名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
テレビアニメ「明日のナージャ」の放送20周年を記念して、声優陣が再集結する朗読劇「アニメ20周年記念 朗読劇『明日のナージャ ~16歳の旅立ち~』」が上演されることが話題になっている。「明日のナージャ」は、ABCテレビ・テレビ朝日系で2003~04年、日曜朝(ニチアサ)に放送された。ニチアサのキッズアニメとしては、1999~2003年の「おジャ魔女どれみ」シリーズに続く番組として放送され、2004年にスタートし、20周年を迎える「プリキュア」シリーズに挟まれた形となり、「おジャ魔女どれみ」「プリキュア」シリーズと比較すると、知名度が高いとは言いがたい。しかし、根強い人気を誇り、“伝説のアニメ”として語り継がれている。アニメを手掛けた東映アニメーションの関弘美プロデューサーに“伝説のアニメ”の誕生秘話を聞いた。
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「明日のナージャ」は、20世紀初頭のヨーロッパを舞台に、孤児院で育った主人公・ナージャが、「お母さんは生きているかも知れない」と告げられ、旅芸人一座・ダンデライオンの一員として世界各国を巡りながら、日記帳に記された母を知る人々を訪ねていく……というストーリー。「おジャ魔女どれみ」シリーズなどの五十嵐卓哉さんがシリーズディレクターを務め、「飛べ!イサミ」「NANA」「のだめカンタービレ」などの金春智子さんがシリーズ構成、「サムライチャンプルー」などの中澤一登さんがキャラクターデザインを担当した。
関さんが「明日のナージャ」を企画したのは1980年代だった。
「27歳の時に初めて書いたオリジナルの企画でした。1980~90年代の東映アニメーションは、マンガ原作の男の子向けアニメが主流の時代だったんです。プロデューサーとしては、誰でもオリジナルを作りたいという希望を持っているものでして、20代の私もご多分に漏れず、オリジナルの企画を書いていました。それが上層部の評判も良くてですね。ただ、私はアシスタントプロデューサーだったんです。『君がプロデューサーになる日が来たらいつかやりなさいね』という感じで、要するに信用がなかったんです」
30代になった関さんは「どれみ」「デジタルモンスター(デジモン)」シリーズのオリジナル企画をヒットさせる。信用を得た関さんは「どれみ」の後番組として「明日のナージャ」の制作に乗り出す。
「『どれみ』はオリジナルですが、変身少女、魔法少女ものと言われるジャンルに当たりますので、東映アニメーションがそれまでいくつも作っているジャンルでした。『ナージャ』は大河ドラマです。東映アニメーションの大河ドラマでヒットしているものとしては『キャンディ キャンディ』という名作がございます。ほかにも魔法の要素がある『花の子ルンルン』などもありますが、『ナージャ』は完全オリジナルの大河ドラマなので、手順を踏む必要がありました。『どれみ』『デジモン』というオリジナルアニメがヒットした後だったので、『ナージャ』の企画が通ったと思っています。タイミングなんです。テレビ局、広告代理店、スポンサーなど社外の了解を得ることができました」
「ナージャ」のタイトルは、仏シュルレアリスム作家のアンドレ・ブルトンの代表作「ナジャ」にインスパイヤされた。「ナジャ」は実験的な作品だ。
「27歳の時に最初の企画書を書いていて、大学を出てまだ間もない頃だったので、自分で言うのも恥ずかしいのですが、ちょっと青くさいんですよ(笑い)。学生時代に勉強していた仏文学、映画などが私の頭の中にはしっかりともう染みついていて、どこかでそういった作品をイメージしながら作っていました」
関さんは「ナージャ」の制作時を「『どれみ』と『デジモン』を始めたのは30代の終わりで、どちらも4年間続きました。『ナージャ』は40代前半で、一緒にお仕事するスタッフたちも年齢が近く、全員がちょうど脂が乗ってきた時期だったんです」と振り返る。
「若い頃から知っているわけだから、次のステップにいった方がいいんじゃないか?とも思っていまして。プロデュースの“プロ”は“前”、“デュース”は“作る”という意味があって、単に企画書を書くだけではなくて、人を育てるのもプロデューサーとして大切な仕事です。スタッフがプロとして生きていくことができれば、プロデューサーとして大満足なんです」
関さんは「どれみ」「デジモン」をはじめ数々のヒット作を世に送り出してきた“生きる伝説”だ。東映アニメーションとしては初の女性プロデューサーでもある。
