ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
ミステリー作家の青崎有吾さんの人気小説が原作のテレビアニメ「アンデッドガール・マーダーファルス(アンファル)」が、フジテレビの深夜アニメ枠「+Ultra(プラスウルトラ)」で7月5日から放送される。19世紀末のヨーロッパを舞台に、首から下のない不老不死の美少女探偵・輪堂鴉夜(あや)、半人半鬼の青年・真打津軽、鴉夜のメイドの馳井静句の3人が、怪物専門の探偵“鳥籠使い”として事件を解決しながら、鴉夜の体を取り戻すべく旅をする笑劇(ファルス)。輪堂鴉夜と、彼女を師匠と呼ぶ真打津軽の丁々発止の掛け合いも見どころの一つとなっている。輪堂鴉夜を演じる黒沢ともよさん、真打津軽を演じる八代拓さんに収録の裏側、作品の魅力を聞いた。
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八代さん 本当に要素が盛りだくさんで、もちろんミステリーという大きな根幹はありますが、人間はもちろん人ならざるものも登場するし、シャーロック・ホームズのような誰もが知っているようなキャラクターも出てくる。たくさんある要素が時にカオスに混ざり合うんですけれども、最終的には「アンファル」にしかない落ち着きどころで、喜劇的に幕を閉じるという。読んでいてすごく心地よくて、どんどん読み進めてしまう。僕が今まで出会ったことがないような魅力を含んだ作品だなと。原作を読んだ時から、演じるのが楽しみになる作品でした。
黒沢さん 物語としてすごく読みやすい作品だと感じました。動きの描写も、ものすごく細かくて躍動感があるので、映像化との親和性が高そうだなと思いました。「死」というものとの距離感が揺らぎつつある現代の中で、鴉夜と津軽という“死ねない二人”が旅をする物語というのは、大人の皆様がおとぎ話的に見ていただく中で、考えてもらえるきっかけにもなるモチーフなんじゃないかなとも感じました。
八代さん もちろんうれしかったです。ただ、真打津軽はせりふに落語の要素があったり、アクションもあるので、演じるのが非常に難しそう、もしくは考えなければいけない、そしてカロリーも使いそうだなと。それと同時に、師匠と弟子という立ち位置があったので、すごく自分の居心地のいいポジションにもしかしたらいられるかもしれないな、みたいな想像もちょっとありました。
黒沢さん オーディションのせりふがとにかく難しかったです。事件を解決する際の謎解きのパートを半分ぐらい演じることになったのですが、A4用紙2枚分ぐらい文字がびっちり埋まっていて。そんなオーディション原稿は初めて見ました。音響監督の若林(和弘)さんは、オーディションから丁寧にやってくださる方で、骨太なオーディションだったんですよね。終わった時はクランクアップのような達成感すらありまして。若林さんからも、帰りに「こういう役は、こういうことを大切に演じてほしいと思っている」みたいなこと言われて「あ、そうなんですね」と、ひとごとみたいな(笑い)。だから、こういうオーディションを軽く乗りこなせるようになったら任せてもらえる役なんだろうなと思っていたら、合格をいただきまして。「大丈夫かな?」という心配が最終回の収録まで続きました。
八代さん トンネル長い!
