古川慎×福井晴敏:「ヤマトよ永遠に REBEL3199」インタビュー(1) 「永遠に」とは違うアルフォン

「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の一場面(c)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会
1 / 14
「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の一場面(c)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

 人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」のリメークシリーズの最新作「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第二章「赤日の出撃」が11月22日から上映される。「3199」は、1980年に公開された劇場版第3作「ヤマトよ永遠に」を原作に新解釈を加え、再構成する。「3199」で、地球を占領・支配したデザリアム軍の情報将校で物語の“鍵を握る男”アルフォンを演じるのが人気声優の古川慎さんだ。アルフォンは「永遠に」にも登場した人気キャラクターだが、「3199」ではどうやら少し様子が違うようだ……。第二章の上映を前に、「3199」の総監督を務め、シリーズ構成、脚本も担当する福井晴敏さん、古川さんに、アルフォン、収録の裏側について聞いた。

あなたにオススメ

 ◇雪を通じて人間的な感情を学ぼうとする

 ーー第二章では、福井さんがこれまで話してきたようにタイトルの「3199」の謎も明らかになります。

 福井さん 目の前に見えている箱は全部開けました。ただ、見えてない箱があるかもしれないし、ないかもしれません。

 ーー古川さんが第二章の台本を読んだ感想は?

 古川さん より入り組んだ物語になっているなと思いました。第二章で描かれているのは「永遠に」で描かれていたものに加え、デザリアムの勢力、人種としての情報、ヤマトクルーの描写と、細部までフォーカスして深掘りされているので、とんでもないボリュームになっています。さらに、政治的な話も増えてきて本当に見応えがあります。アルフォンは「永遠に」とは異なる動きを見せていて、原作とはまた違うものになっています。

 福井さん 第二章で舵を切り始め、ぼちぼち違う方向に向かい始めました。びっくり箱がたくさん浮いている状態ではあるのですが、「永遠に」を知っている人はもう分かっていることですし、それなら全部開けてしまう。びっくりする別のポイントもあるのかもしれない……と中身を予想していただいた方が面白くなると思います。

 ーー収録では、福井さんからアルフォンに関する説明があった?

 古川さん 主にアルフォンの心情について教えていただきました。収録に臨むうえで、アルフォンの心情やそもそもどういう人なのか?というバックボーンを知っておきたかったので。ただ、別現場でほかのキャストの方と「3199」の話になった時、僕の知らない情報があってびっくりすることもありました(笑)。

 福井さん バックボーンは初期の段階で説明していますが、今回は完全な群像劇なので、役者それぞれが知っている情報を限定的にしています。役者同士が情報交換したら、確かに急に違う風景に見えるのかもしれません。分散収録なので、なるべく役者には情報を与えないようにして、自分たちの周りの状況が分からないようにしています。ヤマトに乗っていないメンバーは、ヤマトが今どこで何をしているのか分からない。そういう風にする方が今回はいいのかな?と思っていました。アルフォンを演じる上で必要な情報はお渡ししていますが、彼が立っている床の下にあるものとかは、全然教えていないんです。

 古川さん 「永遠に」とは違いますし、「永遠に」を見てから収録に臨んでいますが予習にはならなかったですね。未知の物語を歩かせていただいています。

 ーーアルフォンは難しい?

 古川さん そうですね。「永遠に」で野沢那智さんが演じられていたアルフォンは何を考えているか分からない雰囲気がありました。今回のアルフォンも機械的な精神の持ち主ではあるのですが、敏感な面もあって。ありていに言えば雪のことが好きなんですよね。この人に何をしたらどういう反応が返ってくるのか?と、雪を通じて人間の感情を積極的に学ぼうとしています。そこがアルフォンを演じる上で重要な部分だと思っています。

 福井さん 野沢那智さんが演じられていたアルフォンとは違う反応をすることもあります。雪ににらまれた時、憎悪、殺意を向けられて、ときめいている。悲しいんだけど、俺はまた人間に一歩近づいている!と感じている。古代に対しても嫉妬みたいな感情があります。嫉妬は本来、苦しいものですが、これで俺も少しステップアップして、雪に近付けたかも?と思っている。雪を通じて、人間を知ることが楽しみになっている。

 ーーアルフォンの目線で人間や愛を描くという意味でも「3199」の重要なキャラクターになる?

 福井さん そうですね。重要です。

 ◇どん底からはい上がる古代

 ーー一方、第二章の古代はどん底にいます。

 福井さん ヤマトファンはアラフィフ、アラ還が珍しくないですし、今の日本でアラフィフ、アラ還をやっていると、若い時以上に明日が知れない。今回の古代は、そんな感じでもあります。逆に、どんな時でも「もう一度ここから!」と思っていれば、人間はやり直せるかもしれない。どん底からはい上がっていける。

 古川さん つらいですね。古代はどんな困難にも立ち向かい、乗り越えてきた強さがあります。アルフォンが経験していないことですし、人間的なレベルを言うと古代はアルフォンよりもかなり上なんです。アルフォンからすると、古代が羨ましくもある。僕自身も、古代の強さがやっぱり羨ましい。腐らないんですよね。これまで培ってきた経験がなせる心の強さなんだと思います。

 福井さん 古代は最大の危機を迎えているけど、自分と向き合えなくなっています。地に足がついてないんです。追い込まれている中で、自分と向き合わないといけなくて、どんどん悪い方向に転んでいく。ひどい目に遭っているようにも見えますが、現代日本の鏡像でもあります。

 ーー収録の様子は?

 古川さん 第二章は、桑島さん(森雪役の桑島法子さん)と一緒に録っていますが、小野さん(古代進役の小野大輔さん)とは全く一緒になっていないです。桑島さんが優しい方なのは、皆さんもご存じだと思いますが、今回は緊張しました。雪はアルフォンに対して「寄らば斬る!」という意志の強さを見せるので、収録ブースでの桑島さんも鬼気迫るような空気を纏っていました。でも、桑島さんは、役としても人としても向き合っていただけて、ものすごく心強かったです。一方で、雪のセリフを受けて、アルフォンとしては心細くなるんですけどね(笑)。

インタビュー(2)に続く。

写真を見る全 14 枚

アニメ 最新記事