本郷奏多:映画「鋼の錬金術師 完結編」エンヴィー役で大事にしていたこと 「憎らしくて、可愛げがある」ことが魅力 見どころは“エド”山田涼介の熱意

映画2部作「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成」にエンヴィー役で出演する本郷奏多さん
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映画2部作「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成」にエンヴィー役で出演する本郷奏多さん

 荒川弘さんの人気マンガ「鋼の錬金術師(ハガレン)」を実写化した映画二部作「鋼の錬金術師 完結編 復讐(ふくしゅう)者スカー/最後の錬成」(曽利文彦監督、5月20日、6月24日公開)にホムンクルス(人造人間)のエンヴィー役で出演する俳優の本郷奏多さん。映画は錬金術が科学のように発達した世界を舞台に、「Hey! Say! JUMP」の山田涼介さん演じるエドワード・エルリック(エド)らが失った体を取り戻すために旅する姿を描いた作品。本郷さん演じるエンヴィーは敵側のキャラクターだが、本郷さんは「可愛げがある」と魅力を語る。本郷さんにエンヴィーの役作りや原作の魅力、主演の山田さんらとの撮影エピソードなどを聞いた。

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 ◇エンヴィーの魅力は? 「ちょっと憎らしくて可愛げがある」

 「鋼の錬金術師」は、「月刊少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)で2001~2010年に連載された。錬金術が科学のように発達した世界を舞台に、エドとアルフォンス(アル、水石亜飛夢さん)の兄弟が、失った体を取り戻すため「賢者の石」を探す旅に出る……というストーリー。アニメ化もされ人気を博し、2017年には1作目の実写映画が公開された。

 新作は、マンガ「鋼の錬金術師」の連載20周年を記念した新プロジェクトとして公開。2部作の前編「復讐者スカー」は、“傷の男(スカー)”(新田真剣佑さん)が、かつて国軍によって滅ぼされたイシュヴァールの民の復讐のために、すべての国家錬金術師の抹殺を誓いエドと相対する。後編「最後の錬成」はホムンクルスたちの生みの親“お父様”(内野聖陽さん)との戦い、その後のエドとアル、仲間たちの物語が展開し、原作の最終話までを描く。

 --前作に続いてエンヴィー役で出演されます。今回の話を聞いたときの率直な思いを教えてください。

 本郷さん 1作目のときから、みんなで「続編が作れたらいいね」とは言っていたんです。ただ、そこから4年ほどあいて、もうないものだと思っていたところで「続編、作るみたいです」と聞いた時は驚きが大きかったですね。何年かあいて「続編作ります」というのは初めての経験でびっくりしましたけど、うれしかったです。

 --役作り、ビジュアル面でこだわったことは?

 本郷さん 1作目のときは、衣装や髪形をものすごく時間をかけてゼロから作り上げたんです。原作では髪の毛がバーッと簡単に描いてありますが、あんなふうに自立はしないので(笑い)。たとえばどのぐらいの“束感”にするのか、そういうことも含めてクランクイン前に何カ月もかけました。たぶん10回ぐらいはスタジオに足を運んだんじゃないかな。すべてのキャラクターに対して、ビジュアルの作り込みはこだわっていたと思います。ただ、今回は前回のを踏襲しつつ改良を加えていったので、作業は前作ほど多くなかったですね。

 --エンヴィーは敵側のホムンクルスですが、どこか親しみを感じられるようなキャラクターでもあると思います。本郷さんから見たエンヴィーの魅力とは?

 本郷さん 確かに、どこか憎めないところはあるなあ、というキャラクターですね。嫌なこともするんですけど、エドたちとところどころで共闘する瞬間もあり、なんか憎めないキャラクターだと思います。決して戦闘能力も高くないですし、そういうところも憎めない要素になっているのかな、と。

 --前作からエンヴィーを演じるうえで、一貫して大事にされていることは何でしょうか?

 本郷さん 小憎らしさ、というか……、エンヴィーの正体は、弱っちくて、人間に対しても嫉妬していて、自分にすごくコンプレックスがあるキャラクターだと思うんです。醜い見た目と言われるとブチ切れるし、自分自身に実はコンプレックスがあるキャラクターで、だからこそちょっと嫌味っぽい。それがエンヴィーのキャラクターかなと思うので、そういう小憎らしさですね。ちょっと憎らしくて、だから可愛げがある。そういうキャラクター像を大切にしたいなと思っていました。

 --撮影を振り返って、今でも覚えているような強烈なエピソードはありますか?