「昔、企画部に配属されて、最初に持たされる名刺の四隅が丸く削られていました。男性の名刺は隅が四角の長方形なんです。丸い名刺は水商売のお姉さんが持つものでして、今だったら大変なことですよね(笑い)。当時は業界全体を見回しても、女性のプロデューサーはとても少なかったんです。東映アニメーションではもちろん初めてでしたが、先輩の男性のプロデューサーは意外とフェミニストが多くて、すごく助けられました。制作現場の女性も少なかったです。大泉のスタジオをヒールで歩くと、カツカツと音が響くんですけど、『高圧的な印象を与えるから気を付けた方がいいよ』と教えてもらったり。スニーカーで会社に行くようになって、それに合わせてファッションもガラッと変えたこともありましたね」
関さんは「ナージャ」のテーマの一つとして「世の中にいろいろな人がいること」を挙げる。社会的な身分格差に関わるエピソードもあり、ナージャはさまざまな人と触れ合うことになる。
「幼稚園、小学校のお友達といった集団の中で、自分と同じような子供のことは分かっていても、親以外の大人と接する機会が少なくなってきた時代でした。近所のちょっと口やかましいおばさん、おじさんとの交流もなくなりつつありました。だから、ダンデライオン一座では、近所のおばさん、おじさん、親戚のおじさん、おばさん、自分よりちょっと年上の先輩などとの交流を描いています。作品を見た後、学校に行ったり、社会に出たりした時のために、いろいろな人がいることを知っておいた方がいいですよね。ダンデライオン、アップルフィールド孤児院は、みんな境遇が違いますし、国も違います。リタは不幸な目に遭って、口がきけない状態です。いろいろな人たちと一緒に生きていくのが人生なんですよね」
子供たちに向けて、社会をしっかり描こうとした。
「子供の時に見て、気付かなくてもいいんですよ。学校にもさまざまな国の子供がいますし、さまざまな事情でお父さんやお母さんと一緒に暮らしていない子もいます。この20年で日本の社会も変化して、いろいろな人と出会う機会も増えています。社会に出るとはこういうことだよ、と伝えていかないといけないと思ったんです」
「ナージャ」は約1年で放送を終えた。名作ではあるが、約4年続いた「どれみ」、20周年を迎える「プリキュア」に比べると、地味な存在であることは否めない。
「大河ドラマですから、1年で終わらせるつもりはなかったんです。できれば2年できたらと思っていましたが、残念なことに、いろいろな事情が重なって2年目はできませんでした。1年で終わっていますが、思いの丈は全部入れ込んだつもりです。そこが伝わっているとうれしいですね」
アニメの放送は終わったが根強い人気がある。2021年にYouTubeで配信された際、大きな反響を呼び、アニバーサリーブルーレイディスクボックスの発売を記念して、今年6月に“伝説のエピソード”の第26話「フランシスの向こう側」が放送された際、SNSでトレンド入りするなど令和の時代も愛され続けている。
朗読劇は、9月30日、10月1日に浜離宮朝日ホール・小ホール(東京都中央区)で上演される。ナージャ役の小清水亜美さん、フランシス&キース役の斎賀みつきさん、ローズマリー役の宍戸留美さん、ダンデライオン一座の団長ことゲオルグ役の一条和矢さんが再集結。2017年に出版された、アニメ放送後のナージャたちを描いた小説「明日のナージャ 16歳の旅立ち」(講談社)を朗読劇用に再構成した特別編となる。
「(シリーズ構成の)金春さんと『16歳の旅立ち』は散々悩みました。『ナージャ』の舞台として選んだ時代は、二つの大戦の手前、いわゆるベルエポックと言われるヨーロッパから始まっています。放浪の旅ではなく、1カ所に定住する形でやってみたくて、新作を作りました。ナージャは、お母さんを探していたけど、何を目的にこれから生きていくのか? アップルフィールド孤児院で一緒だったお友達たちとは、ローズマリー、オリヴァーには会っているけど、バラバラになっています。アップルフィールドの仲間たちを集めるためには、1カ所に定住させないといけない。そこから発想しています」
さらにその先の構想もある。
「彼女たちはヨーロッパをいろいろ旅していて、『16歳の旅立ち』はパリを舞台にしていますが、アニメの2年目の構想としてはアジアに行く。キースやローズマリーはアメリカ大陸を目指す。第一次世界大戦は始まっていない時期ですが、ヨーロッパは危険な状態になってくるので、ナージャたちの旅のコースは、アジアに向かうかもしれない、それともアメリカ大陸を目指すかもしれない。そんなことを金春さんと話していたりするんです。大河ドラマなわけですから、ナージャが60歳になったことも考えておかないといけませんね」
「ナージャ」の“伝説”は終わらない。大河ドラマはまだまだ続いていくはずだ。さらなる展開にも期待したい。
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2024年12月22日 23:00時点
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