ドラゴンボールDAIMA
第5話 パンジ
11月11日(月)放送分
アニメ「コードギアス」シリーズや「ONE PIECE FILM RED」などで知られる谷口悟朗監督によるオリジナル劇場版アニメ「BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-」が1月5日に公開される。魔改造された東京を舞台に、改造人間となった主人公・キサラギや、吸血鬼集団・不滅騎士団、ヤクザたちといったさまざまなキャラクターが入り乱れた激しい抗争を描く“史上最狂”のバイオレンスアクションで、「シドニアの騎士」「亜人」「エスタブライフ グレイトエスケープ」などでも知られるポリゴン・ピクチュアズが3DCGアニメとして制作する。「アニメ的表現と実写的表現の融合」を目指したという谷口監督に制作の裏側を聞いた。
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3DCGアニメは、2Dのセルアニメ(手描き)の技法を取り入れつつ進化している。谷口監督は、「アニメ的表現と実写的表現の融合」によって、3DCGアニメの可能性をさらに広げようとした。
「日本のアニメはフィックスを前提として発展してきました。いわゆる小津安二郎的な表現です。カメラを固定する。定点観測的で、それを切り替えていく。その正しい文脈があるからこそ、それにのっとった表現が多々あります。それは映像としての文法なんですが、とてもアニメ的でもある。日本の商業CGアニメーションは、まずはアニメ的な文法から入った。しかし、そろそろそれを脱却してもいい。映像としての文法を考えてもいいんじゃないだろうか。CGアニメーションしかできない表現をより固めていこうとした時、『ONE PIECE FILM RED』で、実写的表現との融合が可能になってくるのでは?と感じていました。立体空間におけるカメラワーク、レンジ設定の自由さです」
手描きアニメならではの表現は、日本のアニメの魅力になっている。3DCG、手描き、実写の技法を融合させようとした。
「手描きアニメーションはレンズ設定を自由にできます。奥に見える背景は望遠レンズなのに、手前の手だけは広角レンズ、被写体は標準レンズ……というような画(え)、ウソを表現できるんです。CGアニメでもそれはできる。意図的にそこを取り入れて、カット割りからある程度やっていこうとしました。今回、コンテは、チーム制。私のほかには手描きアニメーションをずっとやってきた須永司さん、アニメもやられていますが実写畑でもある、なかの★陽さんにお願いしています。加藤裕美さんや木村貴宏さんといった手描きのアニメーターにキャラクターの表情やポージングのラフを描いてもらって、それを参考にキャラクターの色気を出すための動きを付けてもらっています」
谷口監督が重視したのは、キャラクターの“芝居”だ。
「芝居というものは、2種類ある。日常としての芝居、観客に“聞かせる”ための芝居の2種類です。聞かせる芝居というのは、歌舞伎で見得(みえ)を切るようなものです。でも、日常の芝居は難しい。実は、手描きアニメーションで特に最近あらわになりつつあるのですが、日常の芝居ができない演出家が増えている。人間は、何かをしながらしゃべります。何もしないでしゃべるのは、面接など状況が限られます。普段、人間はしゃべる時に動きます。振り向きながらしゃべる、振り向いてちょっと間があってしゃべる。芝居ごとに意図がある。そういうものなのですが、ここ数年、アニメで増えているのが、制作の段取りを優先した演出です。その方が作画も楽ですからね。ちゃんとしている人たちもいる一方で段取りだけの人も増えている」
日常芝居からキャラクターの個性も見えてくる。
「むろん、全て自由にやることは許されない。でも、ビジネスの枠の中でどこまであらがうのか、それが演出であり、表現なんです。面倒なところにこそ意味がある。今回も例えば何かものを運びながらしゃべるようなシーンを意図的に増やしています。作画のカロリーは上がるのですが……。口の動きも手描きのアニメーションではできないことをやろうとしています。口を開いた後、いきなり閉じるわけではない。ゆっくり段々と閉じていく。作画でそれをやると大変ですが、CGではできる。結果的に、それが芝居の余韻を生み出しますし。あと、手描きだと普通ですが、CGではより意識しないといけないことがあります。それはできるだけ左右対称にしないということ。担当者も分かってはいても油断するとなってしまうんですよね。でも、非対称であるからこそ、欠点が生まれ、魅力が出てくる。そこも意識してやっています」
3DCGだからできるリッチな表現もある。谷口監督は「以前は、CGアニメーションは、手描きアニメーションの代替物になるのかな?と思っていたのですが、いや、違うなと。CGアニメにしかできない表現がある。それを突き詰めていけば、この題材はCG、こっちは手描き……と選択肢が増えると思います」と力強く語る。
同作のキャストが発表された際、主人公の改造人間キサラギ役の小野友樹さんが「収録に際して、谷口監督からわざわざお手紙をいただきました。詳細は割愛させていただきますが、ある意味で今まで培ってきた『技術』に頼らないでほしい、という旨の内容と共に、『飢え』てほしい、と」とコメントを寄せていたのも印象的だった。
「例えば、アニメでは、殴られたり時に『うぎゃっ!』と言うけど、実際には言わない。でも、声優さんは殴られたことを説明したくなることがあるのですが、今回は、そうではないと伝えました。声優芝居がダメだと言う人もいるのですが、それが必要ない場合は、『今回はその技を使わないでください』と伝えればいいだけのことなんですよ。
「BLOODY ESCAPE」は、キャラクターの画の芝居の情報量が多い、声優の演技が過剰だと、情報過多になってしまうかもしれない。谷口監督は、情報量のバランスを考慮したようだ。
バランスを取ることにもテクニックが必要だ。小野さんや新宿クラスタに住む少女ルナルゥ役の上田麗奈さんらの熱演が光る。
「彼女(上田さん)は勉強熱心ですよ。私は彼女と最初にメインで一緒に仕事をしたのは『ID-0』でした。『バック・アロウ』でもあるキャラクターの子供時代をやってもらいました。その時、大人になったキャラクターの声優の芝居、ブレスなどをすごく勉強してきて、子供時代を演じていたことが分かったんです。彼女は、芝居に対して真面目で真摯(しんし)に向き合っている。だから、『ONE PIECE FILM RED』でもベポが小さくなったミニベポをお願いしました。今回も彼女だったらできるはず……とオーディションを受けていただきました」
「BLOODY ESCAPE」の魅力は、バイオレンスやアクションだけではない。画、声優陣の芝居からも見えてくるものがあるはずだ。
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