早見沙織:「ローマの休日」は「原点」で「憧れ」 声優になった「巡り合わせ」

「金曜ロードショー」で放送される「ローマの休日」 TM,(R)& COPYRIGHT (C)2022 BY PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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「金曜ロードショー」で放送される「ローマの休日」 TM,(R)& COPYRIGHT (C)2022 BY PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 女優のオードリー・ヘプバーンさん主演の名作映画「ローマの休日」(ウィリアム・ワイラー監督、1953年)のデジタルリマスター版が、日本テレビの映画枠「金曜ロードショー」で5月13日午後9時に放送される。「ローマの休日」が同枠で放送されるのは約18年ぶり。日本語吹き替え版で、声優の早見沙織さんがアン王女(ヘプバーンさん)、浪川大輔さんが新聞記者のジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペックさん)をそれぞれ演じる。早見さんは「SPY×FAMILY」「鬼滅の刃」「聲(こえ)の形」などで知られる人気声優。
「ローマの休日」は、声優を目指すきっかけになった特別な作品で「原点」で「憧れ」だったという。早見さんに「ローマの休日」、声優としての活動への思いを聞いた。

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 ◇恐れ多い… 大緊張、大不安も

 日本語吹き替え版の声優が発表された際、早見さんは「子供の頃、声優というお仕事を認識したきっかけが、池田昌子さんの吹き替えのオードリー・ヘプバーン作品を見たことでした」とコメントしていた。幼少期に「ローマの休日」の吹き替え版を見ていなかったら、「声優に興味を持つかどうか道が分かれていたかも」と明かす。

 「初めは海外の方が日本語を勉強されて話していると思っていました(笑い)。ある時、俳優とは別の方が吹き替えしているのを知り、そういう仕事があるんだ……と思って、映画や好きなアニメも見る中で声優に興味を持つようになりました」

 声優を目指すきっかけにもなった作品ということもあり、特別な思いがあった。収録は、期待と不安が入り混じっていたという。

 「元々、『ローマの休日』が好きな親が喜んでくれました。自分にとって原点、大事な作品の一つに吹き替えで携わらせていただいて幸せです。遠い憧れみたいなものがあったので、喜びも大きかったのですが、恐れ多くて……。お気に入りの作品とか好きな作品とかの次元ではないので大緊張、大不安でした」

 ◇勝手にハードルを上げてしまい

 思い入れが強すぎて、普段とは違う感覚もあった。

 「収録前に原音、吹き替えバージョンを改めて見たのですが、作品としてすごくすてきなんです。作品のキラキラした魅力、アン王女の麗しい姿、おちゃめな可愛らしい姿が、声でも少しでも伝わるといいなと思っていました。ただ、映像チェックをしている時、どういうふうにやったらいいのかな?とか思考が止まらなくなってしまって。普段はそこまであまり意識しすぎないこともあるのですが、今回は、自分の中で勝手にハードルを上げて、妄想が膨らみ、考えすぎて、よく分からなくなっていました。王女然としているところは『どっしりというか、ゆったりと大人っぽく』とディレクションをいただき、そこも意識しました。映像がモノクロなのであまり現代に寄せすぎずということも考えながら演じました」

 普段の演技は「自分が声を出して芝居させていただくので必ずリンクしてくる」と独特の一体感を感じることもあるという。「ローマの休日」はどうだったのだろうか?
 
 「自分にとっては憧れの存在で、手を伸ばすような気持ちでずっといました。アンは王女としてりんと気高くというか、ちゃんと務めを果たす芯のしっかりした部分もあれば、チャーミングかつ無邪気で表情がクルクルと変わるとても魅力的な人物。私もその魅力にどんどん吸い寄せられるような気持ちで楽しかったです」

 ◇かけがえのない出会いを大切に

 早見さんは中学1年生の時、声優養成所に通い始め、中学2年生で現在の事務所に所属し、声優としてデビューした。

 「子供の時は声優という仕事をよく分かっていなくて、声優になってからイベントがあったり、歌やラジオがあったりすることを実感したので、こんな声優になるというビジョンをそこまで明確に描いていませんでした。逆にビジョンがなかったからこそ新たな出会いが感動的なんですね。今回もそうですけど、こんなことがあるんだ、こんな作品があるんだ、こんな仕事をさせていただける……と思えることがたくさんあり、そういう意味ではよかった。すてきな巡り合わせがありますね」

 早見さんは唯一無二の美声が魅力だ。さまざまな役を演じる中で、ストイックに演技に向き合っている。

 「作品ごとに気付きだったり、学ぶべきポイントだったり、いろいろ考えることはたくさんあります。現場で感じたこと、もう少しこうすればよかったなど、考えたり気づいたりしたことを台本にメモし続けています。そういう作業はこれからもあるでしょうし、一生そういうことなのかなと思います」

 声優の活動の醍醐味(だいごみ)は「何にでもなれるところ」と考えている。

 「性別もそうだし、人じゃないもの、今作のように誰かの人生を追体験できて、自分とは全く別の世界を知ることができます。別のものになってその世界に行けるのは声優ならではの面白さですね。自分が発した音、声で自分自身も心が震える瞬間があります」

 デビューから第一線を走り続けている早見さん。活動の中で「かけがえのない出会い」があると感じている。

 「声の仕事と出合ったこと自体が自分にとって奇跡的なこと。子供の頃、引っ込み思案だったのに、自分で養成所に電話するなど、どうしてあんなに行動力があったのか?と不思議なんです。行動を起こしたのは巡り合わせというか。この仕事があったからいろいろな方、いろいろな作品に出会えました。かけがえのない縁をいただいています」

 「ローマの休日」を見て、声優に興味を持つ……というのも何かの“巡り合わせ”だったのかもしれない。最後に“声優としての理想像”について聞いた。

 「自分が携わらせていただいた作品に触れた方に、心が震えるような体験をしていただいたり、すてきなものが伝わるといいなと思っています。オードリーの吹き替えができたことは、自分にとってとても遠いと思っていた憧れを少しのぞいたようで、感慨深く、感謝などいろんな気持ちがあります。声優は、いろいろな方にすてきな作品を届ける一端を担う存在ですし、修業、研鑽(けんさん)を積んでいきたいです」

 (遠藤政樹/フリーライター)

 「金曜ロードショー『ローマの休日』オリジナル新吹き替え版」(日本テレビ系)は、5月13日午後9時~10時54分に放送。

 ◇キャスト(吹き替え、敬称略)

 アン王女:オードリー・ヘプバーン(早見沙織)▽ジョー・ブラッドレー:グレゴリー・ペック(浪川大輔)▽アービング・ラドビッチ:エディ・アルバート(関智一)

 

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