解説:「京都人の密かな愉しみ Rouge-継承-」お薦めの訳 常盤貴子が若女将を演じた「京都人」シリーズが復活 新ヒロインは穂志もえか 

ドラマ「京都人の密かな愉しみ Rouge-継承-」の一場面 (C)NHK
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ドラマ「京都人の密かな愉しみ Rouge-継承-」の一場面 (C)NHK

 新しい年が始まり、冬の連続ドラマも次々に始まる時期になった。この冬ドラマで記者のお薦めの一つが1月4日からNHK BSとBSプレミアム4Kで始まる「京都人の密(ひそ)かな愉(たの)しみ Rouge-継承-」(日曜午後10時、全9話)だ。「京都人の密かな愉しみ」のタイトルを聞いただけで、あのシリーズね!と気づかれる人も多いかもしれない。熱烈なファンを抱える「京都人の密かな愉しみ」シリーズの新作だ。なぜ、お薦めなのか、いくつかのポイントで説明する。

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 ◇あの「京都人の密かな愉しみ」の最新作

 「京都人の密かな愉しみ」は2015年1月から2017年5月まで、不定期に5回、放送されたドラマ・ドキュメンタリー。観光で京都を訪れただけでは決してのぞき見ることができない「京都人」の生態、生活文化の奥深さの一端をドラマとドキュメンタリーを通して紹介してくれる。恐らくドラマだけでも、ドキュメンタリーだけでも、こうはいかないかもしれない。ノンフィクションとフィクションを組み合わせたことで、なかなか見せない「京都人」の本当の顔を、チラ見せしてもらえたような気になれる番組なのだ。

 ドラマは、京都にある老舗和菓子屋「久楽屋春信(くらやはるのぶ)」の美しい若女将(わかおかみ)、沢藤三八子(常盤貴子さん)を軸に展開する。店の近くに住む洛志社大学の文化人類学教授、エドワード・ヒースロー(団時朗さん)が京都の文化に興味を持つあまり、それを体現するかのような三八子の日常を“観察”し始める。ちょうど、ヒースローが視聴者の視点に当たり、ヒースローの導きでドラマや、京都の文化の世界に自然と入っていける仕掛けになっている。

 三八子は、母で女将の鶴子(銀粉蝶さん)が持ってくる見合い話を断り続ける。常盤さん演じる美しい若女将が、なぜつつましやかに生きているのか、ヒースローならずとも気になる。その理由の一つはドラマの進展とともに次第に明らかになるのだが、父の遺言に従って、清哲に後を継がせようと考えていたからだった。清哲は亡き父が祇園の芸妓との間に儲けていた隠し子。現在は自身の母の死を機に、出家し清哲を名乗っている。三八子がこっそり清哲に会い、店を継ぐよう説得する様子をヒースローが見て、ひそかな恋の相手と勘違いするなど、ユーモアも交えつつ、ドラマは展開する。

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 メインのドラマの間に、京都の職人さんの仕事ぶりや、「おばんざい」の作り方などのドキュメンタリーに加え、ヒースローの学生を主人公にしたミニドラマをはさみ展開する、1回が約2時間の盛りだくさんの番組だった。

 全5回の「京都人の密かな愉しみ」は、かつて思いを寄せていたパリ在住の三上驍(すぐる、石丸幹二さん)が既婚者だったため結婚をあきらめていた三八子だったが、男性の妻が亡くなっていたことが分かり、結婚するためパリに向かうところでドラマは終わった。

 今回の「京都人の密かな愉しみ Rouge-継承-」は、この「京都人の密かな愉しみ」の待望の続編となる。「京都人の密かな愉しみ」シリーズは、京都の若者にスポットを当てた「京都人の密かな愉しみ Blue 修業中」を2017年9月から2022年5月まで放送していたため、三八子のドラマは止まったままだった。パリに旅立った三八子はどうしているのか? 現在の三八子を視聴者も再び、のぞき見ることができるというわけだ。

 ◇作・演出は源孝志  食への強いこだわり

 「京都人の密かな愉しみ」の最大の特徴は、脚本、演出を源孝志さんが一手に担っていること。作品によっては1人が抱え込むことで失敗するケースもあるが、脚本から映像化まで同じ人が担うことで作品の世界観にぶれがなくなる利点もある。源さんはCMやテレビのバラエティー番組の制作に携わった後、数多くのドラマや映画を手がけてきたベテランだ。

