種崎敦美×市ノ瀬加那×小林千晃:アニメ「葬送のフリーレン」第1クール振り返る 3人のコンビネーション

「葬送のフリーレン」の一場面(c)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
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「葬送のフリーレン」の一場面(c)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

 「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中のマンガが原作のテレビアニメ「葬送のフリーレン」。2023年10月から日本テレビのアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で放送されており、1月から第2クールに突入する。テレビアニメが放送される毎週金曜夜にはSNSで複数の関連ワードがトレンド入りするなど大きな盛り上がりを見せている。美しい映像と共に話題になっているのが豪華声優陣の演技だ。第2クールの放送を前に、フリーレン役の種崎敦美さん、フェルン役の市ノ瀬加那さん、シュタルク役の小林千晃さんに第1クールを振り返ってもらった。

ウナギノボリ

 ◇“ザイン”中村悠一が加わり変化も

 --大きな反響を受けて感じていることは?

 小林さん この作品は日常のちょっとしたやり取り、繊細なところがあって、現代の人が忘れがちなことを思い出させてくれるところがあるようにも感じています。アニメを倍速で見る人もいますが、この作品はそれを許さない。ゆったり時間が流れていて、その時間を体感したいと思わせるところがあります。何かと忙しい現代にマッチしているのかもしれません。

 種崎さん 始まる前からいろいろな現場で「フリーレン、楽しみにしています」と言っていただいていたのですが、始まってからも「見てます!」と頻繁に声をかけていただきます。音響監督もされている方から「東地さん(ハイター役の東地宏樹さん)があのありあまる色気を完全に消しているのにびっくりしました」と言われたこともあって、普段からよく別作品でのお芝居を聞いている方ならではの意見ですよね。放送が始まって、回を重ねて思ったことなのですが、放送前にインタビューで「この作品は心に何かが降り積もっていく」というお話をさせていただいていたのですが、それを改めて感じた、ちゃんと分かった気がします。話数を重ねていくほどに、より第1話や第2話が、最初に見た時よりさらに心にしみてくる。自分が伝えたかったのは「見れば見るほどにグッとくる」ということだったのだなぁと、改めて実感しています。


 市ノ瀬さん 先日、街を歩いていて、「葬送のフリーレン」のアクリルスタンドを売っているコーナーを見つけたので、私はフェルンのアクスタを買ったんです。買ってから、戻ってきたら、小学生の女の子がフリーレンのアクスタを買おうか……と悩んでいるところを見つけて、こうやって年齢を問わずいろいろな人に届いていることを実感して、ほっこりしました。この作品を見ていると、言葉にできないジワーッとした感情が出てきます。普通の日々がいかに大切なのかと、忙しく生きていたら感じられないようなことに気付かされる作品です。

 --第1クールを振り返って印象的なシーンは?

 種崎さん 第8話「葬送のフリーレン」ですね。ラストが衝撃でした。フリーレンとフェルンが同じ表情で、重なっていく……。元々、原作でも好きなシーンではあったのですが、演出、音楽も全てが素晴らしすぎます。あのシーンは音楽がフィルムスコアリング(映像に合わせて音楽を作る手法)なんですよね。諏訪部さん(リュグナー役の諏訪部順一さん)のせりふを含めて全てがすごいシーンで、鳥肌が立ちました。

 市ノ瀬さん 「断頭台のアウラ編」のフェルン、リュグナーたちの戦いの迫力が想像以上すぎました。立体的に映像を描いていて、360度のカメラワーク、音楽も含めて本当に素晴らしくて、何度でも見返したくなりました。人間の侮れない底力みたいなものも見えますし、すごくいいんですよね。

 小林さん 第12話「本物の勇者」のシュタルクの過去、家族の話です。現代に移り変わって、誕生日を祝ってもらうのですが、見え方によってはすごく切ないんですよね。シュタルクはそれまで誕生日を祝ってもらったことがないと思い込んでいた。切ないようにも見えますが、フリーレンたちが前向きにしてくれる。結果として、すごくいい思い出になります。「葬送のフリーレン」には前向きになれるところが詰まっているんです。僕がシュタルクを演じているということもありますが、個人的にすごくほっこりしました。音楽、画(え)の繊細な表現で、よりグッとくるところがありました。

