俳優の堺雅人さん主演で、7月16日にスタートした連続ドラマ「VIVANT」(TBS系、日曜午後9時)。「半沢直樹」「下町ロケット」シリーズで知られる人気ドラマ枠「日曜劇場」の新作で、そのスケールの大きさから初回放送後には「もはや映画」との声が視聴者から上がった。同作で、物語の発端となった誤送金事件に関わる商社マン・水上了を演じているのが古屋呂敏(ろびん)さんだ。キャリアの初期はモデルとして活躍し、現在は俳優に加え、カメラマンとしての顔を持つ古屋さんにとって、「VIVANT」はどんな経験をもたらしたのか、話を聞いた。
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古屋さんは1990年6月2日生まれ、京都府出身。日本人の母とハワイ出身の日系アメリカ人の父を持つ。俳優として、特撮ドラマ「仮面ライダーセイバー」(2020~21年)の仮面ライダーストリウス/ストリウス役などで知られ、「VIVANT」で日曜劇場初出演を果たした。
「日曜劇場は、ドラマチックに物語が展開したり、人間模様というか、人対人の感情のぶつかり合いにフォーカスした作品が多いという印象があります。キャストの方々、演じる役どころ含めて、“個”の強さを感じていましたし、実際に自分が参加してみても、その印象は変わらずでした」
「VIVANT」は、「半沢直樹」「下町ロケット」などの福澤克雄監督が、演出だけでなく原作も手がける完全オリジナルドラマ。日本と中央アジアを舞台に繰り広げられる、予測不能なアドベンチャーで、堺さんのほか、阿部寛さん、二階堂ふみさん、松坂桃李さん、役所広司さんら主役級のキャストが名を連ね、海外の俳優も参加している。
古屋さんが演じる水上は、主人公の乃木憂助(堺さん)が勤める大手商社「丸菱商事」の後輩社員で、1億ドルの誤送金に関わってしまう。撮影で意識したのは、周りで起こる出来事に対する率直なリアクションだ。
「もし自分がその立場になったら、どれくらい焦ってしまうのだろうか。そういう投影の仕方を視聴者にしてもらえたら、と思って。だから、水上自身の個性を出すというよりも、リアクションで見せるというか。それこそ堺さんの演技、そこから放たれるエネルギーを一番近くで受け止め、逃さないことを自分の役目としました」
共演シーンの多い堺さんの印象は「とても柔らかくて、温かく、それでいてメリハリのある空気を作れる、いろいろな角度から尊敬のできる方」で、現場の居方からも学んだことはあった。
「堺さんは必要以上に緊張感を出すわけではないのですが、みんなをつなぐ糸はつねにピンと張った状態でいる。とても居心地がいいようで高揚感のある現場の空気を作ってくださって、こういう居方があるんだなって。堺さん本人はとてもおだやかなのですが、現場の火をつねに絶やさず燃え上がらせているような、そういう空気感を僕は感じました」
また、監督の福澤さんからは具体的なアドバイスをもらった。
「役として思いを伝える、“伝える”ことを大事にしろと。芝居のうまいへたは経験によって変わってくるから、今できる中で、一番の感情を出す、120%で伝えるってことを大事にしなさいと言っていただいたことは、自分の中にとても残っています。技術よりも気持ちの面での話で、そういった姿勢を別の場所から見てくれている人がいるから、見せられるときにちゃんと見せなさいと言ってくださいました」
改めて「VIVANT」の現場で、古屋さんが役者として得たものとは? それは「言語化できない経験」であり、「とても大きな宝物になった」という。
「言葉にすると抽象的になってしまうので、福澤組の一人として、今までの日曜劇場を背負ってきた方々のそばにいられること、その空気を肌で触れられることに尽きます。言語化できない経験をするって、あまりないじゃないですか。特に大人になればなるほど、いろいろなものに対して理解が深まってくるので。そういう経験をできて、とても幸せな気持ちにもなりました」
そんな古屋さんに、約2年前に日曜の朝に放送されていた「仮面ライダーセイバー」での経験も振り返ってもらった。
「今の時代、1年間、同じ作品に向き合えるのはまれなことですし、“ニチアサ”の現場で経験できたことは糧になっています。仮面ライダー、スーパー戦隊といった特撮作品って、キャリアの浅い役者さんが経験を積む場でもあると思うのですが、僕自身もそうであり、役者として土台となるものをここで作ることができたなって。台本をどう読み解き、作品とどう向き合っていくのか。監督や撮影スタッフが何を求め、そこにどうやって応えていくのか。そういったベースの部分を学ぶことができたと思っています」