ミュージシャンのROLLYさんがボーカル、ギターを務めるロックバンド「すかんち」が、12年に結成30年を迎え、全国ツアーを行っている。各ライブ会場では、6年ぶりの新アルバム「30th」を限定発売。最終公演は、2月9日に同バンド17年ぶりとなる渋谷公会堂(東京都渋谷区)で行われ、09年に脳挫傷を負ってリハビリをしていたメンバーShima−chang(しまちゃん)が4年ぶりにファンの前に出て、歌声を披露する予定だ。ROLLYさんに今回のツアーや、新アルバム、Shima−changの様子などについて聞いた。(毎日新聞デジタル)
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今回は、10年12月~11年1月以来、すかんちにとって2年ぶりのツアー。メンバーのROLLYさん、小畑ポンプさん(ドラム)、ドクター田中さん(キーボード)、小川文明さん(キーボード)に加え、元マルコシアス・バンプの佐藤研二さんがサポートベーシストとして参加。全7公演のうち、4公演を終え、懐かしい楽曲の数々が演奏されている。ROLLYさんは「待ち望まれていた感じがすごくあった」と手応えを語り、「我々は演奏が最高にいい。特に仙台は今まで演奏してきた中で一番よかったように感じた」と自信を見せる。
昔はライブで「巨大なセットのスフィンクスの中からどうやって出てきてやろうかって、そんなことばっかり考えていた気がする」というが、時をへて今は「最高の演奏をして自分がいい気分になってやろうっていうのが目的」と語る。そこには「最高の演奏ができた時は、きっとお客さんも楽しんでいる」という思いもある。また「僕をギターヒーローとして迎えてくれる」という若い男性など、男性ファンが増えたことを喜び、今回のツアーに「やりがいがある」と気合十分だ。
今回のツアー会場では、06年に発売した「スカンチンロールショウ2」以来、約6年ぶりとなる新アルバム「30th」が限定発売されている。すかんち結成当時に発売した自主制作盤「オジタスの謎」から、95年に発売したメジャー6枚目の「ダブルダブルチョコレート」までのオリジナルアルバムから全7曲をセルフカバーして収録した。
セルフカバーにしたのは「僕の音楽を聴いてくれようとする人に、昔の音源しかなかったら、イヤ。今の方が圧倒的に歌もうまいし、ギターもうまいし、今の方が美しい。今の感性とテクニックで、より自分が満足いくものを作りたかった」という理由だ。また英ロックバンド「ローリング・ストーンズ」のミック・ジャガーの「ニューアルバムからの曲を聴きたい者は誰もいない」という言葉にふれ、「ローリング・ストーンズでさえも、結局みんなが聴きたいのは、『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』。お客さんは聴き慣れたものの方が安心するんだよね」とも語った。
とはいえ、1曲目に収録された「恋のカリキュラマシーン」は、「オジタスの謎」以来、すかんちで音源化されていなかったため、ほぼ新曲として楽しめる。ほかの6曲は「僕がやりたい曲」と単純明快。昔は「欲張りで、1曲の中に3~4曲分のネタを入れたかった」と振り返り、3枚目のアルバム「恋の薔薇薔薇殺人事件」(92年)から選曲した「恋のローラースケート」は、「ひねくれてたから、ややこしいアレンジにしようとしていたけど、(今は)研ぎ澄まされて、お客さんがもっとのれる、歌える(曲になった)」と明かしており、過去の楽曲と聴きくらべるのも一興だ。
一方、4枚目のアルバム「OPERA(オペラ)」(93年)の楽曲は収録されていない。「深い意味はない」と説明しながらも、「(『OPERA』は)特に完成度が高かった。あれは(すかんちで)唯一、聴いてもらっても平気なアルバム。音がいいし、すかんちの最高傑作は『OPERA』だと言って(評価して)いる人がけっこういるから」と語った。
旧知のメンバーとの久しぶりのレコーディングは「裏話で1冊、本が書けるね」と笑うほど、さまざまな出来事があったという。なかでも初期のキーボード、ドクター田中さんが、ある日突然、リコーダーを購入してスタジオで練習を始めたエピソードを明かし、「うずくまりながら、こっそり練習してるんです。(録音しようと言ったら)『まだ練習ができてない。みんなが帰っていなくなってからとる』って言って……」とずいぶん印象的だったようだ。結局、ROLLYさんらが見守る中、録音が行われ、その音色はアルバム5曲目に収録された楽曲「時間の言葉」で聴くことができる。
ツアー最終公演が行われる渋谷公会堂で、すかんちがワンマン公演を行うのは、96年2月以来、17年ぶり。そしてShima−changが負傷後、初めてファンの前に登場する。
Shima−changは、09年に自宅マンションの階段で転倒、落下し、脳挫傷を負った。意識が戻った後も記憶喪失となって、一時は、メンバーのことも認識できないほどだったという。しかし徐々に回復。新アルバム「30th」では、一部の楽曲でその声を披露し、歌詞カードに掲載された写真に、その姿が収められている。
ROLLYさんは、そんなShima−changの現在の様子について「まったくなにごともなかったようにベースを持って弾くのは、無理みたいだね」と言いよどむ。それでも当時、手術室から出てくる姿を見守っただけに、「(彼女が)『バイバイキーン』と言いながら帰っていけるぐらいまで、復活したのは奇跡」と感慨深げだ。
Shima−changはステージに上がることを熱望しており、10年に行われたツアーにも出演を希望していた。しかし出演はかなわず、現在は、すかんちのライブで舞台袖からステージに出ていこうとするほどで、マネジャーが制止している状態という。
ROLLYさんは「(彼女は)子供の頃からロック一筋でやってきたわけだから、ステージで脚光を浴びるのは大好きなんでしょう。今さら裏方さんになれって言われても……。あの人はやっぱりステージ」と代弁。交通事故で左腕をなくしながらも復帰し、現在も片方の腕でドラムをたたき続ける英国ハードロックバンド「デフレパード」のドラマー、リックアレンのように「Shima−changもベースが弾けなかったとしたら、違う何かが見つかるんじゃないかな」と期待している。
Shima−changのライブ出演は「ショッキングに見えるのか、よかったねと思ってくれるのかは人それぞれ」と複雑な思いもある。ただ「彼女のためにこの渋谷公会堂が用意できたのは、みなさんのおかげでもあるね」と感謝を口にした。
すかんちは、82年にROLLYさんと小畑さんを中心に結成。90年にデビューし、96年にいったん解散。06年に再結成した。結成30周年ツアーは、今月18日に「DRUM Be-1」(福岡市中央区)、27日に「umeda AKASO」(大阪市北区)、2月9日に「渋谷公会堂」(東京都渋谷区)で開催される。新アルバム「30th」(2500円)はライブ会場でのみの限定販売。
ろーりー。9月6日生まれ(生年非公表)。大阪府高槻市出身。90年に「すかんち」でデビューし、現在は、音楽活動をはじめ、舞台、映画、ドラマなどにも出演している。09年にはNHK連続テレビ小説「つばさ」にレギュラー出演した。今月29日に、ギターアクションなどステージパフォーマンスをレクチャーする教則DVD「ROLLY式ギターライブパフォーマンス!~観客を魅了できるギタリストの作り方~」(2980円)を発売する。