 --シュタルクがジャケットを羽織る仕草などちょっとしたシーンの作画の美しさも話題になっています。

 小林さん 原作の行間をちゃんと描いていて、僕らが想像で補っていたことを画に落とし込んでいるんですよね。戦闘シーンもそうですけど、想像をはるかに超えてくる本当にすごい作品です。原作を知っていれば、知っているほど面白いんです。

 種崎さん 全部のシーンがそうなんですよね。それがすごいですよね。

 --原作からいい意味で印象が変わったシーンは?

 市ノ瀬さん 戦闘シーンですね。

 小林さん アウラ戦もすごかったですね。

 種崎さん 相手も強いけどシュタルクもしっかり強いし、その繰り出す技の重さや、フェルンだと魔法の打ち出す速さも分かるんです。加えてここで目元だけを映すのか!と口元だけで表現するのか!……と、そうすることで想像が膨らんだりアニメで改めて気付かされることが本当にたくさんあって。


 小林さん 口パクもめっちゃ動きますよね。母音の動きに沿っているんですよ。

 市ノ瀬さん 「アウラ、自害しろ」の動きもすごいですよね。

 種崎さん この繊細な絵に見合うお芝居ができているだろうか……とドキドキしてしまいます。中村悠一さんが演じるザインが加わり、色が変わったように感じました。原作のシュールな面白さがありますが、監督のギャグ感、間が素晴らしくて、ザインが出てきたことで、コミカル度合いが上がったのが、顕著に分かります。分かっていたけど、3人の時は、誰かがボケたら、ツッコみはするけど、3人共、ボケやったんや……となったり(笑い)。可愛いですよね。

 小林さん ちゃんとした大人が出てくるとそうなりますよね。原作でも空気感が変わるけど、アニメの映像、音、テンポが変わって、4人になってから芝居感も変わりました。

 市ノ瀬さん 3人の時もシュタルクとフェルンは等身大の感じが出ていましたが、ザインが交わることで幼さ、男の子、女の子感がより増したように感じました。

 種崎さん、中村さんが現場に合わせてチューニングしてくる方なのは分かっていましたが、今回はそれがより伝わりました。初めて見る中村さんかもしれないと感じたり。

 小林さん 一緒に作品を作っていく熱量を感じましたし、休憩時間もザインっぽいと言いますか、一人静かに大人で、でも同じ目線でしゃべってくれたり、すごい居心地のいい4人でした。

 ◇キャラに似ている?

 --第1クールの3人の掛け合いで印象的だったのは?

 小林さん 僕が参加させていただいたのは第5話「死者の幻影」の後半からで、先にお二人の掛け合いを見てから、参加させていただきました。静かな空気感の中で会話するから、そこにどう寄り添うか?とすごく考えました。ぶち壊さない程度にやった方がいいのか? それともぶっ壊すくらいの距離感の近さでいいのか?と考えて、結果として寄り添う形になりました。

 種崎さん お芝居の中の話じゃなくて恐縮なのですが、3人の掛け合い……というか何気ない日常の会話が印象に残っています。私の黒いジャケットに猫の毛が付いていて、シュタルク(小林さん)に「猫の毛、付いてますよ」と言われ、フェルン(市ノ瀬さん)がすぐさまコロコロを取り出して取ってくれたことがあって。そのままアニメで描かれても不思議じゃないくらい、役のまますぎて忘れられなくて(笑い)。ほかの現場の2人のことは分かりませんがこの現場ではなんかそれぞれがそれぞれのキャラクターに似ているので、普段の会話もお芝居もなんだかずっと自然体でおもしろいです。


 市ノ瀬さん フェルンは、孤児としてハイター様に救われ、幼少期は一人前になろうという強い気持ちで生きてきて、どこかずっと気を張っている感覚があったと思います。フリーレンと出会ってからは、いい意味で脱力できているような感覚があり、ハイター様も好きですが、フリーレンの日常のゆるっとしたところを見て、自分がちゃんとしなきゃ!と保護者感が出てきます。相手によって少しずつ自分がこうありたいと思うところが変わっていて、シュタルクだったら、女の子らしい関係性になるのも面白いです。

 種崎さん フェルンの変化を演じる中で、市ノ瀬さんの中で変わってきたことはあったの?