黒沢さん トンネル長かったですね。
八代さん 真打津軽という男は、元々人を楽しませる、笑顔にすることが好きで、「人生って笑っていた方がいいじゃない」という信念にも近いものを持っている人です。それがひょんなことから半分人間半分鬼という生き物にされてしまい、最終的には鬼の血に侵されて自分は亡きものになってしまうという中で、最後は自分の死に様で人に笑ってもらおうという。もう芸を通り越して狂気にも感じるようなものを持っている。そういった意味でも彼の魅力は、常に何かを考えていなさそうで考えていなかったり、考えていそうで考えていなかったり……。
黒沢さん 考えていないじゃん!(笑い)。
八代さん いや、考えているんです。実はすごく思慮深い人だと思うんですけど、“ちょける”というか。真剣な時こそ笑ってしまうような、それが常というキャラクターだと思っていただければと。でも、それが彼の最大の魅力にもつながるのかなと思いますね。死と隣り合わせになっても笑っていられる。ちょけることができる強さがある。
黒沢さん 輪堂鴉夜は、960年ぐらい前に不死の存在になって、半年前に首から下を持っていかれて、首だけになった女の子です。鴉夜ちゃんは、基本性格みたいなものは960年前には存在していたと思うんですけど、今は何よりも長く生きてきたということが彼女のアイデンティティーになっていて。いろいろな人といろいろな形で接していかなくてはならないが故の表面的な性格が色濃く出ているキャラクターだなと思っています。演じる時も、感情的に、脊髄(せきずい)で反応するというよりは、思考がすごく早くて、結果にたどり着く。経験則で言動が全て構築されているような子ですね。恐らく、首だけになった時も「なるほど」と言ったでしょうね。
八代さん めちゃくちゃ言いそう。経験値ってすごいね。
黒沢さん 頭脳で動く鴉夜と、脊髄反射で動く津軽は、意外と思考するスピードは同じで、同じ速度で言葉が出たり、体が動いたりするんですよね。
八代さん 確かに、二人は笑いのツボが似ているもんね。二人だけが笑っていて、周りは全然理解していないみたいな。
八代さん 僕の場合は、独り言でブツブツ言っていたり、小話を挟んでみたり、アクションがあったりという感じですけど、やっぱり師匠の輪堂鴉夜が一番しゃべるところは謎解きになるので、物量はお互い多いですが、ジャンルが違うかなと思いますね。
黒沢さん 確かに違いましたね。交渉と説明は私で、あとは二人のけんかで構成されていましたけど、お互いに褒め合ったり、けなし合ったりを大いにすることによって、鼓舞しながら収録しました。
八代さん 本当にそうでした。僕が噛むと、(黒沢さんが)めっちゃ喜ぶんです。
黒沢さん よっしゃー!って。
八代さん イエーイ!みたいな顔で見てくるんですよ。
黒沢さん (噛んだら)喜ぶって決めていたんです。私、噛んだ時にしーんと鳴る方が耐えられないんです。
八代さん えっ! じゃあ、(噛んだら喜ぶのも)気遣いってこと?
黒沢さん そうですよ! 当たり前じゃないですか。
八代さん イラッとしましたね(笑い)。でも、これは悪い意味じゃなくて、たき付けられるという意味で。でも、師匠は師匠で噛むんですよ。やっぱり噛むんかい!みたいな。
黒沢さん 噛むよ(笑い)。それで、八代さんがお返しにイエーイ!って言ってくれると、めちゃめちゃ救われるんです。ただ、噛むにもほどがあって、噛みすぎると、みんな心が沈んでいくんですよね。そうすると、みんなが「いけるよ」「大丈夫だよ」と。でも、そこのバランスで、私はすごく救われたなと思いました。本当にくじけそうな時はやっぱり優しい言葉が欲しい。
八代さん なるほど、たしかに。
黒沢さん 話数を重ねると、ベテランの先輩方がものすごいせりふ量を話すときが来るんですよ。みんな噛む! だから、噛んでいいんだ!って。
八代さん いや、そうはならんだろう(笑い)。すごいワード数と共に、カット数も多いですし、じっくりというよりポンポンと小気味よくという演出がなされていたので、演者が試される現場でしたね。
黒沢さん 試されました。もちろん、緊迫して収録に挑むこともできたと思うんですけど、それでは多分もっと固まってしまうなと思って。恐らく監督さんたちは、緊迫感がある雰囲気でやらせてくれようとしていたんですけど、私がすごくあらがって、「みんな間違えましょう!」みたいな(笑い)。
八代さん たしかに、この作品は、シリアスなシーンもシリアス過ぎないところが面白い。シリアスになりきらない面白さがあるんですよね。
黒沢さん 一言ボケがあったりとかね。
八代さん どれだけシリアスになっても、ちょけるところがあったり、最後はくだらなかったり、そんな良さがあるので、確かに黒沢さんが作った空気感がもしかしたら正しかったような気もします。
黒沢さん いやいや、八代さんには本当に助けられました。たくさん楽しいお話をしてくれて。
八代さん 僕は、この現場ではヘラヘラしているのが信条だったので。津軽のようでいようと思っていたので。
黒沢さん まさかこんなにこっちがヘラヘラしているとは思わなかった?
