ドラゴンボール超 スーパーヒーロー:映像美の秘密 細部までこだわり抜く 児玉徹郎監督に聞く

「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」の一場面(C)バード・スタジオ/集英社(C)「2022ドラゴンボール超」製作委員会
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「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」の一場面(C)バード・スタジオ/集英社(C)「2022ドラゴンボール超」製作委員会

 鳥山明さんのマンガが原作の人気アニメ「ドラゴンボール」シリーズの21作目となる劇場版アニメ「ドラゴンボール超(スーパー) スーパーヒーロー」(児玉徹郎監督)が、公開された。2018年12月公開の第20作「ドラゴンボール超 ブロリー」以来の劇場版で、最新技術によって、“ドラゴンボールらしさ”がありながら新しい映像表現に挑んだ。児玉監督に制作の裏側を聞いた。

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 ◇コマ単位で画を変える

 「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」は、原作者の鳥山さんが脚本・キャラクターデザインを担当した。児玉監督は「ブロリー」で3Dパートを担当したことがあり、新作では監督に抜てきされた。「ブロリー」は全世界の興行収入が135億円を突破するなど大ヒットし、世界中で人気の作品ということもあり、児玉監督は「最初は不安が大きく、大きな課題もありました」と明かす。

 「さまざまな世代のファンがいる作品です。これまで培ったものがあり、そこから外れることもできません。落としどころが難しいんです。ただ、最初に気にしていたことは解消されたとも思います。セルルック(手描き風3DCG)では表現が難しいところもありました。画、線が弱くなり、表情が淡泊に見えてしまうこともあります。CGの弱点とは?とスタッフと問答し、違和感を払拭(ふっしょく)することに一番力を注ぎました」

 映像の細部までこだわり抜いた。

 「作画は、画が一枚一枚変わり、無意識に見られるところもあります。一方、CGは画が固定されていて、それが動くと違和感が生まれることがあるんです。連続した情報の変化と維持について研究し、コマ単位で画を変えていこうとしました。作画にはできないこととして、密度、線のクオリティーを上げることもできます。CGのよさと、作画でしかできないことのいいところを寄せ集め、画として見せられる表現を目指しました」

 ◇日常シーンを丁寧に描く

 「ドラゴンボール」シリーズは、バトルシーンが見どころの一つになっている。

 「『ドラゴンボール』らしい動きについては特に心配していませんでした。東映アニメーションさんがずっとやってきたノウハウもありますし、何も言わなくてもアドリブを利かせて、クオリティーを上げていただきました。素晴らしかったですね」

 一方で課題になったのが「日常シーン」だったという。

 「キャラクターが“立ちっぱなし”にならないようにしました。キャラクターがしゃべっている時、一人がしゃべって、ほかの3人がそれを見て、立ちっぱなしになっている……というのをとにかくやめようとしました。誰かがしゃべっていたら、それを聞いてリアクションを取っている人もいれば、話を聞いていない人もいる。それぞれのキャラクターの動機付けをしっかりしようとしました。違和感のない画作りを目指したのですが、それがすごく大変でした」

 表情も作り込むことで、キャラクターの個性を表現しようとした。

 「動機とキャラクターの性格を考えれば、キャラクターが勝手に動き出します。さらに、表情を豊かにしようとしました。元々は、平面のキャラクターなので、難しいんです。アングルによって細かく調整していく作業が必要でした。その辺りのテクニカルなところをすごく詰めていきました。画の破綻はないはずです」

 「ジャンプっ子ですから。大好きです。鳥山先生の絵も大好きです。大友克洋、メビウス……と密度のある画がやっぱり好きなんです。密度が正義だと思っていますので」という児玉監督。神は細部に宿る……と愛を注ぎ込んだ。

 「今回、新規の美術の設定をほぼやらせていただきました。やっていいんですか!?という感じで(笑い)。ガジェットにもこだわりました。鳥山先生のガジェットはやっぱりすごいんですよ。エンジンなどを見てもミリタリーマニアの情熱を感じます。そういうところを、アニメでも復活させたかったところもあります。原作に出てきた乗り物のCGモデルも一通り作りました。いろいろなところに配置しています。動かしていないものもあるのですが(笑い)。レッドリボン軍が出てくるので“らしい”ものも作りました。どこかにあります。結構、細かいことをやっています」

 児玉監督をはじめとした愛があったからこそ、「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」は映像美を実現した。児玉監督によると、さまざまな仕掛けが用意されているようなので、じっくりと何度も楽しんでほしい。

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