日野聡:「オーバーロード」アインズ演じて10年 さじ加減の難しさ 熱い思いで挑んだ劇場版

「劇場版『オーバーロード』聖王国編」に出演する日野聡さん
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「劇場版『オーバーロード』聖王国編」に出演する日野聡さん

 丸山くがねさんのライトノベルが原作のアニメ「オーバーロード」の最新作「劇場版『オーバーロード』聖王国編」が、9月20日に公開される。シリーズ累計1400万部突破したダークファンタジーが原作のアニメで、シリーズ初の完全新作劇場版となる。テレビアニメ第1期がスタートしたのは2015年で、「オーバーロード」は長く愛され続ける作品となった。同作の人気は、骸骨の姿をした主人公のアインズ・ウール・ゴウンの魅力によるところも大きい。テレビアニメの第1期の収録が始まってから約10年にわたってアインズを演じ続けている人気声優の日野聡さんに、「オーバーロード」、アインズへの思いを聞いた。

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 ◇鈴木さんとのギャップを面白く表現できるかが鍵

 「オーバーロード」は、さえないサラリーマン・鈴木悟が、ゲーム「ユグドラシル」がサービス終了を迎えた際、骸骨の姿をしたアバターのまま、異世界に転移してしまう……というストーリー。鈴木悟は、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の君主として君臨することになる。テレビアニメ第1期が2015年7~9月、第2期が2018年1~4月、第3期が2018年7~10月、第4期が2022年7~9月に放送された。劇場版は9月20日の公開に先駆けて、IMAX版が9月13日から先行上映される。

 テレビアニメ第1期の放送開始から約9年がたった。「オーバーロード」は原作も人気だったが、テレビアニメの放送によって、さらに多くの人の心を掴んだ。

 「アフレコから考えるともう10年近くになります。テレビシリーズの前に、ドラマCDもありましたし、長くお付き合いをさせていただいています。ありがたいことですね。よくあるファンタジー的な作品からすると、悪者として扱われる側が多い設定のキャラクターたちが中心となり描かれるダークファンタジーで、かつ“転移もの”としては先駆けとなった作品ですし、どれだけの人に受け入れていただけるのかな?という気持ちも最初はありました。ただ、すごく面白い作品なので、見ていただければ、絶対にハマっていただけるはず……とも思っていました。結果的に第1期を多くの方に見ていただけたことによって、ここまで続いたと感じています。なにせ、主人公が骸骨ですから。海外ではあるかもしれないけど、日本では『黄金バット』くらいしか僕は思い浮かびませんし。古いですかね(笑い)。でも、それくらい珍しかったんです」

 「オーバーロード」は、ダークな世界観が大きな魅力になっている。しかし、魅力はそれだけではない。

 「一番は緻密な心理描写だと思います。会話の裏にある心の動きが緻密に練られているところがこの作品の面白いところです。表面上の行動、言動の裏に隠された本音のせめぎ合いが、さまざまなキャラクターにあって、お互いの探り合い、駆け引きが非常に面白いんですね。さらに、王道のファンタジーの格好よさ、迫力も加わってきます。シリアスであり、ギャグもあって、それがうまく絡んで進んでいくところが最初から面白いと感じていました。オーバーロードを生み出した丸山くがね先生は本当にすごいです」

 日野さんが演じるアインズも「オーバーロード」の大きな魅力だ。威厳、迫力、優しさ、包容力、少し可愛らしいところ……と日野さんの演技によって、アインズは魅力的なキャラクターになっている。

 「一番は、自分の家族、要するにナザリックのみんなを守る長であるということをベースに置きつつ、臣下たちに翻弄(ほんろう)される鈴木さんの要素も非常に大切なんです。彼の心の声のギャップをどう面白く表現できるかが鍵になると考えています。アインズの表現としては、あの見た目、彼の立場からくる威厳と利発さを意識しています。鈴木さんは、抱える葛藤と共にちょっとずつ鈴木さんの人格がアインズに浸食されていくようなところもあって、その変化のニュアンスも出そうと心掛けています。ただ、さじ加減が難しい。やっぱり鈴木さんの人間味によって、視聴者の方とアインズとの距離が縮まると思うので、ただの恐怖の魔王にならないようにと」

 テレビアニメ第1期の収録が始まってから約10年という時を経て、感じていることもあるという。

 「10年ですから、みんな、年を取りましたね(笑い)。芝居する上で、昔と比べ意識的に何かを変えて演じてるわけではないのですが、私生活の変化や年齢と芸歴も重ねてきたことによって自然に出てくる味みたいなものはあるかもしれません。最初の頃は頑張って出していたものが、自然にできるようになっているのは、みんなそうですし、自分自身も感じています。過去を振り返った時に、今だったらもうちょっとこうできたな?ということもあるのですが、あの当時ならではのよさもあります。今やろうと思ってもできないこともありますし、反省というよりは、過去の自分のベストを認めるようにしようとしています」

 ◇すごい役者の方ばかり

 「劇場版『オーバーロード』聖王国編」は、聖王女カルカを元首とするローブル聖王国に、魔皇ヤルダバオトと亜人連合軍が侵攻し、崩壊の危機を迎える中、アインズ・ウール・ゴウン魔導国に助けを請う……というストーリー。ローブル聖王国の聖騎士団の従者のネイア・バラハら新キャラクターも登場する。ネイアを演じるのは「ぼっち・ざ・ろっく!」などで活躍中の青山吉能さんだ。瀬戸麻沙美さんが演じるシズ・デルタの活躍も見どころになっている。


 「ネイアは、自分の生い立ちや立場に悩みながら、アインズに心酔していくという非常に難しい役です。青山さんとは吹き替えの現場などで会ったりしてきましたが、改めてすごいな!と感じました。シズは、テレビシリーズでは見せ場が少なかったのですが、劇場では大活躍します。シズの可愛さ、彼女の能力がしっかり描かれているので、シズファンが増えると思っています。シズも難しい役です。皆さん、すごい役者の方ばかりなので、若い方々からも勉強させていただいていますし、刺激を受けています。クセの強いキャラクターを絶妙なさじ加減で演じられているんですよね」
 重厚な世界観が魅力の「オーバーロード」は“劇場映え”するアニメでもある。

 「戦闘の迫力、聖王国の街並み、ナザリック勢がいる魔導国の雰囲気の違いなどが劇場のスクリーンでより効果的に見えそうです。約10年、これまで『オーバーロード』を愛してくださった皆様への感謝の思いを込め、スタッフ、キャストのみんながものすごい熱量で作り上げました。ぜひ、たくさんの方に楽しんでいただけたら幸いです」

 スタッフや日野さんらキャストがぶつけた熱い思いをぜひ劇場で浴びてほしい。

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