永久のユウグレ:音響監督 吉田光平インタビュー 梅田修一朗のリアルで説得力のある芝居

アニメ「永久のユウグレ」の一場面(c)Project FT/永久のユウグレ製作委員会・MBS
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アニメ「永久のユウグレ」の一場面(c)Project FT/永久のユウグレ製作委員会・MBS

 「true tears」「SHIROBAKO」などのアニメ制作会社「P.A.WORKS」によるオリジナルテレビアニメ「永久のユウグレ」が、MBS・TBS系の深夜アニメ枠「スーパーアニメイズムTURBO」で放送されている。AIの技術が発展した未来の世界を舞台とした本格ラブストーリー。最愛の恋人・王真樹トワサと愛を誓い合った主人公・姫神アキラが長年にわたるコールドスリープから目覚め、戦争によって荒廃した街を目にする。アキラの前にトワサと酷似したアンドロイド・ユウグレが現れ、世界のどこかで生きているはずのトワサと再会できると信じて、共に旅をすることになる。音響監督の吉田光平さんに制作の裏側を聞いた。

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 ◇あえて“未知の状況”を作った収録

 --今作で担当したことは?

 音は目に見えない存在ですが、キャラクターの心の揺れや世界観の温度を伝える大切な要素です。私は、作品の世界観をより魅力的に表現するための音響演出をプランニングし、監督やスタッフの皆さんが描きたいことを「音」でどう具現化するかを考える役どころとして参加させていただきました。

 --作品の印象は?

 アキラたちの視点を通して出会う多様な人物や出来事に一喜一憂しながら、「アンドロイドと人の境界はどこにあるのか」「愛と恋の違いとは何か」「人生の岐路に立ったとき、人はどんな選択をするのか」 そんな問いを作品からたくさん投げかけられました。見終わった後もその世界観に浸れる、とても余韻の深い作品だと思います。

 --アキラ役の梅田修一朗さんは数多く作品で主演を務めています。梅田さんの役者としての魅力は?

 アキラは想定外の出来事に翻弄されながらも、自分なりの答えを模索していくキャラクターです。梅田さんには、「アキラと同じ状況をできるだけリアルに体感していただきたい」とお話しし、シナリオを収録直前まで読まないようにしてもらったり、他キャラクターの指示を梅田さんにはあえて伝えないなど、あえて“未知の状況”を作りました。不安になる部分も多い中で、梅田さんはその方法に前向きに取り組んでくださり、結果として非常にリアルで説得力のあるお芝居を生み出してくれました。

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 --ユウグレ役の石川由依さん、トワサ役の茅野愛衣さんの演技の魅力は?

 ユウグレは“人とほとんど変わらない人格を持つアンドロイド”という難役でした。人との距離が時に近すぎたり、急に遠くなったりと、感情移入が非常に難しい役どころだったと思います。石川さんはそんな難しさに真正面から挑んでくださり、ユウグレの繊細な感情の揺れを丁寧に表現してくださいました。

 茅野さんは、トワサの幼少期から年配に至るまで、一人で幅広い年代を演じ分けるという難題に挑戦していただきました。その表現力は想像をはるかに超え、トワサという人物をとても魅力的に描き出してくださったと思います。また、茅野さんの穏やかで温かいお人柄が現場を常に明るく、心地よい空気にしてくださっていました。

 ◇得田真裕の音楽の魅力

 --収録の雰囲気は?

 一部のセリフを録(と)り直す際には、単独で収録するのではなく、その前後に関わるキャストの方々にも再びご参加いただくことがあります。私はその瞬間にしか生まれない空気や呼吸を大切にしているからです。当然ながら負担をおかけすることもありますが、皆さん快く引き受けてくださり、録音スタッフも含めとても協力的で前向きな現場でした。積極的なアプローチや高いモチベーションを持った方々に支えられたとても良い現場だったと思います。

 --得田真裕さんの音楽の魅力は?

 得田さんとご一緒するのは2作品目なのですが、物静かなお人柄からは想像もつかない程の熱量を楽曲に込めてくださる方です。今回は古代の楽器と未来の楽器の融合を目指す指針がありました。古代の楽器は音程の調整が難しく、電子楽器とのミスマッチが多く発生してしまうのですがそんな事を微塵も感じさせない表現力に脱帽でした。今回は「愛」をテーマにご依頼したのですが、メインテーマに入れていただいたハンマーダルシマーのきらびやかで美しい音色が「人を想(おも)う気持ち」を見事に象徴していて初めて聴いた時の高揚感は今でも鮮明に覚えています。ぜひ劇伴にも注目していただきたい作品です。

 --監督からのオーダーは?

 「キャラクター性を大切にしつつ、見ている人に親近感を持ってもらえるよう“面白くしてください”」という言葉をいただきました。作品内の時代背景や空気感を音楽でどう表現するか、そしてそのリアリティーを支えるためにどんな芝居が必要か、監督をはじめスタッフの皆さんと一緒に、丁寧に議論しながら作り上げていきました。

 --最後にメッセージをお願いします。

 登場人物それぞれの“選択”が、見る人の心にも静かに響く作品です。音にもぜひ耳を傾けながら、この世界の余韻を味わっていただけたらうれしいです。

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