渡辺謙&伊藤英明:WOWOW×ハリウッド共同制作「TOKYO VICE」撮影エピソード語る 主演アンセル・エルゴートとのプライベート秘話も

WOWOWとハリウッドの共同制作ドラマシリーズ「TOKYO VICE」に出演する渡辺謙さん(右)と伊藤英明さん
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WOWOWとハリウッドの共同制作ドラマシリーズ「TOKYO VICE」に出演する渡辺謙さん(右)と伊藤英明さん

 俳優の渡辺謙さんと伊藤英明さんが出演するWOWOWとハリウッドの共同制作オリジナルドラマ「TOKYO VICE」が、毎週日曜午後10時からWOWOWで放送されている。ドラマは、大手新聞社に就職した米国人記者ジェイクが東京の裏社会と関わりスキャンダルをつかんでいく姿を描いたオリジナル作。渡辺さんはジェイクと組んで危険なネタに踏み込む敏腕刑事・片桐、伊藤さんは裏社会とつながりのある刑事・宮本を演じる。渡辺さん、伊藤さんに今作の撮影エピソードなどを聞いた。

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 ◇ロケでは規模に驚き?

 「TOKYO VICE」は、大手新聞社に就職した米国人記者が、警察担当として東京の裏社会に接しスキャンダルをつかんでいく姿を描く物語。主人公のジェイクを映画「ウエスト・サイド・ストーリー」(2021年)で主演に抜てきされた米俳優アンセル・エルゴートさんが演じる。「ヒート」(1995年)などのマイケル・マン監督がエグゼクティブ・プロデューサーとして参加し、第1話の監督も手掛ける。全8話。
 
 ドラマはWOWOWとハリウッドの共同制作。全編オール日本ロケで撮影され、「日本人スタッフもたくさん入っていましたけど、基本的には向こう(ハリウッド)の作りと一緒ですね。そんなに違和感はなかったです」と渡辺さん。ただ、関わる人数の規模は大きく違っていたといい、「人数の規模的には、倍では利かないぐらいの人が、わーっと見えていました」と明かす。

 一方、伊藤さんは「とにかく僕は規模に圧倒されていましたね」と出演の感想を吐露。「渋谷のシーンも、日本では考えられないんですけど、渋谷の一角のブロックを全部借り切って。ホテル街だったんですけど、そこが控室になったり……」と驚いたという。

 そんな撮影は「すごく楽しかったです」と笑顔をみせる伊藤さん。「でも『謙さんはこういうところで戦っているのか』と……。台本も、翻訳になるとせりふが生っぽくなくなるので、『こういうせりふにしたら』と謙さんが台本の段階から直してくださって。謙さんに先頭に立ってもらって、我々経験の少ない俳優を引っ張ってもらったなと感謝の気持ちでいっぱいです」と渡辺さんへの思いを語る。

 言葉の問題については、渡辺さんの見えない部分での活躍があったようで「日本語も、ヤクザが使う言葉や警察用語、新聞記者用語などの特殊な用語、話し方があるので、その辺のアドバイザリーはやらせてもらいました」と渡辺さん。「夜中の3時ぐらいに撮影していて、『朝までに返事ください』とメールが来て『ええー!』とか(笑い)。そういうのは多々ありました」とどこか楽しそうに振り返る。

 ◇アンセル・エルゴートが家に滞在

 渡辺さん演じる片桐はジェイクと共に危険なネタに踏み込んでいき、伊藤さん演じる宮本も第1話で一緒に夜の街に繰り出すなど、それぞれ主演のエルゴートさんと共演シーンが多い役だ。伊藤さんは、宮本役について「ダブルフェイスを持っていて、アンダーグラウンドともつながっている。最初にジェイクに近づいたきっかけは、外国人を英語で口説きたいから(笑い)。両方(警察とマスコミ)を利用しながら警察社会の中で暗躍していく。外国人の記者には、日本のアンダーグラウンドの世界を教えることでつながっていくんです」と説明する。

 一方、「僕と英明は対照的な役」と渡辺さん。「僕はジェイクと一定の距離を保ちながら、だんだん距離が縮まっていく。英明はぽんって飛び込んで仲間に引き込むようなタイプ。まったく違うキャラクターで、劇中ではちょっと反目するシーンもありました」といい、「英明とアンセルが共演しているシーンをスタッフから聞くと『もう好き放題やってるな』という感じでしたね」と笑いながら感想を明かす。

 エルゴートさんの印象について、渡辺さんは「すごく真面目」といい、「マイケル・マン監督と会ったことも、彼にとっては大きな刺激だったと思います。(監督が)すごくリアリティーを求めたから。だからジェイクとしても日本語を習練しようとしたし、日本の文化をできるだけ自分の中に取り込もうとしていました」と話す。

