榎木淳弥:「呪術廻戦」 虎杖悠仁の絶望と再起 「渋谷事変」を終えて語る“正直な思い” 

「呪術廻戦」の一場面(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
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「呪術廻戦」の一場面(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

 「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の芥見下々(あくたみ・げげ)さんのマンガが原作のテレビアニメ「呪術廻戦」の第2期が、MBS・TBS系で12月28日に放送された第47話「渋谷事変 閉門」で最終話を迎えた。呪術師、呪詛師、呪霊が渋谷に集結し、かつてない大規模戦闘を繰り広げた「渋谷事変」のクライマックスでは、主人公・虎杖悠仁が絶望からはい上がり、再び“呪い”に立ち向かっていく姿が描かれた。虎杖悠仁を演じる声優の榎木淳弥さんに「渋谷事変」を終えた率直な思いを聞いた。

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 ◇あっという間だった「渋谷事変」 最終話に「びっくり」

 「呪術廻戦」は2018年から同誌で連載中。強力な“呪物”の封印が解かれたことで、高校生の虎杖悠仁が呪いを巡る戦いの世界に身を投じることになる……というストーリー。テレビアニメの第2期は、五条悟や夏油傑らの呪術高専時代のエピソード「懐玉・玉折」と、物語を現代に移し、10月31日のハロウィーンでにぎわう渋谷の街で起こる「渋谷事変」が描かれた。7月6日~8月3日に「懐玉・玉折」が全5話で放送された。8月31日から「渋谷事変」が放送され、12月28日に最終話を迎えた。

 「渋谷事変」の最終話では、夏油傑の“裡(うち)にいる者”が史上最悪の術師と呼ばれた加茂憲倫であることが明らかになり、彼が街に大量の呪霊を放ち、姿を消すという衝撃的な展開となった。乙骨憂太が登場し、「虎杖悠仁は僕が殺します」と言い放つシーンが描かれ、虎杖が決意に満ちた表情で登場するなど、まさに先が気になる展開で第2期が幕を下ろした。

 「虎杖が手をたたくと呪霊が現れる、というシーンで終わりましたね。僕は、先に原作を読んではいたのですが、街が壊滅的になっている描写には『そこまでやるんだ』と思いました。みんなが普通の生活を送れていない感じでしたし、街がそういう状態にまでなってしまうという展開にびっくりしました」

 「渋谷事変」を終え、「あっという間だった」と感じているという。

 「虎杖の出番がないエピソードもあって、2クールずっと出ていたわけではないので、早かったなと感じるのかもしれないです。スタッフさんには、素晴らしいアニメーションを作ってくださって、すごく感謝していますし、本当に『お疲れ様でした』と言いたいですね。本当にバトルシーンが多かったので、描くのは大変だっただろうなと思うんです。僕らはそこの力にはなれず、声だけなので、本当に感謝ですね」

 ◇自分を受け入れた虎杖「また演じたい」 榎木淳弥が常に抱く危機感

 「渋谷事変」の序盤のインタビューで、榎木さんは「これまでの虎杖は“明るくていいやつ”という印象が強かったんですけど、『渋谷事変』からそのメッキがだんだんと剥がれ始める」と語っていた。

 「渋谷事変」の終盤では、虎杖は両面宿儺に乗っ取られていたとはいえ、渋谷の街を壊滅させ、多くの人の命を奪ってしまう。さらには、七海建人の最期、釘崎野薔薇が真人に倒される場面を目の当たりにし、心も体もボロボロに打ちのめされる。そして、東堂葵の言葉をきっかけに、自身と向き合い、再び呪霊と立ち向かうことを決意する。「渋谷事変」を終えた榎木さんに改めて“虎杖観”を聞いてみた。

 「言い方は難しいのですが、そんな立派な人物じゃないというか。自分のために戦ってきたという部分があるので、利己的な感じというか、そういう印象ですね。今までは全部表面的な部分だったのが、第44話『理非-参-』の東堂とのやり取りで、はっきりと『自分のためだった』と分かってしまった。その後の真人との対話で、見たくなかった自分、自分は利己的なんだということを受け入れたんじゃないかなと。そうじゃないと生きていけないから」

 虎杖と向き合い続けた榎木さんに「『渋谷事変』で役者として得たもの、成長できたと思う部分は?」と聞いてみると、「いや、特にないです」という答えが返ってきた。榎木さんは「なるべく素直に話そうと思っています」といい、理由を語ってくれた。

 「何が成長なのかも分からないですし、技術的にうまくなることが成長なのかと言ったら、怪しいなと思います。アニメ視聴者の皆さんには、さまざまな正解があり、果たして『これでいいのだろうか?』と悩みながら模索しているので、何かを得たとか、成長したと思うことは、すごく危険だなと思っています。だから、別に意識的にそうしているわけではないのですが、本能的に危険を感じているのかもしれません」

 榎木さんは「呪術廻戦」など自身が出演している作品の放送を見ても「もうちょっとこうすればよかったかな」と自分のあら探しをしてしまうという。ただ、危機感を持って、真摯(しんし)に役に向き合う榎木さんが演じる虎杖だからこそ、多くの人の心を揺さぶり続けるのかもしれない。

 榎木さんは、メッキが剥がれた虎杖を「逆に好きになる人が多いんじゃないかなと思います」とも語っていた。最後に今後の意気込みについて聞いた。

 「続きが気になる終わりだったと思います。原作もまだまだ先がありますし、続編のアニメーションも楽しみにしています。僕としては虎杖を『また演じたいな』という気持ちですね」

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