八代さん そう、まさか上回ってくると思わなかったので。師匠は、もっと愉快なんだって。
黒沢さん 愉快にやっちゃった(笑い)。
八代さん 楽しい現場でした。現場を通して、師匠に一本取られちゃいました。まだまだ弟子ですね。
黒沢さん 八代さんがすごいところは、本当に本番に強いですよね。
八代さん そうかな?
黒沢さん 本番にすごく強くて、「そこを締めるんだ、格好いい!」と思うようなことが多くて。すごいな、すてきだなと尊敬しました。あと、お人柄がとても良くて、スタッフさん、ゲスト声優の皆さんに、本当に分け隔てなく接してくださることによって、現場が本当にまろやかに進んでいったといいますか。合いの手一つとっても、何て優しい、温かみのある方なんだと思いました。
八代さん うれしい! 僕はそう意識していたわけではなくて、黒沢ともよについて行こうということだけ思っていました。師匠なので。ただ、僕は、この作品に限らずですが、座組の中の居方(いかた)をキャラクターに感化されるのが好きなんですよね。
八代さん この作品だからこそなのかもしれないんですけど、言葉の遊び方だったり、捉え方がすごく面白いなと。鴉夜の謎解きのシーンは、説明や業務的なせりふも多くて、そこに特に感情はないこともある。せりふをある意味処理するような中で、どう表現していくか、色付けていくかみたいな。黒沢さんは、言葉の色づきがすごく魅力的で、かつ聞きやすくて。やはり謎解きパートは(見る人に)飽きられたらおしまいなので、我々にできることといったら、聴覚で楽しく、興味深く感じてもらう、心や頭を動かしてもらうこと。そう考えたときに黒沢さんの声は彩りが魅力的で、「この人にしかできなさそう」という瞬間が多々ありました。
黒沢さん 私、普段から注意力がすごく散漫な人間で、誰かと何かを話していても、周囲の会話が耳に入ってきちゃうんですよ。お芝居で舞台に立つ時も、お客さんの集中が切れた瞬間をキャッチしなきゃいけないから、集中していないなと思ったらちょっと大きい音を出してみたりするんです。そういうことをやってきているから、今回の謎解きでも「あの人に聞かせなきゃ」「この人に聞かせなきゃ」という意識でやるとか、舞台に立っている感覚とすごく近かったのかなと思います。
八代さん 聞いていて面白かったですね。
八代さん 今回「アンファル」がアニメになったことで、作中に登場するキャラクターに負けず劣らずの能力使いの方々が集まっています。僕ら自身も完成を見るのがすごく楽しみになるようなアニメ作品ですし、きっとたくさんアニメに触れてきた方々にもうなっていただけるような作品になっていると思います。そして、キャラクター同士の言葉遊びの部分も楽しんでいただけたら、役者としてはうれしいです。
黒沢さん 作品自体もちょっと皮肉めいていて、生と死の境界線が揺らぐ感じであったり、喜劇と悲劇の境界の揺らぎであったり、いろいろな面がある作品だと思います。オープニングとエンディングは今っぽい楽曲になっていて、本編が始まるとシックな曲調の音楽が流れるのも面白いですし、クリエーターたちの遊び心を感じながら、作品の芯のようなものにたどり着いていただけたらいいなと思っております。ぜひお楽しみください。
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