SixTONES京本大我:「変わろうとしていなかった」もがき苦しんだジャニーズJr.時代 “光”となった数々の出会い

映画「TANG タング」で林原信二を演じるSixTONESの京本大我さん(C)2015 DI (C)2022映画「TANG」製作委会
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映画「TANG タング」で林原信二を演じるSixTONESの京本大我さん(C)2015 DI (C)2022映画「TANG」製作委会

 わけあり主人公と不良品ロボットの出会いが、人生の宝物を探す大冒険へとつながっていく様を描く映画「TANG タング」(三木孝浩監督、8月11日公開)。本作で、ナルシシストなロボットデザイナー・林原信二を演じるのが、人気グループ「SixTONES(ストーンズ)」の京本大我さんだ。三木監督からは同役を通じて「ユーモア的なポジションを担ってほしい」と託され、自分では「20代後半の今だからこそできた役」だと振り返る。林原との出会いが役者としての京本さんに影響を与えたように、彼自身の人生を大きく変えた出会いもあった。“今の京本大我”を作り上げた数々の出会いとは……。

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 ◇林原役は「今だから抵抗なく受け入れられた」 演じるやりがいも

 映画は、ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれた、デボラ・インストールさんの小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」(小学館文庫)が原作。無職で人生迷子の主人公・春日井健(二宮和也さん)は、ある日、時代遅れのポンコツロボット・タングと出会う。ある理由から自分の夢を諦め、人生を一歩も進めずにいた健だったが、ロボットであるはずのタングがさまざまな感情を学び、成長していく姿を見て、次第に昔の自分を取り戻していくというファンタジー作だ。

 京本さんが演じる林原は、健とタングが冒険の途中で出会うロボットデザイナー。AIやロボットについては博学だが、超がつくほどのナルシシスト。一見すると二枚目のように思えるが、三木監督からはユーモラスなキャラクターとして求められ、「決めポーズ」を考えてくるようにと“宿題”も出された。

 林原について、京本さんは「『ナルシシスト=かっこいい』というよりも、『ナルシシスト=面白い』という役は、10代の自分だったら、若さ故のプライドでなかなか挑戦しづらかったかもしれません」と本音を明かす。「20代後半の今だからこそ、『自分で笑っていただけるなら』と抵抗なく受け入れられたというか。いろいろなことを経て、とがっていたものがそぎ落とされたからできた役なのかなと思います」

 また、林原を演じる上で「作品の中にこの役がある意図を考えたり、少しでも作品の良いエッセンスになればと、俯瞰(ふかん)的に見ることができた」と京本さん。「未熟ながらも、そういうところに意識を向けられて、とてもやりがいを感じました」と充実感をのぞかせた。

 ◇「バカレア組」話題もバラバラに 苦しかった“個人戦”時代

 役との出会いが芝居への向き合い方を変化させたように、京本さん自身にも大きな影響を与えた数々の出会いがあった。現在、SixTONESのメンバーとして活動する京本さん。歌に定評があり、ミュージカルなど舞台での活躍も目覚ましい。そんな京本さんにとって人生の最初の分岐点となったのが、11歳での故・ジャニー喜多川さんとの出会いだった。

 「まずはやっぱりジャニーさんと出会った瞬間ですね。亡くなった今でも、事務所のいろいろな人から話が出てくるくらい、みんなジャニーさんのことが大好きで、僕もそのうちの一人です。僕は他の人よりもプライベート的な交流は少なかったですが、仕事面でふいに歌を褒めてくれたことがあって。普段から関わりが深いわけではないのに、ちゃんと僕のことも見てくれていたんですよね。ジャニーさんが導いてくれたから、今があると思っています」

 ジャニーズJr.として芸能界の道を歩み始め、幾度となく壁にもぶつかってきた。特にもどかしかったのが、高校生のころだったという。

 「当時はJr.の中でもなかなか新しいグループができない時期で。番組で歌う機会があっても、みんなでまとめて1曲やって終わり。個人戦状態でしたし、これが続いていくのはキツいだろうなと感じていました」

 そんな中、17歳でドラマ「私立バカレア高校」(日本テレビ)に出演。京本さんをはじめ、後にSixTONESのメンバーとなる森本慎太郎さん、松村北斗さん、田中樹さん、ジェシーさん、高地優吾さんが集結。6人は「バカレア組」と称され、人気を呼んだ。

 しかし、グループ結成には至らず、またもやバラバラに。「バカレア組の6人がなんとなく崩れていって、ジェシーと北斗が2人で前に出て行く中、他の4人は宙に浮いた感じになっていて。今考えると僕らの実力不足だったのですが、当時は若かったので『なんで俺らはこんな状態にされてるんだ』と納得いかなかったり」

 ◇進む道が開けた20歳の出会い グループ結成で「動き出した」と実感も

 18歳のタイミングで次の分岐点が訪れた。父・京本政樹さんと初めて共演することになった舞台「滝沢演舞場 2013」だ。その出会いをもたらしたのは、主演を務めていた滝沢秀明さんだった。

 「自分のポジションが不安定になっていた中、滝沢君が親子共演の話を持ちかけてくださって。舞台を通じて父親の偉大さを再確認できましたし、滝沢君や父の背中を間近で見て学んだことで、仕事をしている自覚がより一層強くなりました。お客様がお金を払って見に来てくださっていることも改めて実感しました。学生時代はどうしてもパフォーマンスにムラが出てしまっていたのですが、そういったことも減っていきましたし、“部活感覚”がなくなった瞬間でした」

 そして、2015年に20歳でミュージカル「エリザベート」に出演し、オーストリア皇太子のルドルフ役を演じた。演出を手がけた小池修一郎さんとの出会いで、進む道はさらに大きく変わった。

 「オーディションを受けたとき、僕ではルドルフ役には未熟すぎると反対の声もあったそうです。でも、小池先生だけが周りの意見を遮ってまで『ルドルフはこの子でいく』と言ってくださった。それがなかったら、僕は今ごろミュージカルを知らずにいたと思いますし、当時の年齢で挑戦できていたからこそ、今の年齢で身になっていることがある。ミュージカルとの出会いは、自分の歌唱面においても、グループにも影響をもたらしていると思うので、総じて大きな経験でした」

 同年には、SixTONESが結成され、悲願のグループ活動がスタート。「グループを組めたことが決してゴールではなかったし、Jr.時代はやっぱり常に何か抱えていた。先輩と食事に行っては悩みを打ち明けていましたし、当時Jr.だった親友とはそんな話ばかりしていました」と思い返しながらも、やはり「2015年をきっかけに、動き出した感じがありました」と明かす。こうした一つ一つの出会いがデビューへの突破口になっていったのだろう。

 「きっと、自分が変わらないと何も変わらなかった。でも、変わろうとしていなかったから悶々(もんもん)としていた。僕に変わるきっかけをくださったこと、それを運良くキャッチできたことが、ターニングポイントだったように思います」

 ※高地優吾さんの「高」は「はしごだか」。

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