 市ノ瀬さん 種崎さんのお芝居を聞いて、だらんとしたフリーレンをとことんやっているので、正さねば!という気持ちになります。すごくやりやすいんです。小林さんは絶妙に女の子に気を使えない年頃を演じるのが本当にうまくて……。雪の中でフリーレンを背負おうとするシーンの言い方がすごく好きです。笑ってしまいそうになりました

 小林さん 僕はめちゃめちゃ気を使っていますよ! 多分……。

 --3人のコンビネーションは?

 小林さん やっぱり作品に近いですね。種崎さんは主演として、背中で見せてくれたりするタイプで、僕や市ノ瀬さんは身が引き締まるところがあります。一方で、休憩時間や関連番組とかでは、たまに気が抜ける(笑い)。隙を見せてくれるので、そうすると僕らがしゃべりやすくなる。不思議ですね。

 種崎さん それぞれがキャラクターと似ている……というか、そう「見てしまっている」ところもあるかもなんですけど、2人共何か絶妙にズレているところがあって。普通にキャッチボールしている会話がもうなんかフェルンやシュタルクと話してるみたいで。それが面白いし、心地いいです。

 市ノ瀬さん ちゃんと共演させていただくのは今回が初めてで、どういう方なんだろう?というところから始まり、お芝居のすごさに影響を受けています。私は人見知りなので、お二人がやりやすくしてくれていて、徐々に慣れていきました。お二人の人柄に助けられています。

 -ー市ノ瀬さんはフェルンのようにズバッと言うことはない?

 市ノ瀬さん まだ、言ってないです(笑い)。

 小林さん “まだ”ってことは、友達とかに言うことはあるの?

 市ノ瀬さん 言ってしまうことがあるんです(笑い)。そんな辛辣(しんらつ)なことは言わないですよ。

 --共演する中で刺激を受けている?

 種崎さん 私はフェルン役でもオーディションを受けていたので、市ノ瀬さんはフェルンはどう演じるんだろう?と思っていたのですが、聞いた瞬間からもうそれ以外考えられないほどフェルンで。なので常にその存在に刺激を受けています。シュタルク(小林さん)もそうですね。加えて割と何か仕掛けてきますし(笑い)。例えばアウラとの戦いの時は収録が別で私が後だったんですけど、第8話でシュタルクが土下座をするシーンで「チラッ」というアドリブが入っていて。私もそこに息のアドリブを入れようと思っていたのですが、こちらをうかがう「チラッ」を聞いた瞬間「よし、これは完全無視だ」と思ってあえて何も入れませんでした(笑い)。

 小林さん シュタルクとしては、こう言えば戻ってくれるかな?という気持ちがあったでしょうし、入れたアドリブでした。現場にもよりますが、みんなで作っていきたいのでそういうところはあります。シュタルクだから思いっきりできるところもあります。種崎さんたちだから、伸び伸びやらせていただいています。

 市ノ瀬さん フェルンの辛辣なせりふは、どの案配で言えばいいのかが難しかったです。家で練習して、やりすぎかな?と考えていましたが、考えるのをやめたんです。2人のお芝居を聞いて、受けたものを出そうとしました。思ったより出ちゃったかな?という時もありますが、それはそれで2人から受けて出たものなので、それでよかったと思いながら演じさせていただきました。2人と掛け合い、影響されながら、フェルンを演じています。

 第2クールでは物語がさらに大きく動くことになる。3人の熱演に注目してほしい。

 ※種崎敦美さんの「崎」は「たつさき」

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