ドラゴンボールDAIMA
第9話 トウゾク
12月9日(月)放送分
「第26回手塚治虫文化賞」のマンガ大賞に選ばれたことも話題の魚豊さんのマンガが原作のテレビアニメ「チ。 -地球の運動について-」。原作は、「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で2020~22年に連載され、15世紀のヨーロッパを舞台に異端思想の地動説を命懸けで研究する人々を描く異色のマンガとして人気を集めた。テレビアニメは10月にNHK総合で放送をスタートし、第3話にしてメインキャラクターであるラファウが処刑されるという衝撃的な展開も話題になった。物語は、代闘士のオクジー、修道士のバデーニ、天文研究助手のヨレンタをメインとした第2章に移り、毎話心を揺さぶられるドラマに多くの視聴者が魅了されている。アニメを手掛けるマッドハウスの岡恒成プロデューサーに制作の裏側を聞いた。
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岡さんは、原作を読み、多くの読者がそうであったように第1巻でラファウが処刑される場面に衝撃を受けたという。
「そこで『これはアニメ化したい』と思いました。全体通して、地動説と、それを形にしたネックレスを、時代を通じてずっとつないでいく物語で、群像劇的なところもありつつ、『この作品の主人公は誰なのか?』と感じました。話数を追うごとにどんでん返しがあり、最終的な展開も含めて、構成の妙があり、全8巻でここまでまとめるのはすごいなという驚きがありました。また、文字の見せ方や読ませ方、強調の仕方によって、一つ一つの言葉が刺さってくるところもすごいと感じました」
「チ。」には、大きな反響が届いているという。
「今までアニメの話をしたことがないような大学の同級生から数年ぶりに連絡があって『よかったよ』と言われることもありました。元々原作がすごく読まれているということもあるのでしょうが、作品のすごさを感じました。主人公がすぐ死んでしまうということも含めて、なかなかない作品ではあるのですが、やはり『圧倒的に面白い』というところは、年齢、性別、アニメファンか否かを問わず、皆さんが感じてらっしゃるのではないかなと思います」
「チ。」では、「不正解は無意味を意味しない」「でもそんなのを、“愛”とも言えそうです」「世界を、動かせ。」といった多くの名言が登場する。「チ。」をアニメ化する上で岡さんらがこだわったのは、原作の“言葉の力”をアニメで表現することだったという。そのために監督として選んだのが、「寄生獣 セイの格率」「ALL OUT!!」などを手掛けた清水健一さんだった。
「構成の見せ方がうまく、これまで作画監督としても非常に高クオリティーのものをあげていただいている。この作品は、アクションで飛んだり跳ねたりするシーンは少ないのですが、枚数をかけずに、キャラクターやせりふを効果的に見せる演出が必要です。そこで、清水さんの力を、というところでお願いしました」
原作では、強調したいせりふを文字の入れ方などで際立たせることができるが、アニメになった際、流れていってしまう恐れがあるため、「せりふに集中して見られるような演出」を工夫しているという。
「重要なせりふがあるシーンでは、キャラをあまり動かさず、長めのカットにして、せりふを強調して見せるような形をとっています。ただ、すごくせりふが多い作品なので、最も大変なのが編集で、切るに切れずなかなか尺に収まらない。ここは絶対に抜いてはいけないというせりふはもちろん残しつつ、やはり間が欲しい部分もある中で、削れるところを2コマ、3コマと細かく切って、なんとか収めるような作業をしていますね」
アニメ化する上で大事にしたもう一つのポイントは、星空だという。地動説を題材とした「チ。」において、星空は「主役の一つ」といい、アニメでは満天の星が非常に美しく描かれている。「チ。」では、原作もアニメも“実際の星空”を基に描かれているという。
「原作者の魚豊さんが、『チ。』で星空を描かれる時に、星空の座標などを見られるソフトで実際の星空を調べていたとお聞きして、ではアニメでも同じようにソフトを使ってやっていこうと。日時と場所を入力すると、星空が表示される『Stellarium』というプラネタリウムソフトなのですが、魚豊さんが描かれる時に、何月何日と日付まで決めて描かれていたシーンは、アニメもソフトを駆使して、東ヨーロッパ近辺に場所を設定し、原作と同じ日付の星空になるようにしています。アニメ上、ウソをついているシーンもあるのですが、先生からお聞きして日付を決められているシーンはそういう形をとっています」
アニメを制作する上では、星空にかなり力を入れており、「当初は、3Dで箱庭的なものを作って、その星空を使おうかとも思っていたのですが、美術さんが想像以上にかなり良いものをあげていただいたので、これでいけるのであればそうしようと。本当に美術さんが頑張っていただいています」と語る。座標までリアルに近い星空を表現しているからこそ、「チ。」の星空はあんなにも美しいのかもしれない。
原作の持つ言葉の力、星空の美しさ、見る者を引きつける“間”をアニメで表現するべく、日々制作スタッフは「チ。」と向き合っているという。マッドハウスは「チ。」以外にも数々の名作を世に送り出してきた。最後にマッドハウスの魅力を聞いた。
「プロデューサーそれぞれが独立愚連隊のようなところがあって、今回の『チ。』であれば、僕自身が手に取って面白いと思ったから手掛けるというように、プロデューサーがやりたいと思う作品を責任を持って手掛けている。そういう意味では、多ジャンルの作品をしっかりと手掛けられるのが強みとしてあるのかもしれません。プロデューサーとしては、いろいろなものに挑戦できる。『チ。』は、自分がいままでやってた中で一番毛色の違う作品ではあるのですが、やってみようと挑戦できたことが、結果よかったなと思いますね」
スタッフ、キャスト、マッドハウスが挑むアニメ「チ。」。今後、地動説に命を懸ける人々のドラマが、アニメでどのように表現されるのか、見逃せない。
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