塩野瑛久&井浦新:“できそう!”と思われる悩み 「光る君へ」に続いての再共演 「無能の鷹」インタビュー

10月11日スタートの「無能の鷹」に出演する塩野瑛久さん(右)と井浦新さん
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10月11日スタートの「無能の鷹」に出演する塩野瑛久さん(右)と井浦新さん

 テレビ朝日系「金曜ナイトドラマ」枠(金曜午後11時15分、一部地域除く)で10月11日にスタートする「無能の鷹」で、主人公・鷹野ツメ子(菜々緒さん)の同期のヘタレサラリーマン・鶸田道人(ひわだ・みちと)を演じる塩野瑛久さん、2人の上司で鷹野の指導係・鳩山樹(はとやま・いつき)を演じる井浦新さん。NHK大河ドラマ「光る君へ」(総合)に続いて早くも再共演となった2人に、それぞれの役についてや、作品にちなんで周囲のイメージとのギャップを感じたエピソードなどを聞いた。

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 ◇前回は御簾越しでの共演 今回は目を合わせて「めちゃくちゃ新鮮!」

 ドラマは、はんざき朝未さんによる同名マンガ(講談社)を、菜々緒さん主演で実写化。超有能そうな見た目なのに、コピーもできず、パソコンも起動できない衝撃的に無能な新入社員の鷹野(菜々緒さん)のすがすがしい生き様を描く“超・脱力系お仕事コメディー”。「おっさんずラブ」シリーズ(2016~24年)や「星降る夜に」(2023年)などで知られる貴島彩理プロデューサーが手がける。

 --「光る君へ」では一条天皇と藤原道隆として共演されていましたが、塩野さんは井浦さんとの印象的な思い出などありますか。

 塩野さん:「光る君へ」の現場に入った初日、一番最初に声を掛けてくださったのが新さんだったんです。(昔)天皇役を演じたことがあるということで、所作などを教えていただいたことをすごく覚えています。現場では俳優も各々撮影に向けての準備があるので、声を掛けて助言するなんて自分だったらなかなかできないなと……。新さんにすごく感謝していますし、うれしかったです。

 井浦さん:(照れ笑いしつつ)恥ずかしいな。先輩、後輩とか関係なく、せっかく出会って同じ仕事をしているのだから、教えるというより「いいものはシェアしよう」みたいな感覚でした。自分も「あのセリフ、そういうキャッチの仕方をするのか」と刺激をもらっているし、人と人との関わりが好きなだけの“お節介おじさん”みたいな感じです(笑)。

 塩野さん:自分が新さんの立場だったら、その“お節介”ができるのかなって。できる人の方が素晴らしいと思っちゃいます。

 井浦さん:ありがとうございます。でも前回の共演では、ずっと御簾(みす)越しで、目を合わせての芝居がなかったんです。言葉だけのキャッチボールでやってきたのですが、(今作では)「塩野君はこんな表情でこの役を仕上げてきたんだ」「このセリフを言っているときこんな目をするんだ」とか感じられてめちゃくちゃ新鮮でした! やっと、目を見てできるお芝居のキャッチボールが楽しいです。

 --今作のそれぞれの役について教えてください。

 塩野さん:鶸田はひ弱な雰囲気を持っていて、緊張したり注目されたり何かストレスを感じたりすると、おなかが痛くなるキャラクター。そして、家に帰ってSNSをいじりながらなぜかコロッケを揚げはじめます(笑)。弱い心を持ちつつも、そのぶつけどころも一応持ち合わせていて、等身大で見てもらえる役かなと思っています。作品の“ストーリーテラー”のような立ち位置でやらせていただいています。

 井浦さん:鳩山さんは、鳩が平和の象徴であるように、大地に根を生やしどっしりと構えた樹のように、マッコリのようにやさし~くほろ酔いになれるような……そんな男でございます。あざとさが一切ないナチュラルな優しさを持つ人なのですが、その優しさの先に何があるのか、終わる頃につかめたらと思っています。

