つばきファクトリー浅倉樹々:卒業前の率直な思い 葛藤乗り越え「アイドルが大好き!」と言える自分に

「つばきファクトリー」の浅倉樹々さん
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「つばきファクトリー」の浅倉樹々さん

 ハロー!プロジェクト(ハロプロ)所属のアイドルグループ「つばきファクトリー」の結成時からのオリジナルメンバーである浅倉樹々さんが、4月2日に開催されるコンサート「Hello! Project ひなフェス 2023 つばきファクトリープレミアム ~浅倉樹々卒業スペシャル~」をもってグループ及びハロー!プロジェクトを卒業する。ハロプロの育成機関であるハロプロ研修生時代を含めると約9年半の間、アイドルとして活動してきた浅倉さん。理想のパフォーマンスができず思い悩み、自分を好きになれなかった時期もあったが、今は「アイドルが大好き」と胸を張って言える自分になれたという。今の率直な思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇「間違いじゃない」と思えるアイドル人生

 浅倉さんは、2000年9月3日生まれ、千葉県出身の22歳。アイドルを目指したきっかけは、小学1年生の時に見たテレビアニメ「しゅごキャラ!」で主題歌を担当していたハロプロのアイドルグループ「Buono!」だった。Buono!の歌を聴き、「アイドルになりたい!」と思った浅倉さんは、2013、14年に「モーニング娘。」のオーディションを受け、いずれも落選するも、2014年にハロプロ研修生に加入。2015年につばきファクトリーのオリジナルメンバーとしてデビューした。中心メンバーの一人としてグループを支え続けた浅倉さんは、2022年9月に卒業を発表。卒業後は、ソロ活動を続けながら、動物専門学校に進学する。

 今年2月、浅倉さんにとって、つばきファクトリーとして“ラストシングル”となるトリプルA面シングル「間違いじゃない 泣いたりしない/スキップ・スキップ・スキップ/君と僕の絆 feat.KIKI」が発売された。3曲ともに思い入れが深いシングルになった。「間違いじゃない 泣いたりしない」は、失恋した女性が次のステップへ進む姿を歌った楽曲だが、浅倉さんは卒業を控えた自分の気持ちともリンクする部分があったという。

 「私も卒業後、次の道へ進んでいく、未来に進んでいくというところですごくリンクして。恋愛だけじゃない、今までのつばきファクトリーとしての活動と置き換えてレコーディングに挑みました」

 同楽曲の「ピンクリップより ワインレッドルージュで 純情からGraduate」という歌詞からは、グループ加入当初のことも思い返した。

 「昔はやっぱりメークについてもまだ分からなかったし、ちょっと濃い色のリップをつけたくても、『もっとおしとやかに見えるように』と禁止されていた時期もあったし(笑い)。そんな中でも、リーダーとかサブリーダーの子は、早い時期にワインレッドルージュをつけていて、憧れていたんです。だから、少女から大人に変わる瞬間をこの歌詞で表現されているところが、改めて『おぉ、染みる!』と思って。私もこんな経験あったなと思って。好きな歌詞ですね」

 浅倉さんは「少しずつ綺麗になって あんな嫌いだった 自分も好きになれたの」という歌詞も好きだと語る。

 「この楽曲の中の女性は、経験を増して、知らなかった自分のことも知っていって、どんどん認められるようになったのかなって。私も経験上そうなので、すごく心に染みます。この楽曲では『新しいストーリー 歩む 次のステージof love』の部分を歌割りでいただいているんですけど、今までのことも抱えて、その先を歩いていくという思いを込めて、大事に歌いたい歌詞だなと思っています」

 サビの「間違いじゃない」という力強い歌詞も、浅倉さん自身がこれまで活動してきたことが「間違いじゃないんだよ」と言われた気がしたという。

 「私は、腰のヘルニアで活動を2回お休みしたことがあるんです。その時は完治したとしても、つばきファクトリーに戻れるのかが分からなくて。『戻ったとしても、また迷惑をかけちゃうんじゃないか』『居場所があるのか』と、すごく不安になることも多かったんですけど、メンバーみんなが待っていてくれたのが分かったし、休んでいる間もファンの皆さんがブログのコメントで『いつでも待っているよ』『時間かかってもいいから応援してるよ』と言ってくださったおかげで、『私がいるべき場所はここだ』と再確認できました。あの時、諦めずに治療に向けたリハビリとか、気持ちの面もそうなんですけど、めげずにやってよかったなって、『間違ってなかったな』って思いました」

 シングル収録曲の「スキップ・スキップ・スキップ」は、これまでもつばきファクトリーの楽曲を多く手掛けてきた児玉雨子さんが作詞、インディーズ曲「青春まんまんなか!」を手掛けたKOUGAさんが作曲を担当した。

 「本当に可愛らしい雨子さんの歌詞と、華やかなKOUGAさんのサウンドが相まって、可愛いけどロックというギャップがあるんです。つばきファクトリーのいろいろな面をお見せできる1曲になっていて、私も歌えることがうれしくて。楽しく歌っています」

 そしてシングルの3曲目が浅倉さん自身にフィーチャーした楽曲「君と僕の絆 feat. KIKI」。2022年8月に山梨・河口湖ステラシアターで開催されたつばきファクトリー初の野外ワンマンライブで披露された楽曲で、初期からつばきファクトリーの楽曲を多く手掛けてきた中島卓偉さんが作詞、作曲した。浅倉さんのパートは新たにレコーディングし、シングルに収録された。

