薬屋のひとりごと
第32話 皇太后
2月28日(金)放送分
ブラジルのアニメーション作家のアレ・アブレウ監督の最新作「ペルリンプスと秘密の森」が12月1日に日本で公開される。アブレウ監督の前作「父を探して」は、南米の長編アニメ作品では初めて米アカデミー賞の長編アニメ部門にノミネートされたことも話題になった。中南米のアニメが“新潮流”として注目される中で、アブレウ監督は最も重要な作家の一人とも言われている。世界で注目を集めるアブレウ監督は、日本のアニメからも大きな影響を受けているという。
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「ペルリンプスと秘密の森」は、テクノロジーを駆使する太陽の王国のクラエ、自然との結びつきを大切にする月の王国ブルーオの二人の秘密エージェントが、巨人によって存在を脅かされる魔法の森に派遣される……というストーリー。森を守る唯一の方法は、光として森に入り込んだ“ペルリンプス”を見つけることで、敵対していた二人は共通する目的のために協力することになる。
「スケッチブックの小さなストーリーの破片から始まった映画です。『父を探して』もそうで、いつも同じように映画が始まります。今回に関しては、オオカミの格好をした男の子が、汚く、ぐちゃぐちゃになっていて、森の中から出ていこうとしている……という強烈なイメージがあって、そこからスタートしました。森については、最初はよく分からないところがあったのですが、子供時代を表しているものであることが、自分の中で分かってきました。自分でもよく分からないところからスタートし、自由な発想で進め、後から分かってくる。そういうプロセスで作っています。ロジックではなく直感なんです。作品が自分に対して『こうしろ』と言ってくるような感覚もあります。それは『父を探して』も同じでした。自分は映画のサーバントのようなものなのかもしれません」
森を含めた独特の色彩が大きな魅力になっている。暗い、明るいなど言葉では表現できないような独特の色彩が印象的だ。
「確かに言葉では表現できない色彩なのかもしれません。この映画で色彩は大きなキーになっています。森の色には二つの意味があります。一つは、森は子供時代そのもので、さまざまな色が存在します。もう一つは、精霊の存在で、これは言葉では表現が難しいところもあります。自分の言葉で表現できないものがあるから、映画を作っているところもあります。絵、音楽などでそれを表現して、映画になっていくんです」
アブレウ監督は「子供の頃から日本のアニメを見てきました」といい、日本から大きな影響を受けているという。
「日本のアニメは文化としてとても成熟しています。対してブラジルは、ブラジルのアニメのアイデンティティーを探している段階、成長期です。手塚治虫の『リボンの騎士』など子供の頃に見た日本のアニメが、自分とアニメをつないでいます。アニメは、子供たちを抱きしめてくれるような存在です。自分を抱きしめてくれたのは、日本のアニメでした。高畑勲監督や日本の“師匠”のような存在の方々の影響を受けています。自分たちが大好きなものは、自分を通して作品に現れるものです。どこに何の影響があるというわけではないのですが、その大きな影響は必ず存在します」
米国のアニメよりも日本のアニメの影響が大きいという。
「米国のアニメはそれも似ていて、ショービジネスのように見えます。満足できません。私には息子がいるのですが、彼も日本のアニメが大好きです。『竜とそばかすの姫』『崖の上のポニョ』『ハウルの動く城』などを何度も見ています。米国の映画は、間口が広いのですが、簡単に出ていくことができます。私が作りたいのは、間口が広いけど、出ていくのが難しい映画です。見ている人がその映画の中にも入ってしまい、そこから抜けだせず、ずっと頭の中に残る。そういうものを作りたいと考えています」
「ペルリンプスと秘密の森」も抜けだせなくなり、世界の見え方が変わるようなアニメなのかもしれない。
「メタファーがちりばめられていて、見た人によってそれぞれ解釈できるはずです。観客の皆さんが映画制作の一部にも関わっているようなところがあります。映画の最後のピースをうめるのは観客の皆さんです」
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