松坂桃李：「パディントン」前作から7年の間の変化とは？　家族ができて「新しい一つの核になった」　

　俳優の松坂桃李さんが、映画「パディントン 消えた黄金郷の秘密」（ドゥーガル・ウィルソン監督）の日本語吹替版でパディントンの声を担当している。同作は、赤い帽子とダッフルコートがトレードマークの“英国紳士”のくまのパディントンが主人公の児童小説を原作にしたシリーズ3作目。2016年公開の1作目から日本語吹替版でパディントンの声を担当している松坂さんに、7年ぶりとなったパディントン役への思いや、この7年での変化、家族への思いを聞いた。（前後編の前編）

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　◇9年前の1作目に設定した声のキー「出るかどうか不安だった」

　「パディントン」は、40カ国語以上で翻訳され、世界で3500万部以上を売り上げるロングセラー児童小説。映画は1作目が2016年、2作目が2018年に公開された。3作目となる今作は、くまのパディントンが、「老グマホーム」で暮らすルーシーおばさんを訪ねてペルーへ家族旅行に出かけ、ジャングルの奥地で冒険を繰り広げる。

　7年ぶりにパディントンを演じることになって、松坂さんは「もう待ちに待ってました（笑）。風のうわさでどうやら製作が進んでいるらしいというのを、（ブラウンさんの声を担当している）古田新太さんと話していたんです。『また演じられますね』『次はどんな話なんですかね』とワクワクした気持ちを胸に抱えながら、台本を受け取るのが本当に楽しみで仕方なかったですね」と振り返る。

　収録にはパディントンの赤い帽子に合わせて「赤いニットで挑みました」という。パディントンを演じるのは7年ぶりのため、「そこ（年月）が一番の不安材料でした。1作目の時からだと9年たってるんですよね。9年前に演出家の方と相談して、キーはこれぐらいにしようと設定を決めてやっていたので、そこから9年たって（その声が）出るかどうか不安だった」と明かす。

　そのため、収録に入る前に1作目と2作目を繰り返し見て、「自分のしゃべっている声のキーを聞きながら、実際にしゃべってみたりして、慣らしながら」収録に臨んだという。

　収録中はスタッフから「時折『声が元に戻ってます』とか『声がまたちょっと低くなっているので、もう少し高くいきましょうか』という指摘はありました。でもキーの調整に関しては、そこまで苦労はなかったかなと思います」と話す。

　◇父になって「やっぱり家族愛っていいな」

　3作目の台本を読んで一番驚いたのは「パディントンが能動的になっている！」ということだった。

　「1作目の時は、パディントンがペルーからそのイギリスにやってきて、ブラウン一家と出会って、いろんな環境にパディントンが巻き込まれていく。2作目もパディントンが刑務所に入ったり、新しい環境でいろんなことに巻き込まれていくお話でした。今回は、いなくなってしまった一番大好きで大切なおばさんのために、すごく能動的にパディントンが動くんですよね。逆にそれにブラウン一家が巻き込まれていくという新しい形だなと思いました」

　前作からの7年の間に松坂さんは結婚して、家庭を持った。

　自身の変化を踏まえてシリーズを鑑賞すると、「シリーズを通して家族の絆が描かれているので、すごく共感を覚えるというか、（家族への）思いを強く感じるところはありますね。『やっぱり家族愛っていいな』と思うし、この『消えた黄金郷の秘密』を見ても、家族のつながりや絆、成長しても一つの家族としての絶大なる愛のようなものが、すてきだなと感じる部分が多かったですね」と語る。

　特に今作では、「ルーシーおばさんを探しているパディントンの一生懸命な姿」に胸を打たれたという。「切ないですよね。胸が苦しくなるし、その純粋さに心が洗われる。見ているこちらもパディントンのその真摯（しんし）さに浄化されていくんです」と話す。

　そんな松坂さんにとって家族とは？　「帰れる場所。物理的に離れていても、帰れる心の場所があるなら、それは家族なんだと思います。例えば、実家がなくなったら物理的な帰れる場所というのはなくなるかもしれません。でも人には心の原点というものがあって、そういう帰れる場所を分かち合える相手を、僕は“家族”と呼ぶのだと思っています。家族がいるからそれぞれが持ち場で頑張れる。家族がもう今は一番の心の安らぎというか、よりどころです」と力を込める。

　家庭を持って自身に変化も生まれた。「自分の優先順位が、すごく下がりました。家族優先になりましたね。でもそれが決して嫌ではなくて、むしろ心地がいいぐらいなので、それが自分の中で一番大きな変化かもしれません」と話す。

　多忙な中でもリラックスする時間は、「家族とどこかへ出かけたり、公園行くでもいいですし、家族と一緒に過ごす時間が自分にとっての癒やしでもありますね。パーソナルなことをちゃんと大事にできているという自覚もありますし、家族が自分にとっての、新しい一つの核だなと実感できますね」と語った。