ドラゴンクエスト ダイの大冒険:脇役の魅力 再アニメ化への思い 三条陸に聞く

「三条陸 HERO WORKS」のカバー(c)三条陸、稲田浩司/集英社(c)三条陸、芝田優作/集英社(c)SQUARE ENIX CO.,LTD.(c)石森プロ・東映
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「三条陸 HERO WORKS」のカバー(c)三条陸、稲田浩司/集英社(c)三条陸、芝田優作/集英社(c)SQUARE ENIX CO.,LTD.(c)石森プロ・東映

 人気ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの世界観、設定を基にしたマンガ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の原作、特撮ドラマ「仮面ライダーW」の脚本など数々のマンガ、特撮、アニメなどを手掛けてきた三条陸さんの仕事をまとめた書籍「三条陸 HERO WORKS」(集英社) が発売された。「ダイの大冒険」は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1989~96年に連載され、新作テレビアニメが2020~22年に放送されたことも話題になった名作だ。1991~92年にもテレビアニメが放送されており、新作テレビアニメは、約28年ぶりのアニメ化となった。長年愛され続けている同作について、三条さんに聞いた。

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 ◇最近はザボエラの気持ちが分かる

 「ダイの大冒険」は、三条さんが原作、稲田浩司さんが作画を担当し、堀井雄二さんが監修。少年・ダイが、魔法使いのポップたちと魔王を倒すために冒険する姿が描かれた。名作と呼ばれるのは、ストーリーはもちろん魅力的なのだが、キャラクターの魅力によるところも大きい。臆病で情けないところもあるが、いざという時は仲間のために全力で戦うポップ、気が強いが根は優しいマァムなどの主人公・ダイの仲間たちだけでなく、敵キャラクターも魅力的で、人間くさく、完璧ではないから共感できる。

 「いろいろな年齢、境遇の個性的なキャラクターがいて、それぞれに見せ場があって、意外な活躍をする作品が好きなんです。主人公の視点以外からも作品を見ることができるし、脇役の活躍によって主人公の魅力を発見できることもあって、作品に厚みが生まれる。その影響があるんだと思います」

 主人公以外のキャラクターを丁寧に描くことで、作品がより立体的になる。キャラクターはそれぞれ年齢、立場、境遇などが異なり、大人になって読み返すと、子供の頃は気付かなかった魅力を発見することもある。例えば、敵として登場する魔王・ハドラーは、物語の後半になると、いい上司に見えるし、ダイたちにも真摯(しんし)に向き合う姿、生き様に感動する。

 三条さんは「年を取って、立場が変われば分かるようになるところもあります。最近、ザボエラの気持ちが分かるようになって……」と話す。勧善懲悪ではない「ダイの大冒険」で、ザボエラは特殊なキャラクターだ。ひきょうで、他人を利用することしか考えていない。共感するところはあまりなさそうだが……。

 「連載当時、この作品では珍しく完全な嫌われ役として書きました。自分の嫌いなものを集めたキャラクターだったんです。でも、ここまで生きてきて、周りを見ると、こういう人って多いんですよね(笑い)。『俺がやった!』と自分の手柄にしようとしたり、嫌なことを言う人の気持ちが分かってきたんです」

 ◇愛、熱意を感じた新作テレビアニメ

 なお、「ダイの大冒険」で度々話題になるのが、3カ月ほどの物語であることだ。ダイが旅立ち、大魔王を倒すまでが約3カ月の出来事として描かれている。

 「5周年でムックを作っている時、計算してみたら3カ月くらいだったんです。ストーリーを追っていくと、矢継ぎ早に敵が出てきて、いろいろなことが起こるので、それくらいなんです。ただ、後輩と話していたら『それくらいだと思っていましたよ』と言われ、読者によって体感は違うけど、読んでいる人がそう思うんだったら、まあ大丈夫かな?と」

 1991~92年に放送されたテレビアニメは原作が連載中だったこともあり、物語の最後まで描かれることはなかったが、新作テレビアニメは全100話で最後までアニメ化した。

 「『ダイ』は権利が整理されていなくて、『ジャンプ』のオールスターが登場するゲームなどに入れなかったのですが、『ジャンプ』の50周年に合わせてそこをクリアにしようとなったんです。そうしたら、原作の最後まで再アニメ化するという話も出てきて、一気にそこまで話が進むの!?と驚きました。新作のスタッフは監督を含めて『ダイ』を読んでいた世代で、スクウェア・エニックスさんにもダイ世代の方がいましたし、そういう機運が高まっていたようです。アニメを見ると、好きな方に作っていただけたことをすごく感じました。皆さんの熱意がすごかった。なかなかできることじゃないです」

 愛と熱意にあふれた新作アニメが制作され、「ダイの大冒険」は連載当時を知らない世代にも広がっていった。そもそもは普遍的な魅力がある作品ということもあり、今後も愛され続けられるはずだ。


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