名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
スタジオコロリドの長編アニメ最新作「好きでも嫌いなあまのじゃく」が5月24日に公開される。「泣きたい私は猫をかぶる」「雨を告げる漂流団地」「ペンギン・ハイウェイ」など数々の話題作を手掛けてきたスタジオコロリドの新作は、男子高校生と鬼の少女による青春ファンタジーで、「泣きたい私は猫をかぶる」などの柴山智隆さんが監督を務める。柴山監督に新作に込めた思い、映像表現について聞いた。
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「好きでも嫌いなあまのじゃく」は「少年と鬼の少女の物語」を描いたアニメで、周りと上手に過ごしたい、みんなに嫌われたくないという思いから、頼まれごとを断れない性格になっていた高校生の八ツ瀬柊が、人間の世界に母を探しに来た鬼の少女・ツムギと出会い、旅をすることになる。5月24日にNetflixで世界独占配信、さらに劇場でも公開される。
柴山監督は企画段階で「人間の男の子と鬼の女の子の物語」を考えていたという。
「鬼を調べるうちに、“隠(おん、おぬ)”が語源になっていると知って、イメージが固まっていきました。今の子たちは何に悩んでいるのだろうか? ネットも普通に見られる状況で、学校や家庭の問題は意外と無難にこなしているのかもしれません。先読みして、失敗しないように、相手に合わせて自分の意見を言わないことが普通になっていて、そのことに気付いていない子も多いかもしれません。鬼の語源の“隠”と気持ちを“隠す”がつながりました。鬼について考えていた時、雪のイメージがあって、雪が積もると何もかもが隠れてしまいます。そんな鬼の世界を描くことも考えていました」
同作で鬼は、秘めた思いが大きくなりすぎた人間が変貌した姿という設定となっている。設定を基に鬼の世界のイメージを膨らませていった。
「鬼の世界は、鬼たちが人間界から隠れて生きるためのコミュニティー。街自体が隠れていて、煙突がポコポコ出ているようなビジュアルをイメージしていました。直接的に説明しすぎるのではなく、感覚で伝わるように絵作りで表現するのがアニメーションならではだと思っているので、そういうアプローチをしています」
山形県を舞台に選んだ。スタジオコロリドは、「日常から非日常へ」をテーマとした作品を手掛けてきた。日常、リアルな世界を丁寧に描きつつ、地続きで非日常、ファンタジーの世界を描いている。
「『泣き猫』の時は、私の地元の愛知県常滑市が舞台で、どこでどんな生活をしているか知っていましたが、山形の方の生活スタイルは分かりません。地元のケーブルテレビのNCVさんに協力していただきました。映画的に映えるロケーションもたくさんありました。実在の街を描くと、説得力が全然違います。そこから非日常にジャンプさせる。ドラマとして繊細なものを扱っているので、自然現象に近い見え方をするようなリアリティーのある非日常を描こうとしました。日常と地続きで、ファンタジーになりすぎないようにして、ファンタジーに入る時は丁寧に導入を描き、見ている人が置いてけぼりにならないようにしようとしています」
キャラクターの感情表現も丁寧だ。繊細な表現が魅力になっている。
「アニメは画(え)なので、分かりやすく伝えるための記号があります。それを記号と思わずに、使ってしまっていることもありますが、そこを疑いながら作ろうとしています。シチュエーション、キャラクターの性格に合わせた細かな調整をしていきました。もちろん記号的な表現を完全に避けられるわけではないですし、落としどころを探っています。例えば、柊は父とうまくいっていないのは、何か理由があるはずですが、具体的には描いていません。記号的な毒親にはしたくなくて、父なりに子供を思って行動した結果、子供にとっては迷惑だったり、ボタンの掛け違いがあったはずです。今回の作品のテーマである“隠している思い”は大人にもあるはずで、そこは説明しすぎずに、感じてもらおうとしています」
「泣きたい私は猫をかぶる」は、「美少女戦士セーラームーン」「おジャ魔女どれみ」などで知られる佐藤順一さんと共同監督だったが、新作では一人で監督を務めることになった。
「『泣き猫』の時は佐藤さんに頼っているところがかなりありました。佐藤さんは、“お客さん目線”を大切にしていて、作品とお客さんの橋渡しを意識しているとおっしゃっていました。作り手が、こういうメッセージなんです!と一方的に伝えるのではなく、それを受け取ってもらうためのセッティングを丁寧にやっているんです。『泣き猫』ですごく勉強になったことです。今回もそこを失わないようにしようとしています。フラットにスタッフの意見を聞きながら、お客さんにとっての最善を選ぶことを心掛けました」
スタジオコロリドは、「ペンギン・ハイウェイ」「雨を告げる漂流団地」など数多くの話題作を手掛けてきた。柴山監督はスタジオジブリに仕上げとして入社し、「千と千尋の神隠し」などに参加した後、作画に転向。「心が叫びたがってるんだ」で演出を担当するなどさまざまな作品を手掛けてきた。柴山監督は、スタジオコロリドの強みをどのように感じているのだろうか?
「業界でもデジタル化は一番進んでいると思います。今はほとんどリモートになっていて、紙をほとんど使っていません。新しい技術に対して柔軟で、すぐに活用しています。比較的若いスタッフが多く、意見を平等に交わせるのも強みです。僕は、意見を聞いて作りたいですし、みんなで作っている感覚の強いスタジオだと思います」
「好きでも嫌いなあまのじゃく」でも新たな手法に挑戦しようとした。
「コロリドでは“プリヴィズ”と呼んでいますが、CGモデルを使って動きのベースを作る工程を取り入れています。例えば、2人で手をつないで走るシーンは、作画だとすごく難しい。タイミングや歩幅が違いますから。CGモデルでの動きを先に作って、アニメーターさんに原画にしてもらいました。全部ではないのですが、負荷が高そうなポイントでやろうとしました。そういう選択肢があるのもコロリドの強みだと思っています」
スタジオコロリドは、新しい技術を取り入れながら、普遍的な魅力のある作品を生み出し続けている。「好きでも嫌いなあまのじゃく」も“コロリドらしさ”にあふれた作品になっているはずだ。
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