UFC273:“コリアン・ゾンビ”ジョン・チャンソンは「いかにクレバーな戦い方ができるか」 “世界のTK”高阪剛が注目試合を語る

(左から)アレクサンダー・ボルカノフスキー選手、ジョン・チャンソン選手、アルジャメイン・スターリング選手、ピョートル・ヤン選手/ Getty Images
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(左から)アレクサンダー・ボルカノフスキー選手、ジョン・チャンソン選手、アルジャメイン・スターリング選手、ピョートル・ヤン選手/ Getty Images

 米フロリダ州のVyStarベテランズ・メモリアル・アリーナで開催される総合格闘技(MMA)イベント「UFC273」が、4月10日(日本時間)にWOWOWで生中継・同時配信される。メインイベントは、“コリアン・ゾンビ”ことジョン・チャンソン選手が王者アレクサンダー・ボルカノフスキー選手に挑むフェザー級タイトルマッチ。正規王者アルジャメイン・スターリング選手と、暫定王者ピョートル・ヤン選手によるバンタム級王座統一戦も組まれている。今回のダブルタイトルマッチについて、WOWOW「UFC-究極格闘技-」解説者としても知られる“世界のTK”高阪剛さんが見どころを語った。

ウナギノボリ

 --「UFC273」のメインイベントは、もともとボルカノフスキーとマックス・ホロウェイの3度目の対戦の予定でしたが、ホロウェイの負傷欠場により、ランキング4位のジョン・チャンソンが挑戦者に抜てきされました。

 これはホロウェイが出られなくなった時点で、多くの人が“代わりはジョン・チャンソンしかいない”と思ったんじゃないですかね。“コリアン・ソンビ”の異名が付けられるくらいタフで打たれ強く、どんな相手であろうと立ち向かっていく、何かをしでかしてくれそうな期待が持てる選手ですから。そういう意味でホロウェイ欠場の副産物ではありますけど、すごくいいマッチアップだと思いますね。

 --しかし、下馬評ではボルカノフスキーが圧倒的に有利と言われています。

 これは仕方がないです。ジョン・チャンソンに限らず、今のボルカノフスキーを崩すのは難しい。それぐらいの強さを王者になる前から見せていますから。

 --UFC10戦全勝、MMA20連勝中ですからね。

 そのボルカノフスキーの鉄板ぶりを支えている要因はいくつもあると思いますけど、一つ挙げると右のパンチが、ストレートにしてもオーバーハンド気味のフックにしても、ものすごく強いんですよね。それを対戦相手も知っていたり、感じていたりするので“右を打つぞ”というフェイントだけで、すごくプレッシャーをかけられるんですよ。

 --そんなボルカノフスキー相手に、ジョン・チャンソンはどんな戦いが考えられますか?

 ジョン・チャンソンは「殴り合い上等」のイメージが強いと思いますけど、実はすごく目がいい選手なんですよ。試合の序盤で相手の打撃の軌道を見切って、すぐに打ち返すとか、カウンターを入れるとか、タックルを合わせるとか、そこのセットアップがすごく早いんです。打たれたらすぐ打ち返すから殴り合いになるんですけど、リーチも183センチと長いので、アウトボクシングでポイントを稼ぐこともできる選手だし、そこからのラッシュで仕留めることもできる。

 --では、この一戦はどうなると思いますか?

 正直、真っ向勝負をしたら、さすがのジョン・チャンソンもボルカノフスキーには勝てないと思うんですよ。両者ともにタフなストライカーですけど、ボルカノフスキーはステージが違うと思うので。チャンソンがいちばん上回っているのは、最初のセッティングが早いこと。先手でパンチを効かせてペースを握って、反応の速さでボルカノフスキーの攻撃に対応していけば、勝機も見えてくるんじゃないかと。でも、しっかりペースを握れないと、後半伸びてくるボルカノフスキーに体力勝負に持ち込まれて、やられてしまう。だからジョン・チャンソンが、いかにこれまでのイメージと違う、クレバーな戦い方ができるかどうかでしょうね。

 --続いて、正規王者アルジャメイン・スターリングと暫定王者ピョートル・ヤンによるバンタム級王座統一戦。両者は昨年3月、王者ヤン、挑戦者スターリングとして対戦し、ヤンが優勢に試合を進めたものの4ラウンドにヤンが反則の膝蹴りを入れてしまい、反則負けで王座が移動した因縁の再戦です。

 前回の試合だけを参考にするのはよくないですけど、あの試合を見た限りは正直、実力差があったなと自分は感じたんです。ヤンが途中で遊びだしたというか、“これ、いけるわ”って感じで、実力差を見せつけるかのようにコカすだけの大外刈りや、いなすような投げを2~3回やってましたよね。そういうところで精神的なマウントを取ろうとしているのが見え隠れする試合だったので、スターリングは新たな技術や戦略なしで今回の試合に臨んだら、ちょっと勝つのは難しいかなと思います。

 --確かに前戦はとくに後半圧倒してましたからね。

 スターリングって、自分はすごく好きなタイプの選手なんです。アグレッシブだし、必ず一本極めにいこうとする。だからバンタム級のトップ3は、じゃんけんのような関係だと思うんですよ。スターリングはヤンに分が悪いけど、コーリー・サンドヘイゲンには完勝している。ヤンも前回、サンドヘイゲンに勝ってますけど、かなり手こずりましたからね。

 --スターリングにとっては、ヤンが“天敵”なんですね。

 ヤンは何をやっても崩れない。テイクダウンディフェンスを繰り返してもフィジカル的に落ちない強みがある。だからこそ前回、スターリングは削られてしまったとも言えるんですね。タックルを何度も潰されていたので。

 --前回のようなタックルを軸にするのではない戦い方が求められると。例えば、どんなことが考えられますか?

 一つ挙げると、スターリングの“雑さ”が残っているパンチというものがうまく働く可能性があると思うんですよ。ヤンのようなちゃんとしたボクシングが得意な選手って、意外と無軌道でがむしゃらに殴ってくるパンチをもらってしまったりするんです。そこで一発効かせてから組みの展開に持っていけば、勝機が見えてくるかもしれない。そうやって崩れないヤンのペースを狂わすことができるかどうかだと思いますね。

 *……試合の模様は、「生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC273 in フロリダ ヴォルカノフスキーVSコリアン・ゾンビ、スターリングVSヤン Wタイトルマッチ!」と題して、4月10日午前11時からWOWOWライブで生中継。WOWOWオンデマンドでも同時配信される。4月15日午後2時からは、WOWOWライブ・WOWOWオンデマンドでリピート放送・配信される。

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