人気アニメ「クレヨンしんちゃん」(テレビ朝日系、土曜午後4時半放送)のスペシャル企画「フリースタイルしんちゃん カスカベのラッパー」が、同作の30周年企画の一環として、1月8日から3週連続で放送されている。1980年代のニューヨーク風のカスカベシティを舞台に、野原しんのすけたちがラップバトルを繰り広げる……という内容で、何やらいつもとは雰囲気が違う。子供向けアニメだからと、侮るなかれ。美術、ラップパートなど細部までにこだわっており、スタッフの本気を感じる。シリーズディレクターの三浦陽さん、アニメ制作を手がけるシンエイ動画の國安真一プロデューサーに制作の裏側を聞いた。
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テレビアニメ「クレヨンしんちゃん」は、1992年から放送されており、これまでもキャラクターがラップを披露したことはあったが、“本格的なラップ”は初めてという。バラエティー番組などの影響もあり、子供にもラップは人気だが、なぜ、ラップなのだろうか?
三浦さんは「ずっと『しんちゃん』でもラップができるんじゃないか?という思いがありました。お笑い芸人がラップをしているのを見て、笑いとラップの相性のよさも感じていました」と話す。
三浦さんは「初めてラップを聴いたのはRun-D.M.C.。10歳くらいの時で、ショックを受けました。ウータン・クランやQティップ……イーストコーストが好き」、國安プロデューサーは「日本語ラップで育った」と共にラップ好き。「カスカベのラッパー」は、スタッフが愛を込め、細部までこだわり抜いた。
三浦さんが「チャレンジでした」と話すのが、世界観の設計だ。「クレヨンしんちゃん」は、劇場版でもさまざまな世界が舞台になってきたが、「カスカベのラッパー」の1980年代ニューヨーク風の世界ともマッチしている。
「『しんちゃん』の世界観で1980年代のニューヨークのブルックリン、ブロンクスの雰囲気を表現しました。『しんちゃん』の世界観の中で違和感なくできるのか?がチャレンジでした。ストリートキッズたちの話で、夜のシーンが多くなっています。普段の『しんちゃん』は、夜に出歩くシーンはあまりありませんので、光の使い方を工夫しました。いつもと違う雰囲気を感じてほしいです」
ラップパートにもこだわった。「カスカベのラッパー」のためにトラック(音楽)を制作したといい、三浦さんは「ほかの子供向けアニメでもラップをしているシーンはありますが、子供向けという印象が強い。やるからには本格的にしたかった」と語る。
「風間くんが優等生であることなどキャラクターの特性を生かし、普段と地続きにすることを意識しました。その特性を広げながら、ラップの世界観にはめ込んでみました。ラップの収録は(先に声を収録する)プレスコです。口パクもいつもよりも枚数を使い、声と絵が合うようにして、リップシンクさせています。普段は、口を開ける、閉じる、中間の3パターンだけど、ラップパートは、あいうえお、閉じるの6パターンを作りました」
「カスカベのラッパー」では「クレヨンしんちゃん」の世界観を崩すことなく、本格的なラップに挑戦した。三浦さんは「いつもよりちょっとイカしてる。いつもよりちょっとイキってる。でもいつもと同じでちょっとおバカなしんちゃんたちをちょっとドキドキしながら見ていただけるとうれしいです」、國安プロデューサーは「話が進むと、バトルのレベルも上がってきますので、最後までお楽しみに」と話す。こだわり抜いた細部までじっくり見て、スタッフの本気を感じてほしい。
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