名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
京都アニメーションが手がけるアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の劇場版「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が、日本テレビの映画枠「金曜ロードショー」で11月25日午後9時から放送される。2020年9月に公開され、興行収入が約21億3000万円を記録するなどヒットした作品で、テレビで放送されるのは初めて。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、キャラクターの心情を丁寧に描き、美しい映像が“神作画”と絶賛されてきた。同作を手掛ける京都アニメーションの石立太一監督に神作画の裏側を聞いた。
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「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、「第5回京都アニメーション大賞」の大賞を受賞した暁佳奈さん作、高瀬亜貴子さんイラストのライトノベルが原作。かつて軍人として戦ったヴァイオレット・エヴァーガーデンが、依頼者の思いをくみ取って言葉にする自動手記人形となり、さまざまな依頼者のさまざまな感情に触れ、人の心を理解していく……というストーリー。テレビアニメが2018年1~4月に放送された。
金曜ロードショーでは、昨年10月にテレビシリーズを再構成した「特別編集版」、同11月に2019年9月公開の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-」を放送。金曜ロードショーで、深夜アニメとして他局で放送された作品が放送されるのは極めて異例で、大きな反響を呼んだ。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、感情を持つことができなかったヴァイオレットの心の成長を丁寧に描いている。京都アニメーションによる美しい映像も話題になり、“大人が本気で泣けるアニメ”などと話題になってきた。この“丁寧”というのが大きな魅力になっている。キャラクターの繊細な心の動きが緻密に表現され、映像に引き込まれる。丁寧だからこそ“本気で泣ける”のだろう。劇場版も徹底的に丁寧に作られている。説明しすぎているわけではないが、キャラクターの心情が伝わり、心に染みる。テレビシリーズを見たことがない人でも楽しめるはずだ。
「初見の人でも楽しんでいただけるように意識していました。実は、最初は初見の人に向けて説明するシークエンスを入れていて、もっとくどかったんです。ただ、一本の映画として見せるにあたって、説明しすぎていたり、押しつけがましかったりするのは……?という意見もあり、その折衷案を探りました。説明をなくして、とがりすぎてしまっては、見ていただけないですし、作ったスタッフの労力が報われません。そこは監督としてすごく考えました」
キャラクターの表情だけでなく、風景、音などでも心情を丁寧に表現しており、画(え)の力の強さを感じる。スタッフの奮励努力によって神作画を実現した。
「アニメーションとしては地味だとは思います。ちょっとした動きにこだわり、丁寧に丁寧に描いていくので、ダイナミックに画(え)を動かす作品と比較すると地味に見えるかもしれません。細かい作業をひたすらコツコツやっています。京都アニメーションは、感情表現をどこまで掘り下げるか?ということを追求してきたところもあり、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は作画、背景、仕上げ、撮影……とさまざまセクションが近年やってきたことを全部詰め込んだところもあります。背景も描写が緻密すぎてリテークしたところもありました。画としては写実的ですごくいいんですけど、情報量が多く、解像度が高すぎて、キャラクターなどとのバランスが悪くなってしまうんです」
京都アニメーションは「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」以外の作品でも美しい映像表現が話題になってきた。“お家芸”になっている感情表現の集大成なのかもしれない。石立監督は「オーソドックスな演出なんです。ただ、それを徹底してやっています」とも話す。
「奇をてらうことをとにかくやめようとしました。ストレートすぎるかもしれないけど、ストレートに表現することから逃げずに、どれだけ追求できるかを頑張ろうとしました。派手な絵を作れば、分かりやすい。全く見たことがない作品ではなく、王道なんです。ただ、それをどこまで高めることができるのか?を考えていました。主人公のヴァイオレットも実直なキャラクターですし、その実直さを表現するために、表現、ストーリーも実直にしました。タイトルが『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ですからね。彼女の物語なので、奇をてらわないようにしようと、実直に作ろうとしました。実直すぎて、本当にこれでいいのかな?と不安もあったのですが」
奇をてらう、派手な映像の方が分かりやすい。王道を徹底するのは難しいことかもしれない。石立監督はそれでもブレずに王道を突き詰めた。
「企画が走り始めた頃、(シリーズ構成の)吉田玲子さんに『フックがない』と言われたことがありました。アニメとして面白くするために、いろいろ提案をいただき、ヴァイオレットは口数が少ないキャラクターなので、彼女を代弁するキャラクターがいた方がいいというお話もあったんです。弟子のような、少し年下の女性キャラクターを作って、代弁したり、ナレーションを担当したりする進行役を作った方がいいかもしれない……という提案もあったのですが、それではヴァイオレットがしゃべらなくてもよくなる。実直に!と企画を押し通したところもありました。今までは実直じゃなかったのか?と思われるかもしれないですからね(笑い)。この企画を実現できたことに感謝しています」
吉田玲子さんは「けいおん!」「ガールズ&パンツァー」「映画 聲の形」などでも知られる人気脚本家。劇場版でも吉田さんに助けられたことも多かったという。
「どこに着地させるか?という構成がはっきりしていて、筋も通ってて、その作品のカタルシスをきっちり作っていただける方です。言うは易(やす)しなのですが、なかなかできることではないんです。安心感がありますし、本当に“人間”を描ける方だと思っております。テレビシリーズで完結していて、劇場版を作るのは難しいとも思っていました。続編のお話をいただき、ヴァイオレットが生きたその先、未来を描いていいのであれば、作る意味があるかもしれない。ヴァイオレットが残したものを受け取る人々を描き、手紙を介して彼女の人生を描ききることができるかもしれない……というところから始まりました。それを具現化してくれたのは吉田さんです。吉田さんのおかげで何とかまとまりました。“吉田力”がすごいんです」
昨年、金曜ロードショーで「特別編集版」「外伝」が放送されると、SNSで感動の声があふれるなど大きな反響を呼んだ。反響を受けて、劇場版が放送されることになった。
「僕自身、子供の頃から金曜ロードショーでいろいろな映画を見てきました。京都アニメーションが制作した作品が放送されるのはすごいことですし、頑張っていたら、こういうこともあるんだな……と感涙です。本当にありがたいです。今回、放送される劇場版は、僕がラフ編集して、皆様の力で形にしました。公開してから2年たったからできたところもあって、1年前、それ以前だったら無理だったかもしれません。初めて見る方でも楽しめるようになっているはずなので、ぜひよろしくお願いいたします。さかのぼってテレビシリーズも見ていただけるとうれしいです」
ぜひ、京都アニメーションだから実現した神作画を見てほしい。
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