俳優の千葉雄大さんと永山絢斗さんがダブル主演を飾る連続ドラマ「WOWOWオリジナルドラマ ダブル」（中川和博監督、6月4日から土曜午後10時半放送・配信）。2020年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した野田彩子さんのマンガ「ダブル」（ヒーローズ）を実写化した。主人公の一人・鴨島友仁（かもしま・ゆうじん）を演じた永山さんに、本作や千葉さんとの関係などについて聞いた。

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　◇マンガ実写化はプレッシャー　「みんな怖い部分が多少ある」

　本作では、天性の才能を持った俳優と、彼の才能をいち早く見いだして世に送り出そうとする“代役”俳優の2人を中心とした演劇世界が展開される。永山さん演じる鴨島は、自身も「世界一の俳優になりたい」という夢を抱きながら、千葉さん演じる宝田多家良（たからだ・たから）の才能にほれ込み、演劇のいろはを教え生活も支える。

　「最近めっきりマンガを読まなくなってしまっていた」という永山さん。原作のマンガを読んで「前情報も何もなくて初めは戸惑いましたが、舞台役者の話だと分かって次第にドキドキワクワクしながら読みました」と話す。

　「（鴨島と宝田の）2人がリンクしている部分、キャラクターの違い、お互いの愛情の持ち方の違いが興味深くて、最後まで一気に読んでしまいました。好きな構成のマンガです。それと同時に『これを自分がやるのか』とどんどん緊張が強まりました」

　実写版の見どころは「細かい描写や少しコメディーに触れてる部分でしょうか。マンガだと静止画で話がどんどん飛んでいきますけど、実写は一つの場所、ワンシーンでセリフが全部まかなわれていきます。すごい面白い台本の流れになっていると思います」とアピールする。

　とはいえ、マンガ原作の実写化は昨今数が多く、世間で成功作と呼ばれるものは数える程度。実写化の一報が広まっただけで、ファンが鋭く反応して良しあしを議論する。

　「（制作陣は）みんな怖い部分が多少なりともあると思うんですね。だけどそれがいいところでもあります。あとは、出てくる登場人物を演じたキャストの方々が、個人的に好きな俳優さんばっかりだったので、それもすごい楽しみでした。怖い怖い言ってますけど『やってやる！』という熱い強い気持ちを持って臨む形になって、それぞれの俳優さんのアプローチの仕方が見ていて楽しかったです」

　◇「絶対話さない」から「いいヤツ」に　千葉雄大の悩みに共感

　永山さんが過去に千葉さんに出会ったのは、約10年前だという。「僕の兄と千葉君が現場が一緒で、たまたま近くを通りかかったんで現場にお邪魔したんですよ。その時に『絢斗と同い年だよ』とか話した記憶があります。（千葉さんと直接）話した覚えはないです」

　その当時に抱いた千葉さんの印象は「『こんな媚（こび）売りやがってコノヤロ〜』って思ってましたよ（笑い）。『俺とは絶対合わないから話さない』とか。20代前半の若気の至りです」と笑う。

　しかし永山さんと千葉さんは同い年で、かつ同じ俳優として活躍する身。今回の初共演で、緊張感のある共依存関係の役者を演じ、印象がガラリと変わったという。

「『人を見てるな』というのは想像どおりでした。ただそのぶん、人の気持ちを察し、そして、自分に厳しくて人に優しい。いろいろ我慢してきたと思いますし、演技の技量もすごくある。彼にも彼なりのコンプレックスがたくさんあって、『何か変わりたい』『どういう役者を目指していくか？』と悩んでいる。お互い三十（歳）を過ぎて、心に押し寄せる波がきっと一緒だったと思います。千葉雄大は、すごくすてきでしたね」

　千葉さんとの共演を「本当に必死こいて、肩組んで走り抜けたみたいな感じだった」と振り返る永山さん。「僕と千葉君は、同年代ですけど色が違う。ダブル主演で頭を張ってやれるっていうのは、おそらくこの先ないでしょうし、しっかり楽しみたいなと思っていました」

　「『最初は何考えてるか分からないな』と思ったりもしましたけど、話すうちに共感する部分が多くて、お互いに弱い部分を少しずつ話していくうちに、『千葉雄大、いいヤツだな』と思いました」とにっこり。撮影が終わっても連絡を取り合っているといい、「この『ダブル』という作品は、僕の俳優人生のキーになる作品になりました」と胸を張る。

　続けて永山さんは「千葉君とはすごく濃密な時間を一緒に過ごして、すごく距離を縮められました。また共演できたらいいなって本当に心から思っています。『また勝負しようぜ！』じゃないですけど、何か良い作品作りに一緒に関わりたいです」とほほ笑んだ。（撮影・文：桜井恒二）

　※ヘアメーク：新宮利彦（VRAI）　スタイリスト：BABYMIX