべてを超越(BEYOND)した予測不能な物語」が展開。「リバイス」で、五十嵐一輝/仮面ライダーリバイ(前田拳太郎さん)の内に宿る悪魔バイス/仮面ライダーバイス役を演じる声優の木村昴さんに、放送開始後の反響やキャラクターのとらえ方や演じ方の変化、一輝とバイスのバディーの“成長”ぶり、今“超えたいもの”について聞いた。
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「仮面ライダーリバイス」の放送がスタートし、3カ月ほど経過したが、木村さんは「いつも応援してくださっている方のTwitterでのツイートを拝見し、自分でも『もう5分の1が終わったのか』って。5分の1って聞くと何か実感しますよね」としみじみ。作品への反響には、「おかげさまでありがたいことに、いろんな方から反響や感想をいただいていますし、本当に喜ばしいものばかり。非常に光栄だなって思います」と喜ぶ。
特に「『面白い』と言ってもらえると何より」と笑顔で言い、「演じる上で特別気をつけている一つが、あくまで悪魔だけど嫌われたくないというか、嫌なヤツにならないようにという点。見てくれている方が、『何か好きになっちゃう』『何か気になる』とか感じてもらえたらと思っていますし、そういう感想から楽しんでいただけていることがわかると、僕としてもやりがいを感じますね」とファンからの反応が励みになっているという。
「毎回見ています。朝イチの仕事がない限り、リアルタイムで見るようにしている」とテレビ放送も欠かさずチェックしている木村さん。「ここだけの話ですけど」と小声で前置きし、「実は10話を見ていた日は放送中途中で家を出なきゃいけなかったのですが、気になってしょうがなくて、もう知っているのに『大二、頑張れ~!』『大二、負けるな~!』とやっていたら、最後まで見ちゃってギリギリに。仮面ライダーライブ爆誕にテンションが上がり、胸アツでくぎ付けになりました」と告白。その後、「マネジャーさんには正直に『仮面ライダーを見ていたので』と言いました(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに話す。
バイスを演じ始めて時間がたち、演じ方などに変化はあるのだろうか。木村さんは放送当初の役作りを、「最初のうち、1、2話あたりは悪魔に徹した感じでした」と振り返り、「悪魔に重きを置いて、何をしでかすかわからないヒヤヒヤ感や、悪いヤツか良いヤツかわからない段階なので悪役に徹した、というと言い過ぎかもしれませんが、陰と陽で言うところの陰の部分をわりと意識していました」と意図を説明する。
ストーリーが進むにつれて「だんだん悪魔感が薄れていき、『バイスは良いヤツかもしれない』流れも見えてきて、よりおちゃめにお調子者でコミカルにやるように」と向き合い方に変化が生まれ、「でも、ふとした瞬間にまた悪魔っぽい一面が出てきたりもする。そのギャップが面白くなってきたので、コミカルにやりつつメリハリをつけて、何を考えているかわからない部分はより悪魔感を出すなど、(演じ方は)変化はしていますね」と現在の演じ方を語る。
以前のインタビューで、仮面ライダーや特撮ならではのアフレコの苦労があるか聞くと、木村さんはとにかくしゃべりまくるバイスについて「必要なせりふ以外はほぼアドリブ」と話していた。それから時間が経過したが、やはりアドリブの多さを挙げる。「僕発信でやるアドリブよりも、バイスがアドリブしてくることの方が圧倒的に多く、僕はそれを立体的に、アドリブをバイスの声に置き換える作業をします。ただ、あまりにも多いですよね(笑い)」という。
アドリブを作り上げるには、「現場で控えてくださっているせりふもあれば、(バイスのスーツアクターを務める)永徳さんの声でわかるものも」と現場の協力が大切な要素であると話し、「動きがあっても声が聞こえず、監督も『何て言っていたかな(苦笑い)』、せりふを控えている人も『ちょっとここは私も……』という状況も。そういう時は『こういう感じでどうでしょう』と僕が提案したり、逆に永徳さんは声を入れていないけど動いているから僕が(アドリブを)入れたいとお願いしたりもあります」と舞台裏を明かす。
