名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
マンガ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の原作、特撮ドラマ「仮面ライダーW」の脚本など数々のマンガ、特撮、アニメなどを手掛けてきた三条陸さんの仕事をまとめた書籍「三条陸 HERO WORKS」(集英社)が発売された。三条さんの仕事は、マンガ原作者、特撮ドラマやアニメの脚本家、ゲームのシナリオ……ととにかく幅広い。約40年にわたってエンタメ業界の第一線を走り続けている“唯一無二の存在”だ。これまでの仕事を網羅した同書を読むと、三条さんが“唯一無二の存在”であることを改めて思い知らされる。数々の名作を生みだしてきた三条さんはどのように作品に向き合ってきたのか? 転機はあったのだろうか? 三条さんにインタビューすると、自身のキャリアを「変な歩みなんですよ……」と語りだした。
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三条さんは1964年生まれ。「ダイの大冒険」「仮面ライダーW」以外にも「冒険王ビィト」「風都探偵」「ゲゲゲの鬼太郎(第5期)」「デジモンクロスウォーズ」「獣電戦隊キョウリュウジャー」「仮面ライダードライブ」……と数多くの作品を手掛けており、「三条陸は何人いるんだ?」と思ってしまうほどだ。ライターとしてキャリアをスタートし、特撮、ホビー、アニメの雑誌、ムック、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で活動していた。ライター経験が、原作、シナリオ、脚本などに生きたところもあったという。
「ライターの場合、作品の内容、魅力を研究し、その魅力を前面に押し出して書きます。原作や脚本も同じ感覚です。例えば『仮面ライター』だったら、その魅力を研究する。こういう打ち出し方をしたら、分かりやすくなるのでは?と考えます。記事にする時と着眼点が同じなんです。作り手は熱が入りすぎることもありますが、最初に分析する癖はライターをやっていたからです。それが特徴の一つになっているのかもしれません」
「ダイの大冒険」だったら「ドラゴンクエスト」、「仮面ライダー」シリーズだったら変身ベルトなどの玩具といったようにメディアミックス作品、子供向け番組には、入れ込まないとおけない要素が必ずある。
「俯瞰(ふかん)して見た時、商品の宣伝として見えてしまうと、逆に宣伝としての効果がなくなります。作品の中にどう溶け込めるのか? 自然に見えるのか?を考えます。見せすぎない方が格好いいこともあります。ライターをやってきたから、その辺りが分かるところがあるのかもしれません」
特撮ドラマや少年マンガのメインターゲットはもちろん子供だ。三条さんの作品は、子供だけでなく大人も楽しめる。大人になって見返すと、発見もある。
「子供が楽しめるものは大体、大人も楽しめる。大人だけ楽しめて、子供は楽しめない作品もあって、逆はあまりない。子供が楽しめるシンプルでカタルシスが分かりやすいものだったら、大人も楽しめるはず。両方を取りたいなら子供のことをおろそかにしてはいけないです」
“子供だまし”ではない作品ばかりではあるが、三条さんは「子供がだませるんだったら、それは最高ですよ」とも語る。
「子供をだまそうと思っても、なかなかだませません。子供はシビアです。特撮ファン、アニメファンはすごく評価するけど、子供にはそこまで……という作品も多々あって、映像を見てみると、すごくよくできているんですよね。ただ、大人は、頑張って作った映像を見ると、それだけで頑張っているな!と気持ちが緩むんですよ。子供は、自分が面白いと思わなかったら絶対認めない。厳しいから、だませない。子供はどう感じるのか?にチューニングを合わせていくと、広い世代に合わせた作品になっていきます。子供に向けて魅力、本質を考えています」
メデイアミックスならではの醍醐味(だいごみ)もある。
「別々のメディアのパーツが無理やり入っているのではなく、うまくハマって、作品の中で融合した時に醍醐味を感じます。僕の世代は幼稚園の時に『ウルトラマン』を見て、小学生の頃に『仮面ライダー』が始まって、『マジンガーZ』があって……とそれまでのヒーローに比べて関連商品がいろいろあったんです。メデイアミックスをずっと体験してきたし、それが当たり前だった。キレイにハマっていることがベストだと分かっているので、自分もそういう風にしたい。子供の頃の影響が大きいですね」
三条さんはマンガ、アニメ、映画、ゲーム……とさまざまなジャンルを手掛けてきた。しかもヒットを連発している。そんなクリエーターはめったにいないし、まさに唯一無二の存在だ。仕事の幅が広がる転機はあったのだろうか?
「どんなジャンルでも一回やってみよう!となるんです。いろいろなことがローテーションでぐるぐる回っている感じで、ここまできたんですけど、基本的に今やっているジャンルは学生時代にほとんどかじっていたんです。漫研でマンガを描いていたし、特撮の同人誌を作っていたし、ライターもやっていた。ライターの仕事をしていたら『ジャンプ』でライターをすることになって、マンガ原作者になりました。『ダイ』の連載が終わったら、ゲームもやったし、『冒険王ビィト』の連載が始まって、休載になった時には、テレビアニメ『ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU』の話をいただきました。そこから『ゲゲゲの鬼太郎』などのアニメをやって、『仮面ライダーW』の話があってからは実写を何年か続けてやる。『ビィト』が復活したらマンガに戻って、今はマンガが中心になっています。それぞれに転機はあるんですけど、ローテーションでぐるぐるまた巡ってくる感じなんです」
次々と仕事が舞い込んでくることについて、三条さんは「結局は人とのつながりなんです」と語る。
「『ガイキング』は、森下さん(東映アニメーションの森下孝三さん)から話をいただいたのですが、森下さんは『聖闘士星矢』をやられていて、僕は『星矢』のムックを作ったことがあった。森下さんは『ダイ』の最初の劇場版も手掛けていますし、ご縁があったんです。結局、人とつながって、仕事の話をいただくことが多いんです。いろいろなことに首をつっこんで、会っている人が多いほど、チャンスがあるかもしれない。最初から名声がある人なんていないですし、頑張ってくれる人だと思われることが大切。頑張れば、次があるかもしれませんし」
もちろん実力がなければいけないし、努力も必要だ。うまくいかないことだってある。「三条陸 HERO WORKS」では、うまくいかなかったことを含めて三条さんの歩みがつづられている。
「うまくいかなかったこともいっぱいあるけど、うまくいかなかったなりに頑張ったし、楽しいこともありました。そもそもが好きでなかったら耐えられなかったでしょうしね。この本では、失敗もさらけだしています。全部の仕事を網羅する本ということなので、うまくいかなかったこともちゃんと書いています。全部載っている方が面白いし、失敗も自分の一部ですし」
唯一無二の存在だから、まねしようとしてもまねできるものではない。
「編集さんから『クリエーターを目指す人の指南書みたいなテーマ性も持たせられたら』という話もあったのですけど、僕の場合は参考にならないかも……。変な歩みなんですよ。変な人の一代記になっちゃいました(笑い)」
三条さんは現在、「ジャンプ SQ.RISE」の「冒険王ビィト」、「Vジャンプ」の「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王」、「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の「風都探偵」の3本のマンガ連載を抱えている。「やったことがない仕事に興味があるので、できる状態だったら、どんどんやっていきたいのですが、連載3本は多いですからね(笑い)」と今後もさらに仕事のフィールドを広げたいと考えているようだから、恐ろしい。このバイタリティーもまねできそうもない。やっぱり唯一無二の存在だ。
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