 作中でのせりふについても、渡辺さんはエルゴートさんと真剣に話し合ったこともあったという。「ジェイクは、相当日本語が流ちょうな役なんですよ。だから作品的に、あまりにも片言だったり、聞いても意味が伝わらなかったりしたときは、遠慮なく『ここの部分は使えないから、もう英語でやろう』と言いました。やっぱりそういうことはちゃんと腹を割って話しましたね。もちろん、そこまで(レベルを)上げてくるからできることですが」と撮影中のエピソードを明かす。

 伊藤さんもエルゴートさんの日本語を「すごく上手」と称賛し、「積極的にいろんなことを体験しようとしていましたね」と感嘆。「彼に日本人のアシスタントが付いていて、その人の六畳一間の家に泊まりに行ったり、休みになると代々木公園に行ってバスケしたり……積極的に日本人と交流を持って、日本で感じたものを役に反映させて厚みをもたせる、という覚悟みたいなものを感じました」と振り返る。

 そんなエルゴートさんの姿勢を見て「いろんなことを体験してほしいなと思った」と伊藤さん。エルゴートさんの日本滞在中は、プライベートで行動を共にする機会が多く、正月の休み期間には、伊藤さんの岐阜の家に5日間、渡辺さんの長野の家に2日間滞在したという。伊藤さんに宿泊時のエピソードを聞くと、「日本のお正月を体験してほしかったんです。あと岐阜に来たときには刀鍛冶を見に行ったり、神社やお城を見に行ったりしました。鍛冶屋に行ったときは、彼に刀をプレゼントしたんですよ、模擬刀ですけど。それを謙さんの家に忘れていって(笑い)」と楽しい日々だったようだ。

 ◇90年代の日本を再現 ディテールのこだわりに驚き

 渡辺さんといえば、2003年に「ラスト サムライ」で米アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、世界にその名を轟(とどろ)かせた。それから約20年が経った今、ハリウッドによる日本の描き方の変化をどのように見ているのか。

 「やっぱり“piece by piece(作品によって)”だと思うんですよね。例えば『SAYURI』(2005年)の場合は、僕らもオペラだと思っていたから、ものすごいアジアンテイストで『ちょっと日本とは違うよね』という部分があっても許容する。でも『硫黄島からの手紙』(2006年)や『ラスト サムライ』でがっつり日本を描くんだ、という場合は、やっぱりプロップ(小道具)や美術、アートデザインの人たちに違いを指摘します」と渡辺さん。ただ、同時に「日本人の視点で見るものと、まったく違うアングルから見るものってあるから、いい意味でせめぎ合いだと思う」とも考えている。

 今作も舞台が90年代で、現代の日本とは少し異なる。渡辺さんは「近いようで昔の話なんですよ。アートセクションはすごく大変だったと思う。だけど非常に面白い切り口になったんじゃないかなという気はします」と手ごたえを感じているようで、「衣装を着ると『90年代だな』と思えるサイズ感なんです。ちょっとだっぷりして。違う世界に入るという意味では、入りやすかったかなと思います」とにやり。伊藤さんも「みんながたばこの煙モクモクの中で動いているとか、ところかまわずたばこを吸うとか、ディテールもすごくこだわっている。衣装も『この時代のスーツだよね』と思う、すごく細かいディテールでしたね」とうなずく。

 最後に、本作の見どころについて聞くと「90年代はアナログとデジタルの分岐点みたいな時代。ただテクノロジーの問題だけじゃなく、精神構造の分岐点でもあった年代だと思うんですよ。それはやっぱりちょっとカオスだし、しかもアンダーグラウンドに近いところの話だから、面白がれるんじゃないかな。最後の回の脚本を読んでひさびさに『ええ!? どうすんのこれ』と思いました。それはかなり楽しめると思います」と渡辺さん。

 伊藤さんも「誰も見たことのないTOKYO90年代。やくざと警察の関係とか、そこはやっぱり見どころですよね。日本人が描くアンダーグランドの世界ではなくて、マイケル・マンを通してハリウッドのスタッフから見た日本は、すごく斬新なんじゃないのかな。どう映し出されているか、すごく期待しています。僕らからすれば『ラスト サムライ』ぐらいの衝撃があると思います」と本作への期待を語ってくれた。

 「TOKYO VICE」は毎週日曜午後10時にWOWOWプライム、WOWOW 4Kで独占放送。全8話。WOWOWオンデマンドでも配信中。

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