古谷徹:昭和、平成、令和でテレビアニメ主役 話題の「名探偵コナン ゼロの日常」 安室透への思い

「名探偵コナン ゼロの日常」の一場面(C)新井隆広・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン ゼロの日常」製作委員会
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「名探偵コナン ゼロの日常」の一場面(C)新井隆広・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン ゼロの日常」製作委員会

 青山剛昌さんの人気マンガ「名探偵コナン」のスピンオフが原作のテレビアニメ「名探偵コナン ゼロの日常(ティータイム)」が読売テレビ、TOKYO MX、BS日テレで放送されている。“三つの顔(トリプルフェース)”を持つ安室透が主人公で、安室透役の古谷徹さんが約14年ぶりにテレビアニメの主人公を演じていることも話題になっている。昭和、平成、令和でテレビアニメの主役を務めてきた古谷さんに、主役、安室透への思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇令和でも主役 本当に強運です

 「ゼロの日常」は、新井隆広さんのマンガで、2018年5月に「週刊少年サンデー」(小学館)で連載をスタート。安室透の日常を描いている。「名探偵コナン」のコミックス100巻が2021年10月に発売されたことを記念したプロジェクトの一環としてテレビアニメ化されることになった。

 古谷さんは「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイ、「巨人の星」の星飛雄馬などさまざまな作品で主人公を演じてきた名優、大スターであることは説明不要だろう。意外にもテレビアニメで主人公を演じるのは、2008~09年に放送された「キャシャーン Sins」以来、約14年ぶりとなった。

 「おかげさまでデビュー56年で、約100のさまざまな作品で主役をやらせていただきました。14年前、『キャシャーン Sins』の時は監督からご指名をいただき、この年でも主役をできるんだ!とすごくうれしかったんです。これで最後かもしれない……とも思っていました。ここにきて、また主演をやらせていただくことになり、本当にうれしいです。昭和、平成、令和で劇場版アニメの主演をさせていただいたのですが、テレビシリーズでも達成させていただき、やったぜ!という気持ちです。なかなかそういう人はほかにはいないかもしれません。本当に強運です。今回、これが最後かもしれませんね」

 安室透は「名探偵コナン」の超人気キャラクターだ。

 「安室透にスポットが当たり、マンガが連載され、さらにアニメ化もされるということは、安室透のファンの方がたくさんいて、人気があることの証しでもあるわけですから、ものすごくうれしいことです。ワクワクしていました。でも、責任重大ですし、プレッシャーもありました。この作品では、任務や事件とは関係のない日常が描かれています。最初に思ったのは、安室の表情が穏やかなことです。それでいて、ところどころ寂しい表情も見せるんですよね。それはそれで魅力が増したとも思いました」

 喫茶ポアロで働く私立探偵・安室透、日本を守る公安警察の降谷零、黒ずくめの組織の一員のバーボンという三つの顔がある。古谷さんや「機動戦士ガンダム」への愛を感じるキャラクターだ。

 「ありがたいですよね。青山先生は、作品のいろいろなところで『ガンダム』へのリスペクトを込めてくだっていますしね。先日、対談させていただいて、お互い『安室透がこんなにブレークするとは思わなかったよね』と話していたんです。最初は、公安という設定ではなかったらしいんです。描いている中で『格好いいな!』となり、裏の設定を作ったそうです」

 ◇僕は安室透と違って…

 古谷さんにとって安室透は特別な存在になっている。

 「僕は元々『名探偵コナン』のファンでしたし、その作品でこんなに大きな役目を担わせていただくことになったことが、自慢です。夢がかないました。こんなに格好いいキャラクターですし、コナンともがっつり絡んで相棒のように事件を解決します。安室透は、現代のヒーローであり、男の理想なんです。スキルが多すぎる。何でもできてしまいます。老若男女問わず気配りもできる。人間的に素晴らしいですしね」

 「安室透=古谷さんに見える」とも感じるが、「いやいや」と謙遜する。

 「だって安室透はイケメンすぎるじゃないですか。憂いを秘めた表情を見せたり、色気がありますしね。申し訳ない気持ちになります。僕は安室透と違って料理が全然ダメですしね。料理を教わりたいです」

 ◇安室透の新たな一面

 安室透の新たな一面が見えるのも「ゼロの日常」の魅力だ。

 「普段、人に見られていない部分も描かれているから、さまざまな表情を見せます。大型バイクに乗ったり、ギターの弾き語りをしたり、不眠症の対処法だったり……とさまざまなスキルも明らかになります。そこが魅力にもなります。それと気配りですね。憎んでいるはずの相手にも気配りするところが描かれています。孤独を感じているんだなあ……と思わせるところもありました。警察学校組のことを思い出したり、冷静さを欠いた顔、我を忘れた顔を見せたりもします。寂しがり屋なのかもしれませんね。僕も意外に感じたところでしたが、共感もできました。この作品よって、より深くキャラクターを演じられるようになったと思います」

 安室透の愛犬・ハロも登場する。「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」のセイラ・マス役などでも知られる潘めぐみさんがハロを演じる。

 「僕も犬派だったのでうれしかったですね。すごく可愛いんですよね。潘めぐみちゃんが気持ちを込めて演じているので、『ワン』だけでも気持ちが伝わるんです。ハロがいて、安室透は一人じゃないと感じました。『ガンダム』でも『守るべきものがなくて戦ってはいけないのか?』というせりふがありますが、ハロが守るべきものになっているんですよね。大きな意味で国、人を守りたいと思っているけど、身近に愛する存在がいることで、その気持ちが強くなったんじゃないかな」

 ◇“三つの顔”の演じ分け

 安室透は“三つの顔”を持つ。古谷さんの演じ分けが絶妙で、キャラクターの魅力にもなっている。

 「降谷零が、バーボンを名乗って黒ずくめの組織で潜入捜査をしていて、バーボンが安室透と名乗り情報収集をしています。それぞれ演じているんですよね。立ち位置、ふれ合う人々によって演じ分けが変わってきます。降谷零はシャープに演じ、大人の男を感じさせたい。バーボンの時は、ミステリアスな雰囲気を伝えたいので、トーンを幅広くして、あえて抑揚を付けるようにしています。安室透は、身近に感じてほしいので、隣のお兄ちゃんのように爽やかに高めのトーンで演じるようにしています。安室透は、三つどころか『100の顔を演じ分けてみせる』って言っている。困ったものです(笑い)」

 “三つの顔”があるが、芯となるものもある。

 「大元にあるのは降谷零で、少年時代に憧れていた(宮野)エレーナさんを探し、真実を知るために赤井秀一を見つけようとしています。エレーナさんに恋慕の情みたいなものがあるのかな? そういうところは、どの顔にもあると思っています。一ファンとしては、降谷零が好きですね。格好いいです。僕は公安ものが好きですし、憧れます」

 「ゼロの日常」の見どころを「任務や事件から離れたキャラクターの魅力が満載です。さまざまな表情を見ることができると思います」と語る古谷さん。インタビュー中、常に丁寧に話をする姿が印象的だった。本人は否定するが、気配りもできて、さまざまな役を演じ分ける“スキル”を持つ古谷さんは、やっぱり安室透に見えてくる。「ゼロの日常」で、古谷さん、安室透の魅力を堪能してほしい。

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