モンスター
#4 空気の行方
11月4日(月)放送分
女優の吉谷彩子さんと石井杏奈さんがダブル主演を務めるオリジナルドラマ「悪魔はそこに居る」が、動画配信サービス「Paravi」で2月9日から配信される。九条美園役を演じる石井さんに、作品の見どころや、本作のテーマでもあるコンプレックスについて聞いた。
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原作は、小説投稿サイト「エブリスタ」で人気を博し、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」でコミカライズもされた、清水セイカさん原作、でじおとでじこレッドさん作画の同名マンガ。アルバイトをしながらフリーライターを目指す今西詩(吉谷さん)と、誰からも愛される甘え上手な九条美園(石井さん)という、一つ屋根の下に暮らすいとこの女性2人の愛憎劇が描かれる。
本作の出演を聞いた際、石井さんは、「美園という役や物語の企画を読み、すぐに面白そう」と感じ、「自分が今までやってこなかった役でもあるし、復讐(ふくしゅう)劇ということで奥が深い」と理由を説明する。
「復讐は一見、憎しみのぶつけ合いみたいなイメージがありますが、その裏には悲しみや優しさ、うれしさ、喜びも絶対にあるはずです。『(自分なら)どうやって演じられるかな』とか『(演じたら)どういう感情が出てくるかな』というのは楽しみでした」
石井さんが演じる美園は、詩といとこ同士で、都内のマンションで同居する親友のような関係。誰からも愛される甘え上手だが、実は“裏の顔”を持っているという役どころ。
美園役は「似ていて楽な部分はひとつもなかった」という石井さんだが、「全然似ていないからこそ答えがなくて作りやすかったというのはあります」と話し、「架空の人を演じるのだから自分の正解が正解なのだろうと少し自信がありましたし、監督とも話し合って決めましたが、自分が持っていった美園でほとんど演じることができた」と手応えを口にする。
そんな美園とは「友達になりたい」といい、「共感できなかったからこそ、どうしてそういうことをするのか聞きたい。それで一緒に解決できる方法があるなら知りたいし、逆に優しい部分を見たい。好きなところを増やしたいから友達になりたい」と理由を語る。
自身の役作りのスタンスを、「最初に(台本などを)読んで感じたことを、例えば『美園は私が思うにこういう役』とメモします」と前置きし、「まるまる別の人になるのは不可能だと思っています。自分が経験したこと、本を読んだり映画を見たりして疑似体験したことなど、自分が持つ引き出しからイメージに近い役を見つけ、自分の思いを乗せ派生させて役を作るのが一番うそのない役作りだと思っています」と説明する。
自信を持って演じた美園は、「共感できないとやっていてつらい」部分もあったが、「詩への愛があることに気付き、10ある感情の2だけでも共感し、そこから派生させて芝居できたらと考えました。最初は自分でもだましだましでしたが、最後の方はきついせりふも根底に愛があると思い演じていました」と役作りの舞台裏を語る。
普段とは異なる言葉遣いやせりふ量の多さに戸惑うも、「楽しかったです。せりふ覚えが得意な方だということが今回わかりました(笑い)」と話す。
「せりふ量が多いので前もってやってはいましたが、せりふを覚えていないからNGを出すことはなくて。自信にもなりましたし、このぐらいのキャパシティーは自分にあることを見つけられたので良かったです」
今後もせりふ量が多い役はいつでも大丈夫かと水を向けると「とは胸を張っては言えないですけど、“準備運動”はしてあります(笑い)」と応じた。
今年25歳を迎える石井さんに、20代後半に向けての目標や20代のうちにやっておきたいことを質問すると、「20代はまだ子供というか、大人にはなりきれていないと思うので、そのうちに金髪にしたい。高校デビューみたいな感じですけど(笑い)。ずっと黒髪だったので、一回ガラッとイメチェンしたいですね」と意外な答えが返ってきた。
希望の髪色について、「金かシルバーっぽい感じにして、その後赤色を入れるなどちょっと遊んでから黒に戻す」とプランを説明し、「『若いうちしかできない(からやったほうがいい)』とよく聞くので、一回はっちゃけて自分に似合わなくてもいいからやりたい」と意欲を見せる。
仕事面に関して聞くと、「2年前までE-girlsとして踊っていたとき、心拍トレーニングを5~6年ぐらいずっとやっていた。多分それは蓄積されて残っていると思うので、アクションや昨年もミュージカルで踊りましたが、体力が必要な仕事は今のうちにやっておきたい。(30歳に向けて)備えたいと思います」と語った。
2012年の女優デビューから約10年。「完全に成長しきったわけではありませんが、当時と比較したら成長していたいと思いますし、前を見て進んでいます」と振り返る。
「芝居に関して“自我”のようなものは芽生えていると思います。自信も含めてプライドが少し芽生えてきましたし、自分だからこれができると(良い意味で)思いを込めるようにもなりました」
さらに役者業を続けてきたことで、「美園のような子でも愛はありますし、どんな役でもその人はなぜそうなったかというバックボーンがあって……というのを自分で作ると愛情が湧く。その人を肯定できるようになるので、必要以上に人を嫌うことがなくなりました。良い職業病ですね」とほほ笑む。
そんな「大人になったのかも」と照れ笑いする石井さんに、本作のテーマの一つでもあるコンプレックスについて聞くと、「いっぱいあります。自分の声が大嫌いで、表情も含めて声も容姿とかも、誰かと比べるのもナンセンスですけど、そういうふうに思っていた」と明かす。
しかし「さまざまな人と出会うことでそれぞれの人生の良いことを聞き、自分に反映させていたら、ちょっとずつ視野が広がった。それで、いつの日からか受け入れられるようになり、そこに自分の評価を求めなくなった」と考え方が変化したという。
「声が変だからお芝居が変ということはないはずで、自分の好きな芝居ができるよう、自分に素直に生きようと思った。声が嫌いなら自分の声を好きになればいいし、そのためにどうやったら聞きやすいかなども研究しました。今は、自信と慣れと勉強をやってみた結果、好きになれました」
今作の見どころを、「私自身、自分と向き合うきっかけになれた作品。自分はどこに憎しみの矢印が向いているか、どこに愛を持っているかを探すきっかけにもなったので、皆さんそれぞれの心の中に思いやりや優しさをどこに向けたいか、感情の矢印を探すきっかけになれば」とアピール。
自身が演じる美園役については、「みんなに美園を好きになってほしい。嫉妬心や妬みそねみは多くの人が持っていると思う。美園はちょっと行き過ぎた表現がダメなのですが、誰かが抱きしめてあげたら治るかもしれないし、誰かが共感してくれたら、一緒に歩もうと言えば一緒に歩んでくれるかもしれない。そういう小さな希望を美園に乗せたので受け取っていただければ」とメッセージを送った。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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