 「卓偉さんが『夕焼けと共に歌ったら絶対映(ば)える、エモい要素入れた曲を作ったよ』と。今回卒業するにあたって、私に向けてもそうですし、私から皆さんに向けてのメッセージになる楽曲なんじゃないかなと思っていて。『ひとりじゃない』という歌詞があるのですが、すごく背中が押されるというか。ずっといた場所から卒業することはすごくドキドキするし、心細くなる部分もあるんですけど、この楽曲のように今まで一緒にやってきた思い出とか、感じてきた感覚は絶対消えないし、自信を持って歩んでいけたらいいなって思います」

 ◇「これで人生終わりでもいいのにな」と思ったデビュー当時

 浅倉さんが卒業を決断したのは、昨年の6月頃だったという。ただ、つばきファクトリーとして活動を始めた頃から「次の道」を意識していたとも語る。

 「というのも、デビュー当時から、マネジャーさんやスタッフさんに『ハロプロは一つの通過点』『次にやりたいことを見つけるための、一つ手前の場所』ということをずっと言われてきたんです。私としては、大好きなハロプロに加入して活動することが一つの目標であって、デビューしたことでそれが達成できたという喜びのほうが強かったので、『これで人生終わりでもいいのにな』と思っていたんです。でも、スタッフさんたちにそう言われて『このまま一生ここにいることはできないんだな』と思ってからは、『自分は将来何をやりたいんだろう』『何が好きなんだろう』と、活動しながら常に見つけていく旅が始まったというか」

 そんな中で浅倉さんが見つけたのが、動物に携わるという道だった。

 「元々犬が大好きで、犬も飼っていて。去年、最初に飼い始めた子が亡くなりまして、それをきっかけに『もっと犬のことに詳しくなりたい』とか、私と同じように犬を飼われてる方のサポート、力になれるようなことをしたいなと考えて、動物の専門学校に通うことを決意しました」

 ◇理想とのギャップに苦しんだことも 自分を変えてくれた言葉

 浅倉さんは、つばきファクトリーの活動を振り返り、「自分を好きになれない時期もあった」という。

 「昔の私はすごく完璧主義者というか。一度『これをやる』と決めたら絶対にやり遂げるまで諦めないとか、グループの中でも『絶対一番になりたい』とか、メラメラ燃えているところがあったので、理想の自分がすごく高かったんです。ライブの時ももちろん楽しいんですけど、楽しいよりも『なんでこうできないんだろう』『もっとこうしたいのに全然努力が足りない』と反省することが多すぎて。そういう期間が本当に長くて、周りのみんなが『楽しい』と言っているのに、『私は今、全然楽しくないな』と思って、周りと同じ気持ちになれない自分がすごく悔しくて、つらいなと思う時が正直ありました。とくに悩んでいたのは、2020年の冬のコンサートの時で、『全然うまくできない』『苦しいな』と思いながらステージに立つこともありました。それを出さないように頑張ってはいたんですけど」

 思い描く理想の自分と今の自分のギャップ。「早く好きな自分になってパフォーマンスしたい」とレッスンを重ねるも、気持ちばかりが焦る。浅倉さんは当時のことを「自分の中の理想が大きすぎたんですよね。それに気付いていなくて、ただもがいていた」と振り返る。そんな葛藤から抜け出すきっかけが、マネジャーの言葉だったという。

 「『樹々ちゃんはもっと自分のことを褒めてあげないと、自分がかわいそうだよ』と言われたことがあって『たしかに』と。常に『これをやらなきゃ』とか、『できてない、できてない』と思いすぎていたんですよね。それじゃ自分がかわいそうだと思えた時に『失敗してもいいから、ちょっとずつでいいから、できるようになっていけばいいんじゃないか』という考え方に変わったんです。それから肩の荷が下りたというか、徐々に今の自分を好きになれるようになっていきました」

 卒業発表をしてから変わることができた部分もあったという。

 「自分で、勝手になんですけど、責任を負ってしまうことが多くて。『グループをよく見せたい』とか『自分を良く見せたい』とか、それにこだわりすぎちゃっていたんです。でも、本当に大事なことって、それだけじゃないんだなって。卒業発表して、より周りを見られるようになって改めて感じることができました。本当に一つ一つの経験が自分を作り上げてくれる大事なヒントになっているんだなって思います。なんとか変われてよかったです」

 卒業を控えた今、浅倉さんが思うつばきファクトリーの魅力とは?

 「つばきファクトリーは、結成の時から『せいそでおしとやか』というイメージがあって、今それができるのはハロプロにはつばきファクトリーしかいないんじゃないかなって思います。そのベースは大切にしつつ、やっぱりいろいろな色に染まっていけるようなグループにもなってほしいです。つばきファクトリーのいろいろな魅力をたくさんの人に知ってほしいです」

 最後に、「自分にとってアイドルとは?」と聞くと、浅倉さんは「好きだなって思います」と笑顔で答えてくれた。

 「アイドルをしている自分が好きなのか、アイドルが好きなのかは分からないんですけど、この活動が自分に合っていたんだなとすごく感じます。占いに行くと、『アイドルが天職です』と言われるんです(笑い)。ここまで続けられたのも、アイドルをやっている自分が好きだからなんだろうなと思って。いろいろな悩みや課題があったのも、自分にとってアイドルがそれだけ一生懸命になれることだったんだなって思うので、やっぱりアイドルが大好きだなと思います」

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