上坂すみれ:「パトレイバー」に魅せられて 愛とリスペクトで十和役に挑む 「機動警察パトレイバー EZY」インタビュー

アニメ「機動警察パトレイバー EZY」に出演する上坂すみれさん
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アニメ「機動警察パトレイバー EZY」に出演する上坂すみれさん

 アニメなどが人気の「機動警察パトレイバー」の新作アニメ「機動警察パトレイバー EZY(イズィー)」。アニメの新作は2016年に発表された短編「機動警察パトレイバーREBOOT」以来、約10年ぶり。ファン待望の新作ということで、歓喜しているファンも多い。新作「EZY」で特車二課のイングラム1号機パイロットの久我十和(くが・とわ)を演じる声優の上坂すみれさんもその一人だ。元々、ファンだったという上坂さんに「パトレイバー」、新作への思いを聞いた。

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 ◇仕事終わりに聴く「朝陽の中へ」

 「機動警察パトレイバー」は、汎用人間型作業機械・レイバーが実用化された世界を舞台に、レイバー犯罪に立ち向かう警視庁の特殊車両二課(特車二課)の隊員の日常を描くメディアミックスプロジェクト。ゆうきまさみさん、出渕裕さん、伊藤和典さん、高田明美さん、押井守さんの5人のクリエーターにより結成されたユニット「HEADGEAR」から生み出された同プロジェクトは、1988年に「アーリーデイズ」と呼ばれる6本のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)から始まり、ゆうきさんによるマンガ、テレビアニメ、劇場版アニメ、小説、オーディオドラマ、ゲームなどが展開されてきた。

 「パトレイバー」が誕生したのは上坂さんが生まれる前で、“パトレイバー世代”ではない。上坂さんは昭和歌謡やレトロカルチャーなどにも造詣が深いことでも知られてはいるが、「パトレイバー」と出会った経緯を聞いた。

 「押井さんの映画『イノセンス』が公開された時期に、それまでの作品を見るようになって『パトレイバー』の劇パト1に出会いました。当時は、ミリオタ真っ盛りでして、ハードでリアルな世界を知り、こんなミリタリーがあるんだ……とすごくワクワクしました。今のように配信サービスがある時代ではなかったので、OVAやテレビアニメのマラソンはできなかったですし、ほかの作品は声優になってから見て、ゆうきさんのマンガも読みました。元々、大きすぎないロボットが好きだったので、レイバーのサイズ感がすごくよかったんです。生活に溶け込んでいるところも唯一無二の魅力があると感じていました。時代的にもバブルの雰囲気が残っていたり、公衆電話が活躍するところもいいんですよね」

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 上坂さんが最初に見た“劇パト1”とは1989年公開の劇場版アニメ第1作「機動警察パトレイバー the Movie」だ。メディアミックスの先駆的存在である「パトレイバー」は多数の作品が存在し、基本的な設定やキャラクターは同じでも、ストーリーがそれぞれ異なるパラレルワールドとして設定されている。

 「OVA、テレビ、マンガはそれぞれ違いますが、どれも『パトレイバー』であって、そこがほかの作品にはない魅力なんですよね。マンガが原作なのかな?と思ったら違っていて、『アーリーデイズ』よりも『ON TELEVISION』に近いようにも感じたり、知れば知るほどそれぞれが魅力的に見えてきます。HEADGEARという集団は何てすごいんだ!となりますし、今の時代にヘッドギアのような存在はなかなかいないのかもしれません」

 上坂さんは「HEADGEAR」という唯一無二のクリエーター集団が作り出した「パトレイバー」の世界に魅せられた。作品群の中で特に好きなのが“劇パト1”だ。

 「キャラクターとレイバーが好きになったのは『ON TELEVISION』ですが、どれか一つとなると劇パト1です。劇パト2もそうですが、大スクリーンで上映するのにレイバーがあまり活躍しない(笑)。ロボットアニメの劇場版となったら、いかにメカを見せるかとなるかもしれないけど、かなりの尺を会話劇に徹しています。帆場暎一が暮らしてきた場所の不気味さが印象に残っていますし、当時は一般的にあまりなじみがなかったコンピューターウイルス犯罪を扱っていて、その怖さが伝わってきます。零式が格好いいですし、野明と遊馬が制服のまま二ケツでバイクに乗って、ピザを食べに行ったり、ワクワク感もあってパトレイバーらしさが詰まっているんです」

 上坂さんは「川井憲次さんの音楽が本当に素晴らしいんです」と続ける。川井さんはOVA、劇場版、テレビアニメの音楽を手掛けており「パトレイバー」に欠かせない存在だ。

 「川井さんの音楽がどれも素晴らしいのですが、特に劇パト1の最後に流れる『朝陽の中へ』が最高で、よく聴くんです。特に、仕事終わりに聴くといいんですよね。皆さんも夜勤明けとかに聴いて“パトレイバー体験”をやってほしいです」

 ◇楽しまなきゃもったいない!

