ドラゴンボールDAIMA
第9話 トウゾク
12月9日(月)放送分
「映画 聲の形(こえのかたち)」「リズと青い鳥」などで知られる山田尚子監督の劇場版オリジナルアニメ「きみの色」が、8月30日に公開される。2011年に「映画けいおん!」で初めて長編劇場版アニメの監督を務め、精細な映像表現で少年、少女たちを美しく、みずみずしく描いてきた山田監督が「音楽×青春」をテーマに“今の子供たちの思春期”を描く。「彼女、彼らの思春期の体験を焼き付けたい」と語る山田監督に作品に懸ける思いを聞いた。
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「きみの色」は、人が「色」で見える高校生の少女・日暮トツ子が、同じ学校に通っていたとても美しい色を放つ少女・作永きみ、音楽好きの少年・影平ルイとバンドを組むことになる……というストーリー。俳優の鈴川紗由さんがトツ子、高石あかりさんがきみ、木戸大聖さんがルイを演じ、新垣結衣さんがトツ子が通う学校のシスター日吉子役として出演する。「映画 聲の形」などでも山田監督とタッグを組んだ吉田玲子さんが脚本を手がけ、牛尾憲輔さんが音楽を担当する。「映像研には手を出すな!」「平家物語」などのサイエンスSARUが制作する。
同作のテーマの一つである「音楽」。山田監督は「無理せず、背伸びせず、夢中になって描けるもの」として「音楽」を題材に選んだという。
「自分の中で、ずっと音楽への尊敬や憧れがあるんです。私は、四六時中音楽が流れているような家で育ったのですが、ピアノを習いにいかせてもらえるわけでもなかったので、憧ればかりが募っていきました。その後、ギターを弾いている友達と出会ってギターを触らせてもらったり、晴れてピアノを習うようになったり、人生の中で音を出すことの楽しさを感じると同時にやはり難しさも感じて、『自分ではこれ以上はもう無理だ』と。それであれば、作品を通じて音を奏でることができたらいいな、と考えるようになりました」
「音楽」と掛け合う、もう一つのテーマが「青春」。3人の高校生を主人公としたのは、山田監督がこの年代に強くひかれるものがあったからだという。
「精神的にも身体的にも大人になる途中で、まだまだこれから“初めて”もたくさんある年頃の二次性徴にすごく興味があって、とても魅力的に感じていたテーマでした。この年代に出会った人や好きになったものって、大人になってもずっと大事なものとして残っていると思うので、それを焼き付けたいというか。作品の中で、彼女、彼らに経験してもらうことで、焼き付けたいという思いがありました」
「きみの色」で山田監督が描こうとしたのは、現代を生きる思春期の子供たちだった。同作の企画書でも「思春期の鋭すぎる感受性はいつの時代も変わらずですが、すこしずつ変化していると感じるのは『社会性』の捉え方かと思います。すこし前は『空気を読む』『読まない』『読めない』みたいなことでしたが、今はもっと細分化してレイヤーが増えていて、若い人ほどよく考えているな、と思うことが多いです」とつづっている。
「私には、中学生、高校生になるおいっ子がいるのですが、言葉の選び方も上手だし、人との距離の取り方にも失敗がなさそうな感じがあるんです。現実世界以外でも、SNSの世界、ネットゲームの世界でたくさんの自分の人格を持って生きているけど、どこか薄暗い部分があるわけでもなく、『どうやってこの人たちは自我を保てているのかな』と思って観察していた時期があるんです。もちろん、たくさん悩みはあると思うのですが、何とか保っているような気がするというか」
一見器用にも見える子供たちも悩みや葛藤を抱えていて、ある時、耐えられなくなって爆発してしまうこともあるのではないか。山田監督は「そうあってほしい」とも語り、そうした子供たちの“強さ”を表現しようとした。
「今回作品の大きな軸としたのは、『自分の状況を人のせいにしない子たちを描きたい』ということ。大人もそうですし、皆さんが責任を持って自分の人生を生きようとしている強さを大事に描きたいなと思いました。人のせいにするのは簡単だと思うのですが、そうではなく、ちゃんと自分の問題として受け止める人たちを描きたくて。ただ、それは本人だけの問題なので、横で見ていると痛々しかったり、もっと助けてあげたい、もっと頼ってほしいと思ったりする。そうした心のやり取り、動きを描いてみたいと思いました」
「きみの色」に登場する3人の高校生もそれぞれに悩みを抱えながら、「音楽」という“好き”なものでつながることになる。山田監督は3人の関係性を「ほんのり思い合っている。じんわりと、ゆっくりと、遠赤外線的な感じでほんのり温め続けている、支え合っている3人」と表現する。
「みんな優しい子たちなので必要以上には踏み込まない。でも、絶対に裏切らないし、離さないという安心感がある場所。何か強いパワーワードで語れるような子たちじゃないというか。ほんのり存在して、ほんのり思い合って、でもちゃんと意地もあって、ちゃんとやり遂げるだけの胆力は持っている。本当に不思議なパワーというか。まさに最近の子供たちを見ていて感じるものを、この3人で描いてみました」
インタビュー(2)へ続く。
「きみの色」山田尚子監督インタビュー(2)を読む
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