クスノキの番人:美術監督 滝口比呂志インタビュー 神秘的なクスノキの表現 月光が隠し味に

アニメ「クスノキの番人」の一場面(c)東野圭吾/アニメ「クスノキの番人」製作委員会
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アニメ「クスノキの番人」の一場面(c)東野圭吾/アニメ「クスノキの番人」製作委員会

 累計発行部数が100万部を突破した東野圭吾さんの小説が原作の劇場版アニメ「クスノキの番人」が1月30日に公開される。これまで数々の“東野作品”が実写映画化、ドラマ化されてきたが、アニメ化されるのは初めて。「ソードアート・オンライン」「僕だけがいない街」「HELLO WORLD」などの伊藤智彦さんが監督を務め、「天気の子」「花とアリス殺人事件」などで知られる滝口比呂志さんが美術監督として参加するなど豪華スタッフがアニメ化したことも話題になっている。

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 ◇クスノキのスケール感とディテール

 --作品の印象は?

 不思議な力を持った物語であり、深い余韻の残る作品だと思います。原作を拝読したあと、これまでの自分の人生や、関わってきた人たちのことを自然と振り返ってしまいました。目頭が熱くなるような思いとともに、とても大切なことを感じ取らせていただいたように思います。とても心が温かくなるかけがえのない時間でした。

 --壮大で神秘的なクスノキが印象的です。この作品の肝にもなる存在です。どのように表現しようとした?

 クスノキは、本作を劇場版として成立させるうえでの、贅沢な面白さを象徴する要素の一つだと思いますので、スケール感とディテールは特に意識してます。また、特徴的な美しさに加え、ロケハンの際に肌で感じた包み込まれるような体感も大切にしながら、この作品のためのクスノキを表現したいと思いました。

 ー-クスノキのある森、神社は、現実とファンタジーをつなぐような存在にも感じました。

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 神社はロケ地として参考にした実在の場所があります。華やかさや神秘さなど特に特徴があるわけでもありませんが、むしろその土地の持つ素朴さにひかれました。佇まいが美しく、作品にふさわしいリアル感と想像性の広がりをもたらしてくれるのではと感じたからです。クスノキへと繋ぐ森はオリジナルの設定となりますが、こちらも神社とクスノキとの関係性やバランスを意識し、デザインは必要最低限にとどめました。ただ、実は月が各場所を繋ぐ重要な要素ではと感じ、それぞれの空間に差し込む月光の表現が、いわば隠し味だったりします。

 ◇自然にリアルさを感じていただけるように

 --一方で、街の風景はリアルです。クスノキとの対比が際立っています。

 この作品の世界ではクスノキは現実の延長として確かに存在しています。街並みも多くの方にとって見慣れた景色であるからこそ、自然にこの世界に入り込んでいただきたかったので、絵としての範囲で、街の再現性を高めることは意識しました。

 --街の中にも緑が多く描かれているのが印象的でした。伊藤監督からのオーダーだった?

 場所の指定以外、街に関しては特に監督からのオーダーはありませんでした。街中でも実際に多く見られるように、緑の要素は取り入れてます。ただし、都心と郊外では植生や空間全体の感じ方に差があるため、その違いが伝わるよう、意識して表現しています。

 --伊藤監督は美術について「幽玄的」 と表現されていました。意識していた?

 特に意識していたわけではありませんが、毎回、作品の表現には試行錯誤を重ねておりますので、今回はその点を感じ取っていただけたのかなと思います。

 --この作品で特に大変だったこと、挑戦になったことは?

 原作が持つ世界観をできるだけ崩さず、自然にリアルさを感じていただけること。そこを何より大切にしていました。クオリティーやデザイン性はもちろん重要ですが、それ以上に、物語をきちんと理解することが欠かせないと感じていました。背景スタッフの皆さんには、可能な範囲でストーリーを深く知ってもらえたらという思いをお伝えしています。それぞれが作品から受け取った率直な感覚がにじみ出るような絵がほしかったからです。僕以外の美術スタッフは、ほかの作品と並行して作業していたり、作品への向き合い方もそれぞれ異なりますので、難しい部分があったことも理解しています。そうした中でもご協力いただけたことは本当にありがたく思っております。

 --アニメを楽しみにしている人にメッセージをお願いします。

 心の中のスイッチがふと切り替わるような体験をしていただけるかもしれません。ぜひ劇場に足を運んでいただけましたら幸いです。

阿仁間満/MANTANWEB


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