ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
2021年4~6月に放送されたテレビアニメ「オッドタクシー」の劇場版「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」。劇場版は、テレビアニメに続き、木下麦さんが監督を務め、キャラクターデザインも担当する。木下監督が、テレビアニメの監督を務めるのは同作が初めてだった。テレビアニメ放送前は、注目されていたわけではないが、放送後に「傑作」「ダークホース」などと大きな反響を呼び、第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の新人賞にも選ばれた。キャラクターは、可愛らしい動物ではあるが、実は本格的なミステリーで、複雑に絡み合った伏線が、緻密な計算によって回収されていくことに驚き、感動した人も多いはずだ。「こんな作品はほかにはないですし、作っている時は未知数でした」と語る木下監督に傑作の誕生の裏側を聞いた。
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木下監督は、多摩美術大学在籍時からイラストレーター、アニメーターとして活動。CMやミュージックビデオ、プロジェクションマッピングなどを手がけるP.I.C.S.(ピクス)に所属し、「オッドタクシー」を手がけるまでは「先輩の監督の補佐をしたり、クライアントワークでちょっとしたアニメを作っていました」という。
「オッドタクシー」は、「かみさまみならい ヒミツのここたま」などを手がける新田典生さんが副監督を務め、マンガ「セトウツミ」などで知られるマンガ家の此元和津也さんが脚本を担当した。木下監督は、初監督だが「副監督の方などスタッフの皆さんにかなりサポートしていただいているので、僕一人の力ではないです」と話す。
「オッドタクシー」を企画したのは「5年くらい前」にさかのぼる。
「漠然と“縦軸”のあるアニメ、キャラクターは動物でリアルな人間模様を描くアニメを作りたいと思っていて、プロデューサーに企画書を出しました。その時、キャラクターデザインはできていたのですが『ストーリー、設定が弱い』という話がありました。話し合う中で、絵柄は可愛いけど、リアルで生々しく、ブラックな要素がある……とギャップのある方向性でかじを切ることになりました。此元和津也先生に入っていただくことになり、平賀大介プロデューサー、此元先生と3人で企画を進めることになりました」
「オッドタクシー」は、タクシー運転手の主人公・小戸川が乗せる癖のある乗客とのやりとりが、一人の少女の失踪事件につながっていく……というストーリー。企画時からキャラクターは動物だったようだが、なぜ動物なのだろうか? 物語が進んでいくと、キャラクターが動物である理由が明らかになるが……。
「元々、人間を描くのが少し苦手で、動物や宇宙人、よく分からない生命体を描くのが好きだったんです。普段も『この人、キツネみたいな顔をしているな……』と内心思っていたりします。アニメは妄想を具現化できますし、変な生き物の物語を作ろうとしました。最初の企画書では、動物である必然性がありませんでした。此元先生の中で『動物である必要があるのか?』という疑問を感じたそうで、動物である必然性のある物語に仕上げていただきました」
「オッドタクシー」は、緻密に計算された作品だ。複雑に伏線が張り巡らされていて、ちょっとしたシーン、せりふにも意味があり、無駄がない。実は、オチのヒントもちりばめられている。
「脚本は緻密でしたが、無駄にも見える面白い会話など(クエンティン・)タランティーノの映画のような余白もありました。尺の問題で3,4割削り、全13話に凝縮しました。逆算すると何もカットできなくなり、断腸の思いで削ったところもあります。慎重に選び、1カット1カットに意味を持たせることを意識しました。脚本にはないけど、入れたシーンもあります。例えば、大家さんが飼っている犬のシーンなどは、ヒントになりますし、奇妙な感じが伝わるはず……と加えたところです」
会話劇も大きな魅力になっている。木下監督は、此元さんの脚本を「言葉のセンスが素晴らしい」と絶賛する。
「時代性があり、風刺も入っています。言葉の節々からキャラクターの情けない部分が見えてくる。でも、包み込むような優しさもあります。キャラクターのいい部分、悪い部分の両方を優しい目線で描いているように感じています。いくら映像や音楽がよくても、脚本がよくないと、あらゆる努力が徒労に終わることもあります。作品の骨格として脚本を慎重に扱いました」
花江夏樹さんや飯田里穂さん、木村良平さん、山口勝平さん、三森すずこさんら人気声優に加え、お笑いコンビ「ミキ」「ダイアン」、ラッパーのMETEOR(メテオ)さんらの好演が会話劇を盛り上げる。キャラクターは動物だが“人間らしく”て生々しい。
「プロデューサーとも話し合ったのですが、動物だけど、声を実写のようにして、ギャップを出そうとしました。脚本にもお笑いの要素があり、間が大事になると感じていました。(声を先に収録する)プレスコでしたし、収録経験がない芸人さんやラッパーさんも尺を意識せず、自然に演じていただきました」
「こんな作品はほかにはないですし、作っている時は未知数でした。受け入れていただけるのか?という不安もありました。でも、頑張ろう!と一丸となって制作しました」と明かす木下監督。大きな反響を受けて「うれしかったです。作っている時は大変さが9割、楽しさが1割でした」と喜ぶ。
劇場版は、主人公・小戸川が関わった事件について、関係者17人が証言するという新たな視点で描かれる。
「新作カットを加えつつ、視点を変えて全13話を描くことを決めていました。ただ、テレビシリーズの尺が約5時間あるので、どう編集してもうまく収まりませんでした。すがるような思いで、此元さんに相談して、構成を考えていただきました。初見の人でも分かるように、必要なシーン、せりふを選び、最終的にはキレイにまとまったと思います。最後の方に、43秒の1カットのシーンがあります。あのシーンの空気感を堪能してほしいですね」
監督デビュー作にして傑作を生み出したこともあり、次作も気になるところではあるが「心に引っかかるもの、テーマが見つかったら、また作りたいですね。今のところは考えていないのですが、これからゆっくり考えたいです。ここ1年でいろいろなことがあって、整理がついていないところもあるので」と話す。
木下監督の今後の活躍も注目される。
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