ダンダダン
第12話「呪いの家へレッツゴー」
12月19日(木)放送分
岩本ナオさんの人気マンガが原作の劇場版アニメ「金の国 水の国」が1月27日に公開される。同作は「サマーウォーズ」などのマッドハウスが制作し、同スタジオの次世代エースとも言われる渡邉こと乃さんが監督を務める。同作の公開を記念し、渡邉監督、「サマーウォーズ」などの細田守監督と共に作品を世に送り出してきたスタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサー、「ソードアート・オンライン」などの伊藤智彦監督というマッドハウス出身者のスペシャル鼎談(ていだん)が実現。今のマッドハウスが作る「金の国 水の国」の魅力を語った。
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渡邉監督は、原作の大ファンであるといい、原作が持つ美しさをアニメで表現するべく、街に群衆があふれるシーンや、木々が生い茂る森にチョウが舞うシーンなど、通常はCGで描くことが多いシーンも手描きにこだわったという。背景は、原作の水彩画のような風合いにこだわり、ポスターカラーを重ね塗りする緻密な手描きにより制作。1枚につき2~3日かかる背景を約70枚完成させた。一枚一枚のじゅうたん、食器棚の食器なども手描きというから驚きだ。伊藤監督は「背景にタイルが描かれているなど、細かい描き方をしているカットが多い。これを(スタッフに)やってくださいと言うのは胆力がいるなと思いました。こんなところまで気を使って描いている、と。それは映画館で見る喜びに一つになる」と話すと、渡邉監督は「壁のタイルをやりたいと。作風的にどうしても生の質感が必要だった」とこだわりを語った。
同作は、敵対する二つの国で、金の国の姫・サーラと水の国の青年・ナランバヤルが偶然出会い、国の未来のために夫婦役を演じているうちに恋に落ちる……というストーリー。作品に込められたテーマについて、齋藤プロデューサーは「映画は現代を描くもの。今は、戦争に限らず、先が見えにくい世の中になっている。これまでの価値観が音を立てて崩れて、お先が真っ暗だということを子供たちはビビッドに感じている。そんな時、映画を通して彼らに何を伝えるべきなのか」と語り、「この作品を見て、サーラが公の自分を超えて、私(し)の自分としてバイタリティーを持って二つの国の戦争をどう変えていくか、人と人の関係性をどう接続していくか。一人の女の子が決めたことが、世界を変えるダイナミックさこそが、映画館で感じる最大のテーマのような気がします」とコメント。
伊藤監督は「相互理解の話なのかなと。会話が重要。自分もちゃんとやろうと思いました。現実問題とリンクさせすぎるのはよくないが、国同士が仲良くなくても、人同士は仲が良かったりする。生の感覚を大事にしなければいけない」と感じたといい、渡邉監督は「サーラは自分の平穏な日々を守るために頑張る。平凡なことを大事にすることで、変わることがあるんじゃないかと思いました」と説明した。
「金の国 水の国」は、マッドハウスの次世代を担う渡邉監督が手がけ、マッドハウスの黎明(れいめい)期を支えた川尻善昭監督、「カードキャプターさくら」「ちはやふる」などの浅香守生監督といったレジェンドも参加している。「金の国 水の国」を通じて、齋藤プロデューサー、伊藤監督は“今のマッドハウス”に何を感じたのだろうか。
齋藤プロデューサーは「スタジオというのは、ブランドや箱であって、作っているのは監督だと思うんです。僕は、監督が中心となって、監督主義、作品主義で映画を作るべきと思っています。(マッドハウスの作品に)変化があるとしたら、それは渡邉こと乃監督の変化だと思います。多彩な人たちが多く参加している中で、渡邉こと乃監督の色、トーンがちゃんとついているなと思えた。自分の色で作品を支配できたというか。それは素晴らしいなと思いました」と語った。
伊藤監督は「僕が見ていたマッドハウスの作品は、ちょっとドロドロした感じがあったのですが、『カードキャプターさくら』以降というか、明確には『ちはやふる』以降、変わってきている。僕は、浅香さんの最近の“色”がマッドハウスの色を決めていると思っているんです。最近のマッドハウスは、その直系のルーツに乗っかっていると見ています。僕はドロップアウトした人間なので(笑い)、ちょっとうらやましいんです。太い幹に乗っかって、木が高く伸びたなという印象を持っていて、そこから枝が伸びていった時に自分の色というものが発生してくるので、どこまで枝を伸ばせるか?という」とコメント。
2人の話を聞き渡邉監督は、自身の出産、コロナ禍の影響もあり、「大監督に手伝ってもらうことになった」といい、「手伝ってもらいつつ、自分のやりたいことも伝え、うまく甘えさせてもらったというか。自分の色が出ているとしたら、うまいこと大御所たちに甘えられたのが、映像としてうまく出たのかなと思います」と話した。
鼎談では、「長編アニメーションを映画として届ける上で一番大切なことは?」というテーマについても語られた。伊藤監督は「もちろん語るべきテーマもありますが、監督のエゴというか、『これをやらねばならない』『これを今やりたい』という個人的な事情が重要なのではないかと思っています」と語った。「たとえ原作があったとしても、監督に原作を引き寄せる何かがあるんじゃないかと思っているんです。原作はあるが、『映画は僕のもの』と言える度胸、保証が、特に長編の場合は必要になってくる。それをちゃんと言えるように作ることが重要なんじゃないかと思います。例えば、原作では一コマしかないところをどれぐらいの尺で見せるかは、監督のエゴというか、監督の気概でもある」という。
渡邉監督も「たしかに、自分のエゴが作品に反映されていると思う。今回は、作画に負担をかけるエゴを大量に出してしまいましたが、やったかいはあったなと。監督の色が長編たらしめるというのは、うなずけるところがあるなと思いました」と伊藤監督に共感した。
齋藤プロデューサーは「細田さんともよく話すのですが、アニメーションは子供が見ることが前提の表現だと。子供、若者の未来を肯定するような作品を作るべきなんじゃないか。価値観が変わり、先が見えにくい世の中で、アニメーションを通して若い人たちの背中を押せるような、バイタリティーを肯定できるような作品を作るべき」と作品作りのこだわりを話し、「『金の国 水の国』でも、いろいろなキャラクターが登場し、一つのものに向かっていく。そのバイタリティー、行動は必ず未来を変えていく力になる。それを象徴するのが作品のラストカット。ぜひ映画館で見ていただきたいです」と語った。
「金の国 水の国」は、ガイドブック「このマンガがすごい!2017」(宝島社)のオンナ編で1位に選ばれた岩本さんのファンタジーマンガ。2014年に「月刊flowers」(小学館)に読み切りが掲載され、2016年にコミックスが発売された。アニメは、「BTOOOM!」などの渡邉さんが監督を務め、「プリティーリズム・レインボーライブ」「HUGっと!プリキュア」などの坪田文さんが脚本を担当する。俳優の浜辺美波さんがサーラ、賀来賢人さんがナランバヤルの声優を務める。
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