キャストとスタッフによる“共同作業”により作り上げられるバイスについて、木村さんは「とにかく動いていれば何かしら声がするのは、バイスの魅力的なところ」と評するが、バイスが黙っていたら逆に気になるのではと水を向けると、「そうなんですよね! そうそう。静かにしていると、『あれ、何かたくらんでいる?』みたいになっちゃいますよね(笑い)」とうなずいていた。
放送スタート前のインタビューで、「“ケンカするほど仲がいいバディー”になっていけたら」と語っていた木村さんに、現在どのようなバディーとなっているかを質問。すると、木村さんは、「これまでは一輝はバイスのことを信じ切れていないというか。お互いにお互いの“弱み”があって、言い方が合っているかはわかりませんが、やむなくバディーをやっているみたいな状況でした」と意外な言葉を口にする。
そう考えている背景を、「一輝はバイスがいないと変身できないし、バイスは一輝がいないと実体化できない。変な言い方ですけどお互い“条件”のようなものがあり、そのためにバディーをやっているとも。一輝はバイスが時折ポロッと出す悪魔の一面を押さえるのに手綱を持つなど、絶妙な均衡を保って2人がいる」と一輝とバイスの関係性を分析し、整理していく。
その関係性が一変したのが、第13話「フェニックス危機一髪!」(12月5日放送)。一輝がベルトを使えず変身できない中でストーリーがくり広げられるが、木村さんは、「変身しないとバイスは出てこられず戦えないので、一輝に変身するように頼むけど拒否される。そうしたらバイスは一輝にしか見えない状態のまま戦いに行く。ちょっと感動的なシーンでもある」と状況を説明する。
さらに、「その姿を見た一輝が、自分はバイスのことを信用しきれていなかったことに気づき、『信頼するよ』と言う。やっと言葉にしてくれたことで、バディーから“リアル・バディー”になります」と熱い口調で語り、「信頼という最大の“変身アイテム”を手にし“最強”になっていきますが、このバディーはこんなものじゃない。まだまだ強くなりますよ!」とさらなるバディーの“進化”への期待感を口にする。
また同エピソードの収録は、「前田君と2人でアフレコをしていたのですが、そのシーンを録(と)りながら2人で胸アツに」と楽しそうに話し、「ちょうど大二(日向亘さん)とさくら(井本彩花さん)も見学で来ていて、きょうだいたちと一緒だったのは激アツでしたね。この後の展開も、もう息をつかせませんから。すごいですから楽しみにご覧ください」と呼びかける。
発展しつつある一輝&バイスのバディーも活躍する今回の映画について、木村さんは「『仮面ライダーリバイス』という作品の核にもなっているメッセージの一つに、家族がありますが、映画も家族、親子を描いている」と切り出し、「2021年という時代において『家族とはこうである』みたいな正解がなく、ご家庭によっていろんな家族があると思う。そんな中でも各ご家庭にフィットするメッセージや、家族の温かさ、ありがたさが感じられるようなストーリーになっています」とアピール。
そんな作品を「家族で見てほしい」といい、「今、仮面ライダーに爆ハマリしているお子さんたち世代と、元お子さんだった親御さんたち世代、一緒に見てくれたら帰り道にいろんな話ができると思う。すごく会話に花が咲くと思うので、親御さんたちにも見てもらえたら最高」とメッセージを送る。
最後にタイトルの「ビヨンド(超越)」にかけて、木村さん自身が“超えたいもの”を聞くと、「関智一さんという師匠がおりまして。師匠の大きな背中を見て17年間やってきましたが、師匠のTwitterのフォロワー数をあとちょっとで超えるので、超えたい。年内に超えたい」とにっこり。
続けて、「師匠がいなかったら今の僕はありませんし、師匠を見てここまで育ったと言ったら変ですけど、師匠に認められたくて、褒められたくて頑張ってきた部分はあります。僕が知る声優の中で一番カッコいいと思う人」と感謝と敬意を口にし、「師匠と肩を並べたいという目標から、最近は少しずつ師匠を超えたい、師匠に「すごい」と言われたい思いがモチベーションにもなってきている。だからやっぱりフォロワーで凌駕(りょうが)したい(笑い)。1人でも超えた瞬間むちゃくちゃ泣いて喜ぶし、速攻ツイートすると思いますね」と笑顔で語った。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
※柴崎貴行監督の崎はたつさき
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