 --鶸田は緊張で腹痛を起こしますが、塩野さんは緊張したときはどのように対処されていますか。

 塩野さん:「これは緊張じゃない、楽しんでいるんだ」「ワクワクしているんだ」みたいな感覚を持つことですかね。後はイメージの問題ですが、緊張すると意識が胸の方にフッとなって、この辺(胸と腹の間あたり)がムズムズする感覚になります。それを一生懸命、下の方に降ろすという。地に足がついていることを、しっかり認識することを意識しています。

 --ありがとうございます! 鳩山は優しすぎる上司とのことですが、もしお二人が会社で働いていて鳩山のような上司がいたらどう思われますか。

 塩野さん:僕は付いてきたくなっちゃいます。

 井浦さん:自分もステキだなって思います。優しすぎていつも失敗したり損したりしている姿にちょっとクスって笑いながらも、サポートしたくなっちゃう感じもします。

 ◇世間のイメージにギャップを感じたことは?

 --主人公の鷹野は“有能そうで無能”という人物ですが、お二人が本当はできないけど「できそう」と思われた経験は何かありますか。

 塩野さん:勉強です……一見頭が良さそうに見られがちなのですが全然できなくて(笑)。中学時代から頭が良さそうって言われていたけど、全然できないから「意外だよね」と言われ続けてきました(笑)。

 井浦さん:自分も、全然できないのに「できるでしょ!」という勘違いをたくさん受けてきた人生です(笑)。

 --パブリックイメージでも井浦さんはいろいろできそうに見えます。

 井浦さん:全然できないです(笑)! 好きなことには特化はしますが。勉強もそう。学校の勉強がなくなればいいのにと思っていたほどです。興味のある分野の勉強はすごく好きです。

 塩野さん:確かに、僕も気になったこととか好きなものとかに対しては調べますね。

 --世間から思われているイメージにギャップを感じたことは?

 塩野さん:僕は、役のイメージで、自分のことを想像されるパターンが多いです。だから、“素”を知ったときにガッカリされることが多いです(苦笑)。例えば一条天皇役のイメージで「あの衣装がすごく似合っていたけど、普段着は普通だね」みたいなことが多いかも。

 井浦さん:でも俳優としては、それ正解だよね。1、2作ぐらいを見てのイメージだったら固定されてしまうかもしれないけど、多くのイメージをばらまいてしまえば、イメージなんてつかないのではとは思う。僕の場合は、役を通して世の中にいろいろなイメージを投げ続けたら、自分自身のイメージも気にならなくなりました。自分があまり気にしていないのもあると思いますが、自分のイメージがまったく分からない(笑)。逆に皆さんは「そう思っているのか!」と新鮮で参考になる場合もあります。

 塩野さん:新さんはいろいろな役をやられているから、たしかにフラットなイメージかも知れないです。

 井浦さん:面白いのは「この役がすごく印象に残っています」と言っていただくと、そこなんだ!って驚きがあり、楽しませてもらっています。「この役を見て俳優になりたいと思いました」と言っていただくと、そんなに(強く印象に)残った理由はなんだろう?ってもう一回その役について考えるきっかけになるので、ありがたいです。

 --最後にドラマの見どころをお願いいたします。

 井浦さん:何かに偏っていたり、悩んでいたり、苦しんでいたり……登場人物みんなが幸せになってほしいとすごく思えるドラマです。(視聴者の方には)「自分はこの人だ」と登場人物に重ね合わせて見たりして少し元気になったり、深呼吸してもらえるドラマになるとうれしいです。ぜひお楽しみください。

 塩野さん:共感できる部分がたくさんあると思います。でもあまり深く考えずに「この役好きだな」「なんか共感できるな」と気づいたら、きっとのめり込んでいけるドラマです。フラットにラフに鷹野の無双を見ていただけたらすごく面白いと思いますので、気軽に構えずに見ていただきたいです。(取材・文・撮影:遠藤政樹)

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