長谷川育美:「ぼっち・ざ・ろっく!」結束バンドの歌い方 大きなステージも楽しい気持ちで

「ぼっち・ざ・ろっく!」で喜多郁代の声優を務める長谷川育美さん
1 / 3
「ぼっち・ざ・ろっく!」で喜多郁代の声優を務める長谷川育美さん

 「まんがタイムきららMAX」(芳文社)で連載中のはまじあきさんの4コママンガが原作のテレビアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の劇場総集編「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:/Re:Re:」の前編が6月7日に公開された。2022年10~12月に放送されたテレビアニメは放送時、SNSで関連ワードがトレンド入りするなど人気を集め、劇中バンド「結束バンド」のアルバムがチャートを席巻するなど大きな旋風を巻き起こした。結束バンドは、5月に野外フェス「JAPAN JAM 2024」に出演し、8月に開催される野外フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024」にも出演。ライブツアー「結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”」も控えているなど、アニメ以外も大きな盛り上がりを見せている。結束バンドのギターボーカルの喜多郁代(喜多ちゃん)役の長谷川育美さんに「ぼっち・ざ・ろっく!」の歌と音楽への思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇人前に立つのは得意じゃなかった

 「ぼっち・ざ・ろっく!」は、2018年から連載中の音楽マンガ。ギターを愛する孤独な少女・後藤ひとりが、ひょんなことから伊地知虹夏が率いる結束バンドに加入することになる……というストーリー。劇場総集編の前編が6月7日、後編が8月9日に公開される。

 結束バンドは昨年5月、ライブイベント「結束バンドLIVE-恒星-」を開催した。ライブはオンラインでも配信され、X(ツイッター)で関連ワードがトレンド入りするなど大いに盛り上がり、“伝説”となり、同年11月にはライブ映像が劇場上映されたことも話題になった。

 今年5月の「JAPAN JAM 2024」は結束バンド、長谷川さんにとって初の野外フェスとなった。

 「結束バンドは、ライブをいろいろやっていると思われがちなのですが、がっつりライブをやるのは『恒星』以来なので、1年ぶりだったんです。実は、場数をあんまり踏んでいないんです。でも、楽しかったです。フェスが大好きになっちゃいました。毎月フェスに出たいくらいです。初めてのフェスだったので、全てが新鮮でしたし、雰囲気がすごく好きでした。ライブの前に会場を歩いていると、ライブ見ている人がいれば、ご飯を食べている人もいて、みんな自由なんです。その感じを見て、気が楽になったところもあります。みんなが楽しく自由にしているから、私も楽しくなってきました。数日前にフェスの動画を見て、人が多いので不安でしたが、当日は楽しかったです。人の数も多すぎると、逆に緊張しないんです(笑い)。お祭りでした」
 同フェスで、結束バンドは名だたるバンド、アーティストと共に名を連ねた。

 「初めてのフェスですし、ちゃんとできるところを見せないとまた呼んでいただけないかも……と責任感もありました。ただ、ライブはやっている側が楽しいのが一番で、それは皆さんにも伝わります。自分がまず楽しむことを第一にやっています。初めてだけど、不安な気持ちで大きなステージに立つのは、失礼だと思っていました、そこに立てるようなバンドの振る舞いをしないといけないので、頑張りました。『ぼっち・ざ・ろっく!』や結束バンドの音楽をいろいろな人に知っていただける機会がたくさんあってうれしいです。アウェーは緊張するけど、逆にそういう場所行きたい。できることなら全人類に知ってもらいたい作品、音楽なので」

 結束バンドのライブでの長谷川さんはりりしくも見える。ただ、最初から人前に出るのが得意なわけではなかったという。

 「今は慣れただけで、全然得意じゃないです。声優の仕事を始めて、初めて自分自身が番組やイベントに出る機会があった時、不安すぎて前日は号泣していましたから。本当人生って何があるかわからないです。やっていきながら、楽しいと思えるようになってきたので、最初は苦手だと思っていたこともやってみないと分からないものなんです。バンドにしても、スタッフの方から『ぜいたくなカラオケだと思ってやって』と言われていたので、最初からやりにくさは全然なかったです。メンバーの皆さんに『声優さんは滑舌がいいから、メンバー紹介の名前がよく聞き取れる』って言っていただいたり(笑い)。

 ◇喜多ちゃんのキャラソンではない

 結束バンドは、長谷川さんの歌の存在感も大きな魅力となっている。「これまでキャラソンがちょっとあったくらいで、お仕事で歌う機会は多くはなかったのですが、歌は大好きです」と長谷川さんにとって結束バンドで歌うことは挑戦だった。結束バンドの楽曲は、一般的なキャラソンともまた違う。

 「そもそも最初はどう歌おう?といろいろなパターンを想定していました。喜多ちゃんボイスで歌いすぎると喜多ちゃんの歌、キャラソンになってしまうので、役柄の声には寄せたくありませんでした。結束バンドの曲だから、喜多ちゃんのキャラソンになると、それは違いますし。歌手の方でも地声と歌が違うことがありますし、自然なことだと思って、レコーディング初日に、こんなふうな歌い方でどうでしょう?とやってみました。原作者のはまじ先生もいらっしゃって『喜多ちゃんどんな曲でも曲に合わせて歌いこなせます』と言っていただき、軸、方向性が決まりました」

 「私はこれまであまりロックを通ってなかったので、難しかったです。初期の頃は『もうちょっとロックがマシマシで』と指導していただいていましたが、ここ最近はそれが身についてきたようで、瞬時に結束バンドの歌い方ができるようになってきました。地で歌っていると思われることもありますが、結束バンドの歌い方があって、そこは切り替えています。『Distortion!!』のような明るい曲だったら、ちょっと喜多ちゃんらしさを出していいかな?と曲によってチューニングしているところもあります。いろいろなタイプの曲があるからこそ、一つのやり方にこだわりすぎるのももったいないので、いろいろな表現に挑戦させていただいています。音ちゃん(結束バンドの楽曲を手掛ける音羽-otoha-さん)はレコーディングにきてくれることもあって、『こういう歌い方はできますか?』と試しに歌ってくれることもあります」

 劇場総集編は、新オープニングテーマ「月並みに輝け」が流れる。

 「(テレビアニメのオープニングテーマ)『青春コンプレックス』の布陣で作っていただいたすごく熱い楽曲です。変に自分に自信がある時期ってあるじゃないですか。自分はすごいと思っていたけど、ちょっと世界を広げてみると、そんなことなかった……と心が折れる瞬間があって、でもその中でもがいていたら、自分なりの正解、道が見つかる。どんなに言われても進んでいける!と背中を押してもらえるような楽曲です。私も個人的に共感するところがあって、私も声優を志した時、何の根拠もなく自信があったけど、この世界に入ったら、心をポッキリ折られてしまいました。すごく分かるんです。大好きな曲です」

 劇場版総集編の新曲、ライブツアーなど結束バンドのさらなる活躍も期待される。

写真を見る全 3 枚

アニメ 最新記事