 「機動警察パトレイバー」は、1990年代後半という近未来を先取りしていたのに対し、新作「EZY」は、労働人口減少の一途をたどる2030年代を舞台に、警視庁の特殊車両二課(特車二課)の日常や隊員の活躍を描く。十和の相棒となる特車二課のイングラム1号機の機指揮担当の天鳥桔平(あとり・きっぺい)が「十和(とわ)」と呼ぶと、オールドファンが「野明(のあ)」と空耳してしまうようなシーンもある。上坂さんは十和を演じる中で、野明を意識することはあったのだろうか?

 「1号機のパイロットが女性で、バックアップが男性という構造を見ると、野明と遊馬がよぎるかもしれませんが、セリフを読むと、どっちかと言うと『俺に銃を撃たせろ』タイプ(笑)。マインドは太田さんなんです。正義感に基づく血気盛んさですし、太田イズムを感じています。桔平は普段、『久我』と呼んでいますが、緊迫すると『十和!』と呼び、『野明』と『十和』は母音が一緒なので『遊馬と野明』がシンクロするところもありますが、関係性が違いますし、十和はイングラムを可愛がっているタイプでもないので、リスペクトはしつつ、切り離してお芝居しています」

 新作「EZY」で監督を務めるのは、シリーズを支え続けてきた「HEADGEAR」の出渕さんで、シリーズ構成・脚本に伊藤和典さんを迎えた盤石の布陣で制作された。おなじみのキャラクターの“シゲさん”ことシバシゲオ役の千葉繁さんが出演し、アーリーデイズや劇パト1などに出演経験がある林原めぐみさんが第二小隊の隊長・佐伯貴美香を演じることも話題になっている。

 「初回収録はとても緊張していました。林原さんや千葉さん、出渕監督たちが『久しぶりだね』と話をされていて、先輩方ほど楽しんでやろう!としている姿を見て、楽しまなきゃもったいない!という気持ちになりました。皆さんが掛け合いを楽しんでいますし、『パトレイバーはやっぱり会話が面白くなければいけない』という共通認識がありました。林原さんや千葉さんが支えてくださるので、我々はそこに飛び込んでいける雰囲気がありました」

 「パトレイバー」は歴史のある作品ではあるが、出渕監督らスタッフはキャストが飛び込んでいけるような雰囲気を作っていたという。

 「昔、一人で飲んでいたときに偶然、出渕監督と出会い、ミリタリー話をしたことがあったんです。その時は、ただのミリオタとして話していたので、収録の時に『久しぶりだね』と言われて『あの時は大変失礼を……』と始まりました。偉大な監督ですが、出渕監督は直々にパンを買ってきてくださったり、現場でもインタビューなどでしゃべっているときと同じようなフランクなお兄さんのような存在なんです。『伸び伸びやってよ』という感じでしたし、役どころとしても十和が突っ込んでいき、ほかの特車二課の方々が何とかしてくれるようなところもあるので、私はイングラムに乗れてうれしい!という気持ちで自由に演じていました。ゆうき先生が一度、アフレコに来てくださったことがあったり、高田先生とはイベントでお会いできる機会をいただいたりして、すごくうれしくて、舞い上がってしまいましたし、HEADGEARの絆も感じていました」

 新作「EZY」は“パトレイバーらしさ”にあふれているようだ。

 「会話のテンポのよさも“らしさ”ですし、第1話から自己紹介があるわけでもないのが、特車二課っぽいんです。お寺にレイバーが突っ込んでいき、お坊さんが『バチ当たりめ!』と怒鳴るシーンもほかのロボットアニメでは見られないので好きです。正義の味方のはずだけど、市民に厄介がられながら働いていて、令和のパトレイバーでも特車二課はしっかりお荷物であることがうれしかったです」

 上坂さんは“パトレイバー愛”を胸に収録に臨んだ。「EZY」はたくさんの“愛”が込められた作品なのかもしれない。これまでのファンはもちろん、上坂さんの“パトレイバー世代”ではない人にもその愛が届くはずだ。

 「機動警察パトレイバー EZY」は、全3章、全8話構成。“File 1(第1章)”が5月15日から劇場上映される。“File 2(第2章)”が8月14日、“File 3(第3章)”が2027年3月に劇場公開されることも発表されている。(阿仁間満/MANTANWEB)

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