ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
遠藤達哉さんが集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+(プラス)」で連載中のマンガ「SPY×FAMILY」。4月から放送されたテレビアニメのスタートとともに急速にブレークを果たした。そのブレークに貢献したものは何だったのか。アニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。
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大好評のうちにテレビアニメ第1クールが終了した「SPY×FAMILY」。アニメ化決定以前からマンガ好きの間で話題だった本作は、放送前から注目度も高く、今ではアニメ・マンガファン以外の間でまで話題に昇るほどの人気作となりました。
その盛り上がりは、同様にアニメ・マンガ好きに止まらず、幅広く知名度を獲得していった「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」にも通じますが、その人気の広がり方には少し違いもあるようです。本作でみえた、アニメの新たなムーブメントの生まれ方について、振り返ってみます。
まず、前述の作品の人気の広がり方との一番の違いとしては、熱心なアニメ・マンガファン以外の層への作品の“リーチの早さ”が挙げられます。
特に印象的だったのは、「鬼滅」や「呪術」では、作品が盛り上がり知名度も上がってきたアニメの放送終了前後から特に活発になったさまざまなコラボが、本作では放送開始と共に行われてきたことです。たとえば、4月の放送開始時には、既にふりかけやカレーといった食品コラボが発表され、そこから献血コラボが行われ、以降もキャラクターが「anan」表紙を飾ったり、「ばかうけ」などとのコラボ、「UT」やドラッグストアとのコラボなど次々と展開されてきました。
こうした、アニメグッズの発売とも違う、いわゆる“異業種コラボ”とされる展開は、前述の「鬼滅」や「呪術」だけでなく、これまでもさまざまな作品で行われてきています。しかしそれらは放送話数も進み、アニメ・マンガファン以外にまで、ある程度知名度が高まってからであることが多かったため、注目作とはいえ、こんなにも早い段階からこれだけの展開が行われたのは、新作の深夜アニメとしてはほとんど例がないと思います。
同様に、アニメ・マンガファン以外へのリーチに大きく貢献していたと思われるのが、OPに「Official髭男dism」、EDに星野源さんという豪華なアーティストがタイアップした主題歌です。今をときめく豪華アーティストという話題性はもちろん、何より彼らが音楽番組に出演するたびに、“「SPY×FAMILY」主題歌テレビ初披露”などという形で、作品タイトルが枕ことばについてメディア各所で紹介されたことも大きかったと思います。
またNHKの音楽番組「SONGS」では、星野さん、Official髭男dismが2週連続で取り上げられ、ともに本作の映像込みで主題歌が紹介されるなど、放送中の民放アニメとしては異例の取り上げられ方もされていました。共に紅白歌合戦出場経験者でもあるため、今年の紅白出場の有無や披露楽曲によっては、「鬼滅」でのLiSAさん初出場時と同様、本作の第2クール放送時期にも重なる年末に、更なる作品の知名度の広がりも起きることがあるかもしれません。
そうして早い段階から町中やスーパー、テレビやネットニュースで本作の名前やイラストを目にする機会が多かったことで、本作はアニメ・マンガファンに止まらない、幅広い層への作品のリーチが、従来と比べてよりスピーディーだったのだと思います。実際に、前述の「鬼滅」や「呪術」でさえ、世間的な知名度については2クール目ごろから上がっていった印象ですが、本作は5月の連休明けごろには、作品を話題にする層が明らかにアニメ・マンガファン以外にまで広がっていました。これは恐らく、それこそ「鬼滅」や「呪術」をはじめとする昨今のアニメブームで拡大してきた新たなアニメ視聴層の「次は何を見る?」という需要に、上記のスピーディーなリーチが上手くハマる形でムーブメントが大きくなっていったのではないかと思います。
これまでは、放送中に生まれる盛り上がりを後追いする形で、放送終了前後から、アニメ・マンガファン以外にも向けた異業種コラボや、それに伴う視聴層の拡大が起きてきました。しかし、近年のさまざまなブームによって潜在的なアニメ視聴層がかなり広がった今、本作のように、放送開始と同時に人々の“次の話題作を求める需要”にうまく合致する形で作品がリーチする、こうした新たなムーブメントの生まれ方も、今後は増えていくのかもしれません。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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