中沢元紀：「あんぱん」千尋役が「自分の中でのライバル」に　映画「君の顔では泣けない」の“挑戦”も振り返る

　芳根京子さんと高橋海人さん初共演の映画「君の顔では泣けない」（坂下雄一郎監督、11月14日公開）に出演する中沢元紀さん。9月に最終回を迎えたNHK連続テレビ小説（朝ドラ）「あんぱん」の千尋役で確かな存在感を示したことも記憶に新しい。「この作品（『あんぱん』）を超えていく作品や役に出会っていかないといけないという、この先の自分の中でのライバル」と位置付ける中沢さんが、「君の顔では泣けない」での挑戦を振り返った。

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　◇「君の顔では泣けない」撮影で意識したこと

「君の顔では泣けない」は、君嶋彼方さんのデビュー作となる同名小説が原作。15年間、体が入れ替わってしまったままの男女、坂平陸（芳根さん）と水村まなみ（高橋さん）の物語。始まりは高校1年生の夏、プールに一緒に落ちたことがきっかけで、体が入れ替わってしまった坂平陸と水村まなみ。二人は誰にも言えない秘密を抱えたまま、進学、初恋、就職、結婚、出産、親との別れと人生の転機を経験していく。しかし30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる……。

　同作で、陸の親友・田崎淳一を演じた中沢さんは2000年2月20日生まれ、茨城県出身の25歳。2023年10月期のTBS系日曜劇場「下剋上球児」で注目を集めると、2024年放送のテレビ東京系の連続ドラマ「ひだまりが聴こえる」でドラマ初主演（小林虎之介さんとダブル主演）。朝ドラ「あんぱん」では、「アンパンマン」の“生みの親”であるやなせたかしさんがモデルの柳井嵩（北村匠海さん）に大きな影響を与えた弟の千尋を好演した。

　そんな中沢さんは、映画「君の顔では泣けない」から「他の作品にはあまりない空気感」を感じたという。

　「ずっと切ない、もどかしい時間が流れていながらも、（体が入れ替わった）相手に対してはもちろん、相手の周りの友人や家族を思っての行動があったりと、本当に人の優しさや温かさみたいなものが根底には流れているなと感じました」

　田崎役の中沢さんの撮影期間は4日のみと短かったが、現場では、体が入れ替わってしまったままの陸とまなみに対しての「田崎だけが抱ける違和感」を意識した。

　「田崎しか分からない二人への違和感。本当にそこはニュアンスだと思うのですが、『なんか違うな〜』というのをどう表現するかが難しくて。だから逆にフラットに行こうかなと思って。あまり考えすぎず、二人を昔から知っている人であれば『違和感を感じるよな』くらいのニュアンス。意識してしまうと出過ぎてしまうし、『こいつ（入れ替わっていることを）分かって言ってるんじゃないの』と思わせてしまってはダメなので、そこは逆にフラットに挑みました。でもフラットな方が難しいんですよね。どこまでキャラクターとしての色を出すのか、出さなすぎても自分すぎてしまうので」

　◇好評だった「あんぱん」の“位置付け”

　田崎は、陸とまなみと高校の同窓会で再会。そして、中身は陸のまなみをバーへと誘う。中沢さんは「酔っ払うお芝居、そこも難しかったです」と明かす。

　「『俺は酔っ払いじゃないぞ』というふうに演じなくてはいけなかったのですが、でもちゃんと酔っ払っているようにも見えないといけない。考えすぎかもしれないですけど、そこが難しかったところです」

　枝葉の部分まで突き詰めたい、そんな中沢さんの“こだわり”が感じられる。

　「『これでいいんだろうか』と自分の中で突き詰めたい思いもあったのですが、その一方で撮影日数が少なくて。原作からヒントを得たり、監督と話し合ったりもしたのですが、そういうところも挑戦だったと思います」

　改めて、映画について「本当に見る人それぞれの解釈の仕方があると思います」というのが中沢さんの考え。

　「やっぱり人を思う優しさだったり、気遣い、『君の顔では泣けない』というタイトルに込められた思いというのも、見終わったあとに考えていただけたらうれしいですね」

　最後に好評だった「あんぱん」の“位置付け”についても聞いた。

　「撮影期間も長かったですし、千尋を演じる準備期間も、体作り含めて力を注いだので、これからの役者人生の中でも、多分いつ振り返っても『大きい作品だったな』と思うというか。自分のターニングポイントというか、この作品を超えていく作品や役に出会っていかないといけないなという、この先の自分の中でのライバル、そういう感じですかね」

　※高橋海人さんの「高」は「はしごだか」