 特に脚本と演出を一手に担うようになってからの作品は評価が高く、受賞歴も多い。2015年には「京都人の密かな愉しみ」でATP賞グランプリを、2020年に異色のテレビ時代劇「スローな武士にしてくれ〜京都撮影所ラプソディー〜」と時代劇「令和元年版 怪談牡丹燈籠 Beauty&Fear」で芸術選奨文部科学大臣賞を、2022年には時代劇「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」で文化庁芸術祭賞大賞を受賞した。そして、2024年には、脚本と演出をやはり担当したドラマ「グレースの履歴」で、優れた脚本家に贈られる向田邦子賞まで取ってしまった。

 源作品の特徴は、映像が美しいこと。そして、重いテーマを扱っていてもユーモアを忘れないこと。さらに付け加えると、脚本や映像、音楽の細部の一つ一つに深いこだわりが潜んでいることだ。

 そのこだわりで一番わかりやすいのは料理だ。「京都人の密かな愉しみ」では、料理研究家、大原千鶴さんが毎回、ドキュメンタリーパートに出演。松尾剛アナウンサーとの掛け合いで調理法を説明したり、京都の文化や旬の食材を説明したりと、源作品には欠かせぬ“キャラクター”となっている。

 2025年にNHKで放送された「TRUE COLORS」では、舞台となった熊本・天草で取れた魚のキンツ(ホウボウ)をイタリア人の妻がヒロインのためにカルパッチョと、トマトソースで煮込んだ「カチュッコ」(イタリアの漁師メシ)に調理しもてなす場面がある。グラスにはヴェルメンティーノの白ワイン。テーブルに並ぶ料理の一つ一つが実は最初から脚本にきちんと書き込まれている。料理もドラマの展開に必要な要素で、世界観を構成する重要な素材になっているのだ。イタリアの料理ならなんでもいいわけではない。そんな細部へのこだわりは「京都人の密かな愉しみ」ではより強いように感じる。

 ◇「京都人」シリーズ出演を熱望した渡辺謙が登場

 新作「京都人の密かな愉しみ Rouge-継承-」は1話45分の全9話。テーマは以前から引き続き「伝統の継承」だ。京都を飛び出した三八子(常盤貴子さん)は驍(石丸幹二さん)との恋を成就させ、結婚してパリで暮らしている。仕事で一時帰国した驍は、三八子の母、鶴子(銀粉蝶さん)が重い病気にかかっていることを知り、店の継承はどうなるのかとの思いに駆られ始める。先妻との間には、パリで育った大学院生の娘、洛(みやこ・穂志もえかさん)がいる。留学を希望する洛に、驍は、とある大胆な提案をするという展開になるようだ。

 今作のヒロインは穂志さん。真田広之さんがプロデューサー、主演を務めた時代劇「SHOGUN 将軍」に出演し注目された穂志さんを、源さんは「TRUE COLORS」でヒロインの妹役に起用。今作ではヒロインに据えた。恐らく、三八子と名前の読みが同じ「みやこ」の洛は京都にやってきて、老舗和菓子屋「久楽屋春信」の継承の問題にからんでいくのだろう。長い伝統の下、複雑で面倒くさい街のおきてで成り立っている「京都人」に、パリ育ちの洛がどう立ち向かっていくのだろうか。

 今作から、洛の指導教授、東雲朔太郎役で渡辺謙さんが出演するのも話題。渡辺さんは、源作品、中でも「京都人」シリーズへの出演を熱望。2025年の「TRUE COLORS」で源作品に初出演し、今回は念願の「京都人」シリーズ出演となった。ヒースロー役の団さんが2023年に亡くなっており、今回は東雲と洛がヒースローに代わって、“外の目”で「京都人」を見る役割を果たすのだと思われる。

 共演は段田安則さん、秋山菜津子さん、森田想さん、杉田雷麟さん、山西惇さん、笹野高史さんら。秋山さんは「京都人の密かな愉しみ Blue 修業中」で主役の庭師見習い、若林ケント幸太郎(林遣都さん)の母、若林志保を演じていた。志保が経営していた味わいのある「Bar Forest Down」は幸太郎の仲間やヒースローが常連だったが、今回も東雲と洛が通うのかもしれない。

 少し心配なのは、1話の放送時間が短くなり、今までのようにドキュメンタリーの要素があるのかどうか。ドラマ色が強まった場合、大原さんの出演はないかもしれない。また源作品には欠かせない俳優の1人、石橋蓮司さんは登場するのだろうか。石橋さんは「京都人の密かな愉しみ Blue 修業中」で作庭家、美山清兵衛を演じていたが、新作でもちらっと清兵衛として登場してくれるとファンは歓喜するだろう。

 登場するのは当然、俳優さんなのだが、実際に京都の街に出かけていけば、どこかで出会えるかのような気になってしまうほど、ある意味リアルなドラマ。放送期間の約3か月間、京都の街で暮らし、傍観者として「京都人」を見守る気持ちでぜひ楽しんでみてほしい。(佐々本浩材/MANTAN)

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