わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!:こむぎが走る! 止まらない! CGならではの表現を 宮原直樹監督インタビュー

「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ ゲームの世界で大冒険!」のビジュアル(c)2024 わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!製作委員会
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「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ ゲームの世界で大冒険!」のビジュアル(c)2024 わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!製作委員会

 人気アニメ「プリキュア」シリーズの最新作「わんだふるぷりきゅあ!」の劇場版「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ ゲームの世界で大冒険!」。監督を務めるのは「プリキュア」シリーズのダンス映像などを数多く手掛けてきたことで知られ、大ヒットした「THE FIRST SLAM DUNK」で演出を担当したことも話題になった宮原直樹さんだ。劇場版は、こむぎたちがゲーム「ドキドキ タヌキングダム」の世界に吸い込まれてしまい、アニマルタウンに戻るために奮闘する。こむぎたちがゲームの世界で躍動する姿が印象的で、CGによるダイナミックな表現が大きな魅力になっている。宮原監督に制作の裏側を聞いた。

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 ◇CGでやる表現する意味を

 「わんだふるぷりきゅあ!」のモチーフは「動物」で、動物と人が仲良く暮らす街・アニマルタウンを舞台に、犬と飼い主、猫と飼い主など動物と人の間に紡がれる深い絆、種族を超えた交流を描く。2004年にスタートした同シリーズで初めて“犬のプリキュア”が登場することも話題になっている。ABCテレビ・テレビ朝日系で毎週日曜午前8時半に放送中。

 劇場版では、ゲームの世界がCGで表現され、作画とのハイブリッドで制作された。CGパートは、CGならではの表現を目指した。

 「『わんだふるぷりきゅあ!』とCGをどう組み合わせるか?というところからスタートしました。CGでやる意味、CGじゃないとできない表現を考え、ゲームの世界ならしっかりマッチするんじゃないか?となりました。『わんだふるぷりきゅあ!』は、戦うアクションが少ない作品です。その代わりに走り回る、動き回るところを印象的に見せようとしました。作画では難易度が高い立体的なカメラワークで、らせん状の動きを見せたり、一つの画面内に大量のキャラクターを出すシーンにも挑戦しました。CGならではの表現を生かしつつ、作画が中心となる前半と後半は『いつもテレビで見ているプリキュアで』となじみのある絵作りをオーダーしました」

 ゲームの世界では、キャラクターの頭身が変わる。

 「ゲームの世界と現実のメリハリを付けるために、あえてCGと分かるようにしました。CGを作画に近付けてシームレスにする見せ方もありますが、ゲームの世界と現実を行ったり来たりする展開なので、割り切って変えることで、今はゲームの世界の話だと一目で分かるようにしています。背景もリアルさよりデフォルメを効かせてゲーム世界らしさを表現できたと思います」


 大量のタヌキが出てくるシーン、大量の玉が出てくる“ダンシング玉入れ”のシーンなどもCGならではの表現だろう。圧倒的な“物量”も大きな魅力となっている。

 「CGだからできたことです。物量は限界まで攻めました。1人でびっくりするよりは4人でびっくりする方がいい。100匹で攻めるよりは、1000匹……とやっぱり派手な方がいいですから(笑い)。スタッフの技術と頑張りでできたことです」

 宮原監督は、CGを手掛けたスタッフの“成熟”も感じていたという。

 「部署としてもう一段成熟したぞ!と感じています。『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』『ガールズバンドクライ』などを経て、スキルが高まっている中で、チャレンジできました。すごくいいタイミングだったと思っています。特に若いスタッフの成長が著しく、手描きでも難しいような演技も的確に表現してくれて、すごく助かりました」

 ◇大福がしゃべった! モフルンも

 テレビシリーズではしゃべることがなかったうさぎの大福がついにしゃべり、変身したことも話題になっている。低音ボイスに定評のある中村悠一さんが大福役にキャスティングされたという衝撃的だった。「ゲームの世界なので、大福がしゃべることもあるのでは?」と柔軟な発想で挑戦した。

 「ひろがるスカイ!プリキュア」と「魔法つかいプリキュア!」のプリキュアが登場するのも見どころの一つだ。2016年2月~2017年1月に放送された「魔法つかいプリキュア!」は、続編「魔法つかいプリキュア!!~MIRAI DAYS~」が2025年1月から放送されることも話題になっているが、「続編のことも考えていましたが、それだけではなくモフルンの存在が大きい」「モフルンは、ぬいぐるみですけど、プリキュアと気持ちが通じています。動物と飼い主の関係に近い」という。

 モフルンは、朝日奈みらい(/キュアミラクル)が、小さい頃に、祖母からもらったぬいぐるみで、奇跡の力でしゃべるようになる。みらいとモフルンの関係は、「わんだふるぷりきゅあ!」の飼い主と動物の関係に近いところもあり、「魔法つかいプリキュア!」が登場することになったようだ。

 ◇オーソドックスではないかもしれない

 宮原監督はこれまでも「プリキュア」シリーズの数々の作品に参加してきた。犬や猫がプリキュアに変身するなどこれまでにない挑戦も話題の「わんだふるぷりきゅあ!」の魅力をどのように感じているのだろうか?

 「動物と飼い主は家族のような関係です。飼い主は動物に対しても絶対的な愛情を注ぎ、動物と飼い主には絶対的な信頼関係があります。その関係が、これまでのプリキュアとは違う魅力になっていますし、それがベースとなってチームが成立しています。映画でもその魅力を表現しないと、テレビシリーズと根底でつながらないと思っていました。ゲームの世界に入ったこむぎは、いろはを信じて『一緒に帰るぞ!』と必死に走ります。心の底からお互いを求めているところをきちんと描こうとしました」

 舞台がゲームの世界、3世代プリキュアの共演、大福がしゃべって変身する……と盛りだくさんな作品でもある。

 「ゲームの世界と現実を行ったり来たりしますし、要素が多く、欲張りな作品なので、構成としては、オーソドックスではないかもしれません。ただ、出来事と出来事がちゃんとつながるように展開を分かりやすくしようとしました。下敷きにあるのは、遊園地のように楽しめて、見ている子供たちが飽きないようにすることです。そこをブレないようにして、しっとり丁寧に描写するところもありますが、止まらない、走り続けるアニメにしようとしました。最初から“こむぎが走る!” その思いの深さも合わせてしっかり見せようとしていました」

 劇場版のポスターには、こむぎたちが走る姿が描かれている。劇中でもこむぎが二足で必死に走る姿が印象的だ。宮原監督らスタッフの挑戦にぜひ注目してほしい。

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