 本郷さん 男性陣がめちゃめちゃ筋トレしていたことが印象的です。撮影では、照明を組み替えたり、グリーンバックを調整したりするので、ワンカット、ワンカットの間が結構あいていたんです。10、20分ぐらいあくことも多かったんですが、その瞬間にみんなが器具を使って筋トレしているんです。そこで汗をかいて、いい大人たちが怒られているのが印象的でした(笑い)。本番で汗をかくのは仕方がないけど、筋トレで汗かいてメークさんたちに「もう、また!」と子供みたいに怒られているのが可愛かったな、と。もちろん役作りでやっているんですけど、途中からみんな楽しんでやっていましたね。僕はあまり興味がなかったんですけど(笑い)。

 ◇見どころは“エド”山田涼介の熱意 「ものすごくすてきな役者」

 --原作は2021年に連載開始20周年を迎えました。20年間愛され続けている「鋼の錬金術師」の魅力はどこにあると思いますか?

 本郷さん 「ハガレン」に関しては、「すごいな」と思うポイントがいくつもあるんです。ただのバトルものではなく、物語の本筋やテーマ、描きたいものがすごくはっきりしている。少年誌で、当時としては類をみない作品だったんじゃないかなと思っています。そして、出てくるキャラクターがすごく魅力的。登場人物、めっちゃ多いと思うんですよ。でも、ちゃんとキャラが立っていて、どのキャラにも正義があって、好きになれるポイントがある。それはたぶん、ものすごく難しい作り方で、レベルが高いことをやってると思うので、荒川先生のさまざまな能力値の高さが凝縮されたものが「鋼の錬金術師」という作品だと思います。世界観もすごくすてきですし。

 --演じるエンヴィーを除いて、本郷さんが原作で特に好きなキャラクターは?

 本郷さん マンガでは、マスタング大佐が好きですね。基本的にはみんなの上に立つ人間になるために気丈に振る舞っているけれど、心を許した人たちの前だけではちょっと見せる弱気さとか、ちょっと天然っぽいところとか、人間らしさがあります。

 --今回の実写映画で、自分以外の出演者で特に世界観がマッチしていたと思うのは誰ですか?

 本郷さん 新しいキャストでは、ランファン役の黒島結菜さんがすごくすてきだなと思いました。かなり難しい役だと思うんですよ、アクションも大変ですし。あまり演じる機会がないキャラクターだと思いますが、すごく強いキャラクターを演じていたのは印象的でした。かっこよかったですね。

 --エンヴィーはビジュアル的なインパクトもあり、今作の中でもかなり個性的なキャラクターだと思います。本郷さんは近年出演された映画「Diner ダイナー」(2019年)や「嘘喰い」(2022年)などでもクセの強い役を演じていますね。

 本郷さん 確かに、そういう役ばかりやっているなとは思いますね、人間じゃなかったり(笑い)。“現代社会を生きる等身大の年齢の若者”は1割ぐらいしか演じていないんじゃないかなと思います。だからこういう原作もののオファーをいただくと、「確かに僕がやりそうな役だな」と思いながらやらせていただくことが多いですね(笑い)。

 --そのような個性的な役を演じる楽しさというのはありますか?

 本郷さん 楽しいですね。普段日常生活を送っていたらできないキャラクターを演じられるのは、やっぱり楽しいです。役者という仕事をしているからこそできるキャラだと思うので。

 --最後に、本郷さん視点で映画の一番見てほしい注目ポイントを教えてください。

 本郷さん 完成した映画を見て「それぞれのキャストがそれぞれのキャラクターに対して愛を持って作り込んでいるな」という印象を持ちました。特に、やっぱり山田くんは本当にものすごくすてきな役者さんだと思いました。この作品に対する思いも人一倍強い。「最後の錬成」はまだ見られていないんですが、たぶん「ものすごくすてきだな」と思って見ることでしょうし、楽しみにしています。だから見てほしいポイントは、キャスト全員の熱意、特に山田くんの熱意。そこを楽しみにしていただけたらと思います。

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