海に眠るダイヤモンド
最終話前編(9話) あの夜
12月22日(日)放送分
ABEMAオリジナルドラマ「覆面D」が10月15日から配信される。高校教師でありながら、ある思いを抱いて覆面レスラーとしてデビューを果たす主人公・大地大輔役でドラマ初主演を果たすのが、ダンス・ボーカルグループ「GENERATIONS from EXILE TRIBE」の関口メンディーさん。主演としての思いや現場での振る舞い、自身と共通点が多いという役、仕事への向き合い方の変化、今作を通じて伝えたいことを聞いた。
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ドラマは、放送作家の鈴木おさむさんが脚本を手がけたオリジナル作。ヤングケアラーやワーキングプアなど現代社会が抱える問題が原因で居場所をなくした高校生たちが、1人の教師と出会い、彼がプロレスに奮闘する姿を通じて次第に変化していく姿を描く。
オムニバス映画「昨日より赤く明日より青く-CINEMA FIGHTERS project-」の短編「真夜中のひとりたち」で主演経験はあるものの、連続ドラマ初となる関口さんは、「主演で何かやってみたい思いはあり、お話いただいたときはびっくりしたけど素直にうれしかった。満を持しての主演です」と笑顔を浮かべる。
今作の話を最初に聞いたとき、「面白そうだなと思い、ぜひやらせてくださいと即答しました」と明かす。
プロレスが題材と聞いたため、「メンディーでプロレスってコメディーっぽいのかなと思った」と話し、「おさむさんが書いてくださった脚本を見たら、社会派の学園ドラマという感じで、こういう切り口かと思いました。脚本を読んだだけで涙が出たのは初めてぐらい感動しましたし、脚本に出会った段階でたくさんの方々に届けたいと思えて、うれしい限りです」と喜ぶ。
主演を務めるにあたり、「一生懸命お芝居をするだけではなく、やっぱり現場を盛り上げるなど空気感を自分で作らなければと思った」と考え、「コミュニケーションが大事。スタッフさんの名前を覚えることから始めました」という。
当初は「名前を覚えるのは苦手だと勝手に思っていた」そうだが、「話しかけたり会話の中でちゃんと呼んだりすれば、自然と覚えられました。あだ名でもいいのですけど、それはすごく感じました」と振り返る。
積極的なコミュニケーションは、7人組グループ「BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE」の松井利樹さんをはじめ、秋田汐梨さん、紺野彩夏さん、水沢林太郎さんら生徒役のキャスト陣にもおよび、「主演という形で携わらせてもらいましたが、僕自身役者としてのキャリアも少ないし、みんなの力を借りないと作品をいいものにできないと思った」と“座長”としての意図を口にする。
「生徒みんなに話しかけてしゃべるようにしました。最後のプロレスのシーンでも、僕がプロレスをしているのを見て本当に感動してもらうため、きちんと仲を深めておくというのは現場でも意識しました」とも語った。
自身が演じる大輔の第一印象を、「自分そのものかなと思いました」といい、「似ているところが多い。行動の一つ一つが気持ちの方が早い直感型というか。僕も考えるより前にすぐ行動という、結構“当たって砕けろ”なタイプで、その部分は似ている」と分析する。
特に共感したポイントに「僕が体験して思っていることでもあるけど、『やればできる』というところ」を挙げ、「きれいごとのように聞こえるかもしれないけど、僕は何かの才能があったわけでもないし、遅刻をしまくって会社から怒られていた時期もあった(苦笑い)」と苦い経験を明かし、「そんな人でも変わろうと思って本気を出したらちょっとぐらい変わることを伝えたい」と熱い口調で語る。
大学時代には体育教師を目指していたという関口さんは、「ダンスに出会い別の道を歩みましたが、他人ごとではないというか。ダンスに出会っていなかったらこうなっていたかもと想像すると、こんな役には二度と出会えない。パラレルワールドに来たみたいな感じ」と思いをはせる
そして、「こんなに自分と重ねてしまう役にはなかなか出会えない。すごく大切なキャラクターです」と言ってうなずく。
今作ではプロレスラー役も演じているが、関口さんは、「ここだけは貫きたいというポイントとして、吹き替えを使わないことがあった」と切り出し、「吹き替えなら僕がやる必要がないと思ったので、使わずにやることは意識しました。使わずにやり切って、取材で『日本のトム・クルーズを目指しました』と言いたかった」とにっこり。
「今作に携わってくれたり触れてくれたりした人が、もし落ち込んでいれば気持ちを晴らしたいし背中を押したい。そういう意味も込めて、一つの挑戦として吹き替えなしのプロレスシーンに体当たりで挑みました」と真意を明かす。
撮影の3カ月前からプロレス団体「DDTプロレスリング」の指導で基礎からトレーニング。プロレス未経験ながら試合シーンでは、打点の高いドロップキックなども披露しているが、「『おさむさんをギャフンと言わせたい』というので、めちゃくちゃ練習しました」と打ち明ける。
「おさむさんから『こんなプロレスをしてほしい』『こんなドロップキックをしてほしい』として、(新日本プロレスの)オカダ・カズチカさんの映像が参考に送られてきたのですが、めちゃめちゃカッコよくて。ドロップキックも高いしきれいで日和りそうになったけど、おさむさんが僕に求めているもの、その想像を超えてほしい思いを感じました」とも告白。
数多くの試合シーンに挑んでいるが、「主演だから皆さんがおだててくれるので気持ち良くなっちゃう(笑い)。最後の試合のシーンでは練習の成果というか集大成、覆面D史上で一番良いドロップキックを決めたと思っています」と自信をのぞかせた。
グループとしても個人としても活躍している関口さんだが、キャリアを重ねてきたことで向き合い方などに変化はあったのだろうか。
「昔は期待に応えよう応えようとしすぎて作業的になってしまい、自分が全然楽しめない時期があった。応えようとしてやったけど相手が求めていない場合もあって」と苦笑いを浮かべつつ、「ある時からまず自分が楽しもうというスタンスに変えました。楽しんでいる人を見たら楽しいと感じるし、そういうところに人が集まると思い、『その空間で自分が一番楽しむ』と決めてからはだいぶ楽になりました」と語る。
その結果、「楽しんでやっているときの方が感じ取れるものの量が多く、自分の成長にもつながることに気づきました」という関口さんは、「楽しんでいる僕や挑戦することを楽しんでいる僕を見て、『自分も何かやってみよう』と思ってくれる人を増やすことが、今の僕がやりたいこと。あまり職業や肩書にとらわれていなくて、そういう人が増えるのであれば多分何でもやります」と力を込めた。(取材・文・撮